<ドラマ ホンチョンギより>
 
ワンポイントコラム
<韓国朝鮮歴史のトリビア>
204.お弁当トシラク도시락
 
 
 
今日NHKのチコちゃん(多分総集編と思われ)を見ていたら「弁当」の語源が問題でした。
 
弁当という言葉は「便利なもの」という語『便当』が語源だそうで、『弁』と言う字に便利を図ると言う意味が有り、「便利に物を当てる」事からそう呼ばれる様になったと有りました。
 
<江戸時代 花見の弁当>
 
その後、『新字源』「弁」の字を検索しましたが、上記の様な意味合いは探せませんでした。
「中身」「おさめる」と言う意味も有ったので、そう言う様々な事柄を表したのかも知れません。
 
どうあれ、日本での弁当の起源は平安時代まで遡る事が出来、当時は「頓食(とんじき)」と呼ばれたおにぎりのほか、「干飯」「糒(ほしいい)」と呼ばれる、調理済みの乾燥米が携帯用の食料として利用されていたそうです。
 
<ドラマ 新米史官クヘリョンより>
 
安土桃山時代に、現代でも見られるような漆器の弁当箱が作られる様になり、この時代より
『弁当』は花見や茶会といった場で食べられる様になったとの事。
江戸時代初期に編集された、ポルトガル語の『日葡辞書』には「bento」が弁当箱の説明で記載されて居ます。
日本の弁当文化は世界に影響を与え、フランスでは現在でも『bento』と表記され、ある種の国際語になって使用されて居ます。
 
<フランスのbento >
 
昨今の『駅弁』ブームなど、日本の連綿と続く伝統文化はとてつも無く奥深い趣きが有ります。
 
と、来ればいつもブログ記事ネタを探している私が飛び付かない訳が有りません(笑)。
我を忘れ「このネタ貰い!」と叫びました。
 
我が家は基本、どんなテレビ番組も生で見ず、録画して視聴します。
これは、TV局に支配されたく無いと言う私のポリシーから発しており、CMを飛ばすので時間の短縮にもなり、必要な物は繰り返し観る事が出来るなど、さまざまな効果を発揮します。
 
<1970年代までの韓国の弁当トシラク>
 
「チコちゃんに叱られる」の様な教養バラエティー番組も半強制で、わざわざ皆が集う食事時間に流すのですが、私の叫びを聞いたミックスツインズのおとこの片割れ、つまり息子がポツリ「アッパ そんな風にテレビ観るとつまらなくならない?」と呟きました。
 
私が常にブログ記事ネタ探しだけの為にTVを観ているので、心配しての発言です。
本来ならそうかも知れませんが、それが私の様にルーティンの域に達してしまうと快感なんですね(笑)。
 
<韓国の弁当トシラク>
 
本題に戻りますが、日本の弁当は現代韓国のお弁当文化にも多くの影響を及ぼし、日帝期、そして1960年代まで『ベントウ벤또』という言葉がそのまま使われたりもしました。
 
世界的な日本語の「弁当」の知名度が圧倒的なので、日本の影響で始まったと思いがちですが、朝鮮語にも弁当に当たる言葉が有ります。
 
<朝鮮王朝時代のトシラク容器>
 
それは「トシラ도시락」と言う言葉で、植民地時代に死語になりそうだった言葉を、ハングル学者チェヒョンべ(1894〜1970)などのウリマル純化運動によって発掘され、今も根付いたのだそうな。
 
<ハングル学者、独立運動家チェヒョンべ>
 
かく言う私も、小さい頃、担任の先生が弁当をトシラク(クを小さく詰めて発音する)と言うんだと習ったので知っていました。
 
その先生はバリバリの2世で、1世のネイティブのご両親に育てられたので、固有語に詳しかったと思われます。
 

<朝鮮王朝時代のトシラク容器色々>

 
ナムwikiを開くと、「トシラク도시락 」の古語は「ドスル도슭 」であり、「バプゴリ밥고리」、「パブドンゴリ밥동고리 」とも呼ばれたと有りました。
これを少しばかり深く掘り下げて見ます。
 
 
1.トシラク도시락 トスル도슭
 
お弁当の朝鮮語「トシラク도시락 」の、語源は「トスル도슭 」です。
 
<朝鮮王朝時代のトシラク>
 
1728年(英祖4)キムチョンテク金天澤が著した『チョングヨンオン靑丘永言』と言う、朝鮮中期までのシジョ詩調を集めたシジョ詩調集に、その言葉が出ます。
 
새암을 찾아가서 점심(點心)도슭 부시고
休みに湖を訪ねて行ってランチ(点心)のトスルをキレイにする
 
と言う句節が有り、米粒ひとつ無く平らげると言う意味です。
それ以前のお弁当を『ヘンチャン行饌행찬』、『ヘンジュ行廚행주』、『パンヘンジュバン半行廚飯반행주반』とも言い、移動可能な携帯型の食事を指しました。
つまり、携帯し易くした容器におかずを添えたご飯を指しました。
 
<ドラマ 六龍が飛ぶより>
 
朝鮮王朝時代、お弁当は学生よりも官吏、一般人の為の物でした。
「承政院日記」1721年(景宗1)記事には、役人のランチにお弁当を持参しており、1900年代、皇帝を実行する随行員たちはトシラク弁当を食べたと有ります。
 
この様に、漢字語がいつしか「トスル도슭 」になり、「トシラク도시락」になったと思われます。
 
ここで気になって『トスル도슭 』の語源を調べました。
トスル도슬도슬と言う言葉から来ており、도스르다 トスルダと言う動詞に行き当たりました。
 
<ドラマテージョヨン大祚栄より>
 
トスルダとは、何かの仕事をしようと、心に決め、心をしっかり持つ事を意味します。
これと直接的な関係は分かりませんが、「しっかり準備する」と言う意味のトスルダと言う動詞が「準備」に繋がり、お弁当を意味する「トスル도슭」と言う名詞になったと思われます。
それが도스르トスルになり도시락 トシラクに変化したと思われるのです。
 
<キムホンドの民俗画>
 
2.トンゴリ
 
「行李ペクチョン明後日」고리백정 내일 모레' ということわざがあります。
ここで「行李こうり」とは、竹や柳などを編んで作られたカゴを指します。
 
<朝鮮王朝時代のトシラク容器>
 
古くから朝鮮では「行李こうり」を食品、衣類、本などを保管するバスケットとして使用しました。
『고리行李ペクチョン白丁』とは、行李を作る手工業者を蔑んで言う言葉ですが、彼らが怠け者で完成する日付の約束を破る場合が多かった理由から、約束を守らずに今日明日と、期日を延ばす人をなぞらえて言う諺(ことわざ)です。
 
丸い形の行李を「トンゴリ동고리 」、角形の行李を「ネモゴリ네모고리」と呼びましたが、主に丸い行李にご飯を詰めたので、『パブトンゴリ밥동고리』と呼びました。
器は柳で作るとポドゥルコリ柳器버들고리 、竹で作ればテナムコリ竹盒대나무고리と言いました。
 
このトンゴリと言う言葉も、朝鮮王朝末期まで良く使用されたそうです。
 
 
 
3. 『チャンハプ饌盒』찬합 
 
他にも『チャンハプ饌盒』と言う、日本の重箱の様な容器が有りましたが、これは外出用のお弁当箱で、屋外で風流を楽しみに出たソンビ(士大夫=学者)が主に利用しました。
 
<チャンハプ>
 
朝鮮粛宗の時の「燕行錄」を見ると、3月の桃の節句や6月流頭の日には、歳時料理を盛る外出用弁当箱『チャンハプ饌盒』を利用しており、朝鮮後期の画家リュスク劉淑やキムホンド金弘道の風俗画にも『チャンハプ饌盒』が見えます。
 
単層の『チャンハプ饌盒』や、取っ手が有る4段重ねの『チャンハプ饌盒』がそれぞれ描かれて居ます。
 
<弁当を描いたキムホンドの民俗画>
 
この様な弁当を表す多くの言葉が有りましたが、日帝期に日本語の「弁当ベントウ벤또」と言う言葉に引き摺られ、死語になりかけたと言う訳です。
 
<ホテルの高級12餐トシラク>
 
現在、共和国では弁当を「クァクバプ」と呼びます。
「クァクバプ」とは箱ゴハンと言う意味で、上記の容器を上手く表して居ると言えます。
子供たちを千葉朝鮮学校に通わせましたが、先生がクァクパプと言う言葉を使用されて居たので、いつしかウチのミックスツインズもお弁当をクァクパプと呼ぶ様になりました。
 
<コロナ禍でトシラクが盛況に>
 
しかし、現在、共和国でもお盆챙반チェンバンと呼ばず『오봉オボン』と呼んだり、弁当もそのまま벤또ベントウと呼ぶ傾向が強いそうです。
 
今ではしっかりトシラク도시락と言う言葉が根付いた韓国のケースは異色の様です。
 
<保温トシラク보온도시락>
 
現在、韓国では『保温トシラク보온도시락 』が主流の様で、 日本でも一時流行りました。
この様に、お弁当ひとつ見ても、奥が深いです。
 
<参考文献>
한국민속문화대백과사전
나무위키 
도시락의 어원과 유래 - 도슭, 동고리 [도시락의 어원과 유래] 애플푸드
 

#韓国ドラマ #韓国時代劇ドラマ #韓国映画

 にほんブログ村 テレビブログ 韓国ドラマへ

 PVアクセスランキング にほんブログ村 

ブログ村参加して居ます↑

韓国・朝鮮よもやまばなし - にほんブログ村

 
<ドラマ チョルリママート>