<ドラマ 星から来たあなたより>

 
ワンポイントコラム
<韓国朝鮮歴史のトリビア>
191.韓国の食卓100年史
 
 
 
 
久しぶりにコリアンタウンに行きました。
私は韓国式チャンポンを、家内は家で作るチャパグリ研究の為、チャパグリを頼み、毎度の如く2人でシェアです。
 
<韓国式チャンポン>
 
ちなみに我が家はどんな外食でもシェアですが、食事マナーでシェアがマナー違反で無いのは、世界中で朝鮮料理中国料理イタリア料理のみだそうです。
私の『イタリア好き』は、こうしてヨーロッパにありながらも全ての面でおおらかと言う点が大きいです。
イタリアの場合、ルーズと紙一重ですが(笑)。
 
コロナで、「食事シェア」の分がとても悪いですが、早く日常が戻らん事を。
 
<イタリア料理>
 
コリアンタウンに刺激されて、我が国の料理のトレンドの歴史が気になって来ました。
主に韓国の食のトレンドの歴史になりますが、どうかお付き合い下さい。
 
今日韓国で食される食べ物の殆どは、過去100年の歴史の中で作られたと言って過言では有りません。
 
現在韓国発の食の1番のトレンドと言えばやはり『チキン』でしょうか?
以前、当コラムでも紹介しましたが、韓国ではチキンとビールを一緒に摂る事がメジャーで、『チキン+ビール=チメク』なる造語まで作られて居ます。
日本でも甘辛ダレの『ヤンニョムチキン』がブームを迎えつつ有ります。
 
↓↓↓チメクの記事はコチラ↓↓
 
果たしてチキンは韓国料理なのでしょうか?
2018年平昌冬季オリンピックを迎え、AP通信で、米国の選手を始め西洋人が親しみを感じる韓国料理としてスパムが入った『プデチゲ』、そして『ヤンニョムチキン』を挙げ話題になりました。
 
<プデチゲ>
 
事実、外国人が韓国を旅行する旅行番組に必ず登場する食べ物が、フライドチキンと真っ赤なヤンニョムチキンです。
ドラマ「星から来たあなた」の大ヒットで、中国、東南アジアをも巻き込んだ韓流ブームの一環で有る「チメク」ブームも冷めやりません。
 
このチキンブームの始まりのキッカケについては後ほど述べる事とします。
 
<チメク>
 
朝鮮半島の食文化は鎖国政策の中、長らく独自の道を辿りましたが、開花期を迎え西洋と接する事になりました。
駐在外国人外交官へのもてなしなどを通じて、朝鮮料理も朝鮮王朝同様、西洋化の渦の中に放り込まれました。
 
しかし、近代化の道に入ろうとした20世紀初頭、朝鮮は日本の植民地支配を受ける事になり、朝鮮人の口、舌も帝国主義の支配の元に入らざるを得ませんでした。
 
実際には、朝鮮料理も他の国の料理同様、長い間、歴史的に多様な文化に出会い、他の文化の影響を受けて『朝鮮化=現地化』の道を辿って居ます。
 
 
最たる例が唐辛子で、南米原産のこの香辛料との出会いが、現在の朝鮮料理の特徴を大きく方向付けしました。
 
16世紀末、朝鮮半島に入って来た唐辛子は、20世紀半ばまで土着化を遂げ、継続的な新品種の開発のおかげで消費は増加しました。
1960年代から唐辛子ニンニクネギが入った食べ物がたくさん消費され、砂糖の価格が下がった為、タコ炒めトッポッキなどの甘辛い食べ物も流行になりました。
 
<トッポギ>
 
この様に、朝鮮料理の他の文化とのダイナミックな出会いと融合=ヒュージョンこそ、
今日の『K-フード』を作り上げたと言えます。
 
韓国でのチキンの歴史を見ると、この様な性格が良く表れて居ます。
まず、韓国のチキン料理は分断から始まった料理と言えます。
 
<日本でもブームの兆し ヤンニョムチキン>
 
以前にも述べましたが、朝鮮で今も昔も人気の肉食は牛肉で、人々は牛肉を好み、朝鮮王朝の牛肉抑制策により1日の屠殺量に制限が有り、牛肉食を抑えられて居た為、普段は身近だった犬肉を食しました。
 
一言で、東洋で朝鮮は牛肉を、日本は鶏肉を、中国では豚肉を選好したと言えます。
しかし1945年、朝鮮半島に38度線が引かれ、南の韓国では食用油の原料である大豆を、植民地時代の様に満州で調達する事が困難な状況に陥りました。
 
<韓国の粉食>
 
1956年、米国は韓国に自国余剰農産物を援助として与えましたが、その中の品目に食用油を含めました。
そうして1964年からは米国産大豆を直接購入する様に要求しました。
 
日本でも1945年終戦後、GHQの管理下で余剰農産物で有る小麦を援助し、給食でもパン食を強要する事によってパン食文化を植え付け、現在の米余り現象を誘導したのは有名ですが、この様にアメリカは政治・経済的にばかりか、食文化に於いても両国に植民地的な従属文化を植え付けたのです。
 
韓国でもこの時期、小麦粉奨励と相まってインスタントラーメンが爆発的な人気を呼び、大豆油の生産はますます増えて行きました。
そして、食用油の生産の増加は、図らずも
『鶏の唐揚げ』の流行につながりました。
 
<チャパグリ>
 
日帝時代、朝鮮での養鶏業は「産業」と呼ぶ事が出来ない程、零細な産業でした。
しかし、1960年代後半、牛肉食文化の隆盛により牛肉価格が高騰すると、政府は鶏肉生産に注目しました。
 
当時北アメリカでブロイラーが大成功し、鶏肉が安価に抑えられる様になったので、それを輸入し安価になった食用油で鶏を丸ごと揚げ、フライドチキンを販売する店が多く出現します。
 
元々、フライドチキンは韓国内の駐留米軍が好んで食べた食品でしたが、1970年代に本格的に上陸すると、韓国人の味覚をすぐに捕らえました。
 
まとめると、米国産食用油アメリカ鶏の丸焼きが、冷戦の境界線にあった韓国社会を呑み込む事によって、韓国料理のグローバル化、イコールアメリカ料理の韓国料理への現地化を促したと言って良いでしょう。
 
<映画 パラサイトより>
 
最近我が家でもマイブームの『サーロインステーキ入りチャパグリ』も、ご存知の様に映画「パラサイト」が世界的に大ヒットし、第92回米国アカデミー賞を受賞する快挙を遂げる最中、アメリカでも話題を集めブームを呼び、彼らも食すグローバル食になりました。
 
とは言え、彼ら欧米人がその食品を好んで食べる様になった背景は、既に韓国が世界の食品流通システムの中の歯車として機能して居る事実から出発して居る事を忘れてはなりません。
アメリカ産小麦粉、安価な食用油、アメリカ産牛肉など、既に「韓国の料理」『グローバルスタンダードの一員』で有る事を物語ります。
 
これは「伝統」「朝鮮料理」という固定された実体では無く、朝鮮料理が韓国社会の現実とかみ合わされ、ダイナミックな変化により、食文化が劇的に変化した結果とも言えます。
 
<味の素 ミウォン味源>
 
今日韓国人が食べる食物の殆どが、過去100年間の歴史の中で作られた物だと言い切れると、とある識者は言います。
詳しくは省略しますが、「コルドゥンミョン(蕎麦粉のそば)」「豆腐」「うどん」など、近代以降発達した食物は多いです。
が、中でも「味の素」の到来は朝鮮料理にも大きなインパクトを与えました。
「味の素」 は1915年朝鮮に上陸し、1929年「朝鮮博覧会」をキッカケに人気を集め、朝鮮で大きな反響を呼び起こしました。
 
 
当時の広告は 「美味しい飲食店は味の素をよく利用する店です。
冷麺・クッパ・トック・テグタン・ソルロンタンに味の素を忘れずに入れましょう。」と謳って居ます。
特に冷麺屋では真夏にトンチミ(スープ)を出しにくく、スープが高価になりがちだったので、
味の素を使う方が遥かに経済的だったのです。
 
日本の「醤油」「ウェカンジャン 外カン醬」と呼ばれ、富裕層の間で人気を博しましたが、解放後日本の醤油会社が米軍政により摂収され払い下げされながら、韓国人の台所に馴染んで行きました。
 
<今や日本食 辛子明太子>
 
しかし、英国のカレーが植民地インドのインパクトから生まれた様に、植民地の味が宗主国の味にもなります。
代表的なのが「炭火焼肉」「辛子明太子」です。
 
1945年以降、先程も述べた様に、太平洋戦争と朝鮮戦争、その後の冷戦が韓国の食文化を大きく変えました。
 
食糧が不足していた時代に「ポンデギ(蚕の蛹サナギ)」の様な代用食、国連と米国からの救済・援助品として送られた小麦粉で作られた各種の粉食が、日本同様に多く広がりました。
 
<カルシュウム満点のポンデギ>
 
この時期の貧困は酒文化も変えました。
 
朴正煕軍事政府は、マッコリの酒造にうるち米の使用を禁止して、小麦粉でのみマッコリを酒造する様にしましたが、「小麦マッコリ」は酒造時間が短くて済み、業者も歓迎しました。
何よりも発酵の過程で、予期せぬ刺激的な味を出しました。 
 
1975年、米の収穫量が増え、米での酒造が解禁されましたが、消費者は「小麦マッコリ」の炭酸の味を忘れられなくて、サイダーを混ぜて飲んだと言います。
 
<人気のマッコリ>
 
韓国の焼酎も元はうるち米で作る酒でした。
しかし、解放後、北の共和国との外交競争を繰り広げていた韓国政府では、友好国を拡大する為に、東南アジア諸国と糖蜜(とうみつ)の輸入貿易協定を締結しました。
 
1975年に糖蜜の国際相場が上がると、国内業界は価格が安いタピオカを代替輸入する道を選びました。
その時から、安値の希釈式焼酎がマッコリの国内シェアを破って、国民酒の座に駆け上がったのです。
<韓国 焼酎>
 
日本でも近年ブームになった「サンギョプサル三枚肉」の流行は、1990年代、国際通貨危機とIMF援助による緊縮期の産物だと言えます。
 
先にも言いましたが、朝鮮では牛肉が選好され、臭味の有る豚肉はさほど好まれませんでした。
 
しかし、韓国ドラマを観ると外食しに行く際にも、牛肉を食べに行くのはハレの日、特別な日に限られ、皆大喜びです。
 
<本場サムギョプサル>
 
日本の様に家族で気軽に牛肉を食べに行かず、普段は豚肉を食べます。
 
これは、豚肉が1970年代の大企業の養豚業進出により品質が良くなり、値が牛肉よりもかなり安い事が、豚肉流行の大きな原因として有ります。
 
しかしそこには、1980年にリリースされた日本の携帯ガスバーナーと使い捨てガスボンベが大きな役割を果たし、生活の余裕が出来て、屋外でのバーベキューが頻繁になり、豚肉の人気が高まった事も背景として有ります。
 
それに先程の緊縮経済の中、節約志向が重なり、1990年代以降、豚肉が韓国人の一番好きな肉料理に踊り出たのです。
 
 
実際、私も最近本家本元の韓国式のサンギョプサルを初めて食べましたが、これ迄食したサンギョプサルのイメージとは大きく違い、これほど美味しい料理だったのかと眼から鱗(うろこ)が落ちた程でした。
コロナが一段落したら、家族を連れて是非その店に食べに行きたいと思って居ます。
 
この様に、グローバル化時代の韓国人の食卓は、選択の多様性と味覚の伝統の間で綱渡りをして居ると言えます。
 
<チーズタッカルビ>
 
ファストフード、フランチャイズ、トロピカルフルーツや輸入野菜などによって食事は多様化して居ます。
 
近年ではチーズとの出会いにより、チーズタッカルビが大流行し、日本にも波及しました。
ファストフードではチーズハットグが日本に上陸し、東京新大久保のコリアンタウンを訪れる若者の間で大人気で、ファストフード市場を席巻して居ます。
 

<チーズハットグ>

 

1番新しい所では、フランス発のスィーツ「マカロン」を韓国式にアレンジした「トゥンカロン」が流行の兆しを見せて居ます。
 
この様な状況では、「伝統的な食べ物が最高」と閉鎖的な「食民族主義」を叫ぶよりも、如何にグローバル食文化と付き合いつつ、
独自の食文化を守って行くかと言う難題が、日本、イタリア、そして世界各地同様韓国をも待ち受けて居ます。
 
<トゥンカロン>
 
コロナ19により、世界的に食産業への懸念が出て居ますが、現在韓国では「個食ホンパブ」が奨励されて居ます。
元々ホンパブとは1人膳で、両班男性の食卓でした。
 
このホンパブスタンダードとして導入しようと言う主張です。
 
<ドラマ 星から来たあなた>
 
伝統と革新、双方をどう組み合わせて行くか、韓国での趨勢を今後とも見守って行きたいと思います。
 
 
<参考文献>
굴곡의 역사가 차린 한국의 '100년 식탁'…신간 <백년 식사>
2021 '음식 트렌드 BEST 10… ‘식물성’, ‘화상 요리 교실’, ‘배달’ 등
2021년 외식 유행 트렌드 살펴보기 그리고 2020년도 외식 소비행태 알아보기
 

#韓国ドラマ #韓国時代劇ドラマ #韓国映画

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