第7章 韓国ドラマ映画
84. 朝鮮駆魔師チョソンクマサ
 
 
以前、NHK BSプレミアムでの放送時に視聴したイビョンフン監督のドラマ「マウィ馬医」ですが、毎朝テレビ東京系列で放送して居るので、ついつい再視聴してしまって居ます。
 
久しぶりに観ると、忘れてたエピソードを思い出すので懐かしくも有ります。
 
<ドラマ 馬医より>
 
主人公のペククァンヒョンが失脚してしまい、どう収拾するのかと思っていたら清国での修行と実績を重ね、その成果を以って復活するストーリーでした。
 
丁度自分の事を陥れた政敵リミョンファンへの殴り込みに突入する段に差し掛かって来ました。
清国の煌びやかな風景が描かれ、ややもすれば単調で暗めな医療ドラマの良いスパイスになりました。
 
それを見て居て、清国つまり中国の描き方が問題となって大騒ぎになり、遂に前代未聞の放送中止に追い込まれたドラマ「朝鮮駆魔師」を思い出しました。
 
以前にも簡単に触れましたが、この機会なので、今回はこの問題について述べたいと思います。
 
「朝鮮駆魔師」は、人間の欲望を利用して朝鮮を飲み込もうとする悪霊と、民を守るために悪霊に立ち向かう人間たちの決闘を描く韓国型エクソシズムファンタジーと銘打って広報しました。
 
朝鮮第3代王の太宗カムウソンが、三男の忠寧大君(世宗)チャンドンユン、長男の譲寧大君パクソンフン譲寧大君の妾オリイユビ、サルパン(旅芸人の遊びの一種)の才能や剣術にも優れたビョリキムドンジュンが演じる事で話題になりました。
 
しかし2021年3月26日、第1話放送後に起きた歴史歪曲騒動を受けて放送を中止する事を発表、韓国ドラマ界で初めて、第2話で放送を終えました。
 
流行りのゾンビ・ファンタジードラマであり、史劇に西洋的要素を融合したフュージョン史劇をどう制作するのか、私も楽しみにして居た事も有り、かなりの衝撃でした。
韓国でも様々な波紋を投げた模様です。
 
 
今更ですが、簡単にあらすじを。
 
舞台は太祖李成桂が高麗を滅ぼして朝鮮王朝を建国しようとする時期です。
 
第3代国王で有るリバンウォンこと太宗の末っ子の王子江寧大君(ムンウジン)が、宮廷に出没した悪の根「センシ(悪霊:ドラキュラ)によってケガをする事件が起き、これを知った太宗(カムウソン)はカンニョン大君を閉じ込めました。
 
忠寧大君(世宗:チャンドンユン)は、太宗の命令を受けてソヨク巫女と呼ばれる駆魔司祭を迎えるために義州に向かいます。
一方、譲寧大君(次男:パク・ソンフン)は全ての責任を自分に被せる太宗の態度に怒ります…
 
(引用 WOWコリア)
 
 
第4代世宗は3男で、長兄と次兄を押し退けて国王となった事で有名ですが、その即位過程に悪魔と伝道師との闘いを織り交ぜるつもりだったのでしょう。
 
全16話中すでに14話まで制作完了のちの放送中止となりました。
一体どんな問題が起こったのでしょう。
 
韓国ではこのドラマがマスコミを通じて初めて公開されたシノプシス(概要)から懸念を買ったそうです。
 
初めて公開されたシノプシスは、李成桂と朝鮮王室が高麗を滅亡させ、朝鮮を建国する過程で、その為にローマ教皇庁からセンシ(悪霊:ドラキュラ)の助けを受けた後、それらを裏切って殺し、その存在を隠蔽したものの、センシが復活するという内容でした。
 
<ポスター>
 
朝鮮王室ローマ教皇庁の支援を受けて国を建国したという設定がとても破天荒で、記事が公開された後に複数のコミュニティにすばやく広がり、かなりの論議に包まれました。
 
歴史歪曲論議を離れ、主人公たちは人間では無く、ターミネーターのレベルまでぶっ飛ぶのでは?との疑念を呼びました。
 
もちろん元の時代、ローマ教皇庁高麗国王に手紙を送ったと言う説も存在します。
しかし、それはあくまで俗説に過ぎず、何の史料も残って居ません。
言わばウワサ話しに近い言説です。
 
 
この時期は、14世紀半ばヨーロッパでペストが広がった影響で、宣教師の派遣が中止され、さらに中国の政情不安による治安悪化で、宣教師が安全に中国まで旅行に行く事が出来なくなって居た時代でした。
 
明の初期、カトリック教会が東洋の政治に介入するのも無理な設定で、あえてキリスト教宣教師を入れて作品にエキゾチックな雰囲気を加えたかったのなら、せめて時代を変えて比較的設定が自由な朝鮮王朝後期にするなど、他の方法を考えるべきでした。
 
ご存知の通り、世宗期には天才科学者チャンヨンシルに代表される、天文科学などの様々な科学的成果が花開きました。
ドラマだと、それらの科学が中国を経由して、西洋宣教師からもたらされたと誤解されかねない設定です。
 
 
実際近年、この時代に本家の中国よりも朝鮮王朝の天文学が発達したと言う研究発表をした中国学者の主張がバッタリ闇に葬られる案件も起こるなど、中国韓国の文化摩擦が先鋭化して居ます。
 
歴史篇でも述べて居ますが、1990年代より中国で東北工程が本格化、高句麗を中国の地方政権と見做し、朝鮮の歴史を自国に取り込もうと画策、朝鮮民主主義人民共和国(共和国)への影響力が今まで無く強まって居る現状と並び韓国内で危機意識を呼び起こしました。
 
 
まだまだ世界的に見ればKoreaChinaの一部と見ている外国人は多く、
「そのドラマを見た外国人が朝鮮王朝初期の科学技術の発展について誤解する方」に悪用される余地が有ると言う訳です。
 
太祖李成桂ローマ教皇庁の軍勢の力を借りて
威化島回軍を成し遂げたとの設定も、当時朝鮮随一の軍事力:私兵を保有し、ましてや5万人もの征討軍を任せられた彼がわざわざ力を借りる相手では有りませんでした。
 
 
この様にファンタジードラマだとしても設定が、我が国への自己貶下(へんげ:蔑む事)に見られる事が容易に想像出来ると言う主張が多くなされます。
 
また、ドラマでは朝鮮の国境都市ウィジュ義州中国風の飲食店が出現し、そこで登場人物が中国料理、月餅(げっぺい)を食する場面が登場する事も視聴者の怒りを買いました。
 
 
近年、中国資本が韓国ドラマに出資、金でコンテンツを買い、朝鮮文化を乗っ取ろうとして居るとの懸念が強まって居ます。
実際、中国の文化広報でキムチ•韓服チョゴリの起源は中国で有ると発表し、韓国ネチズンの怒りを買った事実も有りました。
この様な中国風文化の表現はその様な中国の文化攻勢を後押ししかねないと反発されて居ます。
 
 
日本に居るとピンと来ませんが、歴史的に中国の絶え間無い圧力を受けて来た朝鮮半島に於いては、中国の文化浸透はかなりの脅威でアレルギーをもたらす事項なのでしょう。
 
逆に中国では韓流ブームで国民コントロールに支障をもたらしかねないと、韓流制限措置がなされて久しく、葛藤を呼んで居ます。
実際中国のネット上では逆に、ドラマにより、韓国月餅を自分たちの食べ物だと主張して居ると反発が有りました。
 
 
文化的摩擦に政治的な摩擦も絡み、簡単には解決しそうに有りません。
 
こうしてドラマ放送中止を求める国民請願に20万人もの署名が集まり、テレビ局、制作陣も弁明、釈明に追われましたが、ロケ地も協力を撤回、スポンサーも降りるなど四面楚歌に陥ったテレビ局はとうとうドラマ史上異例の放送中止を発表、7割方制作完了のちの廃棄が決定しました。
 
韓国世論では、ドラマ放送中止の撤回を求める国民請願も起こり、現実とフィクション、ファンタジーの世界とを区別するべきとの意見も存在します。
 
<放送中止を伝えるニュース>
 
そもそもドラマの歴史歪曲問題は韓国ドラマの慢性的な問題と言え、「奇皇后」「明成皇后」を始め色んなドラマで持ち上がって居ます。
今回の問題はこの歴史歪曲問題が浮き彫りになった点で、今後のドラマ制作にどの様な影響を及ぼすのか注視する必要が有ります。
 
海外ではせめて海外だけでも放映して欲しいとの要望が強く、私もせめて2話まで観た上で判断したいとの思いは有りますが、番組ホームページも早々に閉鎖、予め撮影した12話分を含め幻のドラマになる事が濃厚です。
 
<h放送開始前の出演陣>
 
韓国ドラマも世界的に人気を博して居る一方、上記の問題以外にも様々な問題点を抱えて居るので、今1度その様な問題に真摯に向き合うキッカケになれば良いと思います。
 
<参考文献>
나무위키 
뉴스 코리아  드라마 '조선구마사' 결국 폐지 결정...깊어진 '반중정서
 
ブログ記事の書籍出版に向けて

現在クラウドファンディング挑戦中です。

ご協力ご支援お願いします。

#韓国ドラマ #韓国時代劇ドラマ #韓国映画

↓愛のムチならぬ愛のポチをお願いします↓

 にほんブログ村 テレビブログ 韓国ドラマへ PVアクセスランキング にほんブログ村 

↑ブログ村に参加して居ます↑
↓読書登録はこちらから↓

韓国・朝鮮よもやまばなし - にほんブログ村