第7章 ドラマ映画
43.新解釈・三国志 2020年
 
 
 
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』での大泉洋の存在感有る源頼朝の演技が終わりました。
彼が主演し、賛否両論は有りましたが、ある種、新機軸を打ち出したと言える映画新解釈•三国志』、レビュー記事を上梓させて頂きます。
 
この映画、以前金曜ロードショーで地上波放送もしましたので、我が家のミックスツインズにも視聴させました。
歴史にさほど興味の無いツインズですが、「今日から俺は」が大好きだった事も有り、珍しく喜んで観ました。
 
私自身はこの映画、ロードショーで観ました。
2021年の元旦はコロナ禍で実家にも妻の家にも行かず、ツインズが入試と言う事も有り、
他に行く所も無いので、珍しく1人で映画を観に行く事にしたのです。

 

 

前から観たかった「新解釈•三国志」

私は福田雄一、三谷幸喜などのコメディ–系、
大泉洋、ムロツヨシ、佐藤二郎などのコメディ–俳優の演技が好きなんです。
特に歴史を大胆にデフォルメした映画は大好きです。
 
 
と言う事で、今回は韓国ドラマ映画では有りませんが、この映画を取り上げます。
素材として「三国志」と言うと、もう朝鮮文学と同じ様な物です(笑)。
乱暴な論理ですが、それ程朝鮮や日本で愛されていると言う事ですね。
 
小さな頃は三国志と三国史記、同じ物だと思ってました(笑)。
 
まず三国志について。
 
ご存知の方も多いでしょうが、そもそも
「三国志」とは、中国の後漢末期から三国時代と呼ばれる魏•蜀•呉の三国が鼎立争覇した時代(AD180〜280年代頃)を、西晋の陳寿が執筆した歴史書•正史です。
 
日本で俗に言う「三国志」とは別物で、魏の曹操を中心に叙述しました。
 
その後、朱子の蜀漢正統論などから蜀が正統で有ったと言う説が出現し、民間伝承が活発化。
明の時代に「三国志」やその他の説話を基にして、これら三国時代の三国の争いを羅漢中•施耐庵が文学小説化(つまりはフィクション•歴史小説)して「三国志演義」が成立しました。
 
こちらは劉備を善玉として主役に据え、魏の曹操を徹底的に悪者に描いて居ます。
 
<劉備>
 
中国•朝鮮では「三国演義」として全くの別物となって居ますが、何故か日本では「三国志演義」と称する事も有れど一般的には「三国志」と言う名称がメジャーです。
日本では「三国志」と言うとまず「三国志演義」を指すと言って良いでしょう。
 
「三国志演義」を日本で国民的文学に押し上げたのは、コチラも有名な話ですが吉川英治です。
彼は今風に言えば原作を『超訳』し、人物像を深め、エピソードも日本に合わせ改変して今日の「三国志演義」人気を決定付けました。
彼の功績により、「三国志演義」が歴史好きの少年達が必ず通過する歴史小説の登竜門となったと言えるでしょう。
 
<吉川英治版>
 
と言っては居ますが、私は吉川英治版を読んでおりません。
若い頃、猫も杓子も吉川英治「三国志」と言う空気が好きでは無かったのです。
原作の翻訳本を読みました。
 
「三国志演義」と言えば、私がウリハッキョ(朝鮮学校)教師で世界史を教えた頃、授業中に
「OHPばなし」と称した紙芝居を製作して披露した事も忘れられません(笑)。

 

 

この様に、中国の三国時代は朝鮮の三国時代と違い、中国の歴史でさほど重要な時期では有りませんが、フィクションの世界では秦の始皇帝の春秋•戦国時代や「項羽と劉邦」の前漢時代などと同様、最もメジャーな時代となって居ます。
 
「三国志演義」に於いて、日本の戦国時代の三大武将『信長』•『秀吉』•『家康』と並び三大人気キャラクターが存在します。
1に義の人「劉備•玄徳」、
2に忠と情の人「関羽•雲長」、
3に知の人「諸葛亮•孔明」
 
<趙雲役の岩ちゃん>
 
他に美丈夫、今風に言うとイケメン若手武将
『趙雲』も居ますが、
上の3人が1番人気でしょう。
 
本来なら義兄弟の1人「張飛•益徳」が上の3人に入りそうな物ですが、直情型の性格のせいか入りません。
 
皆さんは誰が好きですか?
 
日本では劉備が人気有る様です。
吉川英治の影響も大きいでしょう。
 
朝鮮ではNO.2を好む民族性か諸葛孔明が人気で、彼の名の諺(ことわざ)がある位です。
 
中国で関羽は神さまで有り(朝鮮でも)、中華街でも関帝廟として祀られて居る程、庶民的な性格と熟柿の様な独特な面貌から1番人気と言って良いでしょう。
 
同じ東アジアで1番人気が異なるのも民族性を表して居て興味深いです。
 
<諸葛孔明>
 
私は諸葛亮孔明が1番好きです。
でも、実は曹操が1番好きだったりします。
三国志演義を初めて読んでスケールの大きい人物だと思いました。
実際、史実上は明君と言える器だそうで、脚色された小説に於いても関羽に対する行動など、彼の魅力が光って居ます。
 
福田監督の映画「三国志演義」では大胆なデフォルメとオーバーなやり取りを駆使して、三国志演義の新機軸を構築しました。
 
 
まず大泉洋扮する劉備がぐうたらで、面倒くさがりな人物です。
 
ムロツヨシ扮する孔明は目立ちたがりな人物で、恐妻家(橋本環奈)です。
 
呉の孫権の部下、賀来賢人扮する周瑜は原作通りの猜疑心旺盛な人物で、ドラマ「今日から俺は」で発揮したお茶目で憎めない悪童キャラを継承発展して居ます。

 

 

長いので前半のクライマックス「赤壁の戦い」迄で終了しましたが、ヒットを受けて続編•完結編が作られるでしょうか。
と思いましたが、待てど暮らせど制作の噂は有りません。後半は重苦しい展開になるので避けたのかも知れません。
 
西田敏行扮する教授が親切丁寧に教えてくれ、地図や説明を交え分かり易く進むので、興味は有るけど食わず嫌いでこれまで三国志演義を良く知らずに来た人にもお勧めです。
 
オールスターキャストで、様々な俳優を惜しみ無くふんだんに起用してもいるので、事前に俳優名を見ず、誰がどの役を演じるのか見るのもオツな作業です。
 
少々訳分からないおふざけが多いのが『玉に瑕(キズ)』で、好みは分かれるか知れません。
しかし、1度は観る価値有るかもです。

 

大泉洋がインタビューで言った通り、
「鬼滅の刃」の歴史的大ヒットにかすみがちですが、老若男女全てが楽しめる娯楽作品です。
お時間有る方は是非。