<ポスター>
第7章 韓国ドラマ映画
13.グレートバトル 안시성 2018
この映画はとても楽しみで、はるばるシネマート新宿まで観に行って来ました。
高句麗の安市城の闘いと言ったら、乙支文徳ウルチムンドクの薩水サルス大捷と並ぶ、否ある意味それ以上の高句麗最高の勝利では?
しかし、この闘いの主人公、今やすっかり양만춘楊万春ヤンマンチュンで通っていますが、実は名前不明なのご存知でしたか?
現在我が国最古の정사正史である歴史書『三国史記』の著書金富軾(김부식キムブシク)もこの歴史的な闘いを述べながら、城主の名前が不明なのが惜しい事だと嘆いているのです。
ではなぜヤンマンチュンかと言うと、中国・明の小説「唐書演義」に出て来る名前なんですね。
17 世紀にそれが逆輸入されて一般化した訳です。
私はなぜ正史で名前が不明になってしまったのだろうかと訝(いぶか)ります。
これ位の人物なら当時、全国隈なく、恐らくは唐にまでその名が轟いていた事は想像に難く有りません。
しかし高句麗がその後滅亡してしまった為、中国の史書に頼るしか無く、中国史書は都合の悪い事実は隠す傾向があるので名前が失われてしまった様です。
<安市城主役 チョインソン>
まあいずれにしろ残念と言えば残念ですが、所詮名前なんてと言ってはいけませんが、
安市城主안시성주でも安城主안성주でも楊万春양만춘でも写真や肖像画が残ってる訳でも無いので、最低限我々にイメージを与えてくれればどんな名前でもで構わない訳で…
私も皆さんも、この闘いが持つ重要性を充分に認識した上で映画を観る事が出来れば
ベストですね。
と、少々意図不明なまま本題に入るとします。
ますは歴史的事実をおさらいしましょう。
高句麗の歴史で言及出来なかった歴史談義に入ります。
高句麗侵略の失敗が元で滅亡した隋に代わり、中国の覇者となった唐も虎視眈々と高句麗を狙いました。
<唐 太宗 李世民>
唐に投降的な王、栄留王ヨンルワンをクーデターで廃した淵蓋蘇文ヨンゲソムンは新しい王、宝蔵王보장왕ポジャンワンを担ぎ徹底抗戦の構えを見せますが、遂に645年、唐の太宗は淵蓋蘇文の反逆を口実に、50万人ともされる軍を率いて高句麗侵略を開始しました。
幾つかの城を攻略した唐軍は、高句麗の要衝、遼東城を攻めます。
新式の砲車を用いて大きな岩つぶてを投げつける戦法により、平地城で有る遼東城は苦戦を強いられます。
10日以上の善戦も虚しく、隋の総攻撃にも屈せず鉄甕城を誇った遼東城も遂に陥落しました。
この時の高句麗軍の死者が1万を超えたと言いますから、
如何に熾烈な闘いだったか想像出来ます。
<安市城と目される城>
蓋牟城ケモソン、卑沙城サビソン、遼東城リョドンソン、白巖城ペクアムソンを陥落した唐軍は駐蹕山チュピルサン戰鬪で5万の高句麗軍と白兵戦で勝利したのち、安市城アンシソンへ飛び掛かります。
高句麗式山城で有る安市城は平城とは異なり、小さい城で有りながら山地を利用して建っており、唐の新式武器も歯が立ちません。
<雲梯>
昼は籠城し、夜は奇襲し唐軍を困らせました。
腹の煮えくり返った太宗は、50万人もの人海戦術を利用して60日間に渡り城の横に大きな土城を築かせました。その間の唐軍の犠牲だけで20 万人と言います。
城壁を見下ろす程、高く積み上げた土城は遂に崩れ、一部城壁を崩して雪崩れ込みました。
すかさず待ち構えていた高句麗軍は3日間の土城の争奪戦に大きな犠牲を払いながらも
それを奪取、塹壕を築き、より強い要塞に仕上げます。
遂に88日間の死闘の末に唐の太宗は安市城攻略を断念、高句麗軍民の勇明さを褒め称え白布100匹を下賜、安市城でも礼を以って彼らを見送ったと言います。
映画はこの歴史に名高い戦闘を映像化しました。
制作費215億ウォンと言いますから、日本円で約20億円です。
ドラマ「テジョヨン」など最近では高句麗を描いたドラマは多いですが、
やはり時間とお金が掛かるので、ピンポイントとして描くのは難しいです。
やはり映画と言う事になります。
チョインソン、ナムジュヒョク、パクソンウンらが出演し、観客動員数は5,440,186名、売り上げ高は46,335,334,026ウォンの大ヒットとなりました。
前にも触れましたが、史劇で現在歴代9位の記録です。
キャラクター造形、ストーリーは物議を醸しました。
ヤンマンチュンの気さくで城内の軍民を労わる姿は、今迄の戦争映画で描かれた事の無い優れた点と評価されましたが、カリスマ性の無さ、意味不明な巫女の行動など伏線を回収出来ずに終わった点など批判されました。
一番の黒幕を味方に求めた点も史実とは異なり、映画のコンセプトを成す重要な設定だけに疑問が付き纏います。
<疑問な設定の巫女>
そんな欠点を補っても余り有るのが安市城戦闘シーンです。
2/3を占める戦闘シーンがやはりこの映画の白眉で、戦闘シーンを観るだけでも
元は取れます(笑)。
韓国史劇の中でも戦闘シーンは高く評価されて居ます。
私も授業や書籍で知った戦闘場面を頭でイメージをしていましたが、リアルに再現してくれて居ます。
特に高句麗式山城の特徴で、三面に張り出た雉치を生かした闘い、土を石垣で囲った作りなど。
<高句麗式山城の特徴>
武器や甲冑など誤謬も無きにしもあらずですが、最大限考証に気を配ったと評価されて居ます。
この映画、歴史のコマでも触れましたが、中国では上映禁止、記録も抹殺処分となりました。
不備、不満は多かれど、この時代の雰囲気を味わうには足りる映画です。
大画面で観るのが一番ですが、今や大画面が主流のTVでも迫力は大いに伝わるので未見の方は是非一見を。
<女性戦士の活躍も描写>
<参考文献>
한국민족문화대사전
나무위키
“안시성 전투, 영화처럼 ‘다윗과 골리앗’ 싸움 아니었다
매일경제 인사성주 이름은 양만춘이 아니다
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