第5章 韓国朝鮮の社会-2
ポリ(ッ)コゲについて
ポリッコゲ、韓国標準語(ピョジュノ)では보릿고개,ピョンヤン文化語(ムヌァオ)では보리고개 と書きます。
どちらも発音はポリッコゲです。
<キムヨンチョルの街歩き>
今日「キムヨンチョルの街歩き」を見ていたらその言葉が出ていたので取り上げます。
ポリッコゲとは食べ物に困る時期と言う事で春窮期(춘궁기チュングンギ)とも言います。
ポリとは大麦の事で、コゲは峠です。
日本語に訳すと「大麦峠」とでも
なるでしょうか。
<ポリッコゲ写真(歴史博物館)>
以前朝鮮では米の収穫だけでは1年間食い繋ぐ事は出来ませんでした。
朝鮮は米だけで無く麦も同時に
栽培出来ましたが、冬に植えて大体収穫は夏頃。
つまり5〜6月頃は米も無くなり麦もまだ実らず、一番苦しい時期だったのです。
それを峠になぞらえてそう呼びました。
その時期は芋や蕎麦、豆などの救荒作物で凌ぎますが、それすら無い時は木の皮や草の根、泥を梳いて柔らかい部分を食べました。
それらは消化されず腹痛を起こします。そうした苦しい時期と言う事です。
韓国では70年代初め迄存在したそうです。
<18年再放送,往年の人気ドラマユクナンメ(六兄妹)>
朝鮮王朝時代には還穀(환곡ファンゴク)制度と言う国家的救済制度が有りました。
これは一種の低利保険制度の様な物で、春窮期に国家の備蓄米を貸与し秋に返済する制度で、早くは三国時代,高句麗の記録に出て来ます。
朝鮮王朝時代には初期の頃は無利子で、
13代明宗の頃(16世紀)からは年利1割の低利で貸与しました。
その為の準備として、18 世紀に1年間の税収が400万石の国家でなんと1千万石も備蓄米が
有ったそうですから、朝鮮王朝が経済発展よりも民生をいかに大事にして居たか伺えます。
ちなみにこの数字は人口を10倍以上抱える中国と同じ数値でした。
幕藩体制だった江戸時代、日本では国家備蓄は存在していません。
<映画 群盗>
おかげで中国や日本などの他国とは違い戦争や大飢饉以外に飢え死には殆ど無かったそうです。
しかし勢道政治期になると三政の紊乱が現れ、還政(ファンジョン:還穀の制度)が一番の悪弊となって行きました。
無理矢理借りさせ2〜3割の高利を貪る、石や砂を混ぜて貸す、貸しても無いのに税金の一環として巻き上げるなど。
<ドラマ 緑豆の花>
官衙も売官売職で汚職が進み、穴埋めとして架空取り引きや帳簿改竄など国庫を蕩尽する不法行為が絶えず、国力の弱体化を招きました。
そしてそれら違法行為への抗議から1862年には朝鮮最大の農民暴動-壬戌民乱(イムスルミンラン)が起こり、朝鮮王朝は財政難や社会的混乱と共に滅亡の道へひた走ります。
また、1894年甲午農民戦争が勃発します。
話しは戻り、80年代には韓国の米は100%自給が可能となり90年代以降,現在は日本と同じ米余り現象が起こって居ます。
ポリッコゲと言う言葉は死語になりましたが、商品が「売れない」,「不況」などの比喩で使われる様です。
<共和国の田植え風景>
共和国では85年からの水害、
集約農法の限界により生産力ピークが落ちて
以降、未だ自給レベルには至っておりません。
近年化学肥料の生産に力を入れており、生産請負制などの導入により一時より改善されては居る物の、去年今年と旱魃,水害が続き苦労が絶えませんが何とか乗り切ってもらいたいと思います。
<参考文献>
국사편찬위원회 신편한국사
히스토리의 역사산책 사회보장제도가 세금으로 전용된 사례
우리 농업, 보릿고개를 넘어 세계로 과학문화포털 사이언스올
국사편찬위원회 우리 역사냇 환곡
한국민족문화대백화사전 환곡
최악의 흉년에 OST시장도 보릿고개 한국일보
북한 지속되는 가뭄,밀・보리 수확량20%이상 감소 향후 한달 강수량이 관건
올해 북한 농사 우려가 현실로 자유아시아방송
<映画 群盗>