5.チュソクとお盆
2024年9月17日はチュソク秋夕の日です。
韓国では9月13日金曜日から既に帰省ラッシュが始まりました。
コロナ規制も終了し、帰省者の数は昨年よりさらに10%以上多くなって居ます。
KBSニュースでも帰省者のインタビューを交えながら、民族最大の祝日を祝う雰囲気を装飾して居ました。
この連休期間、海外旅行者も11万人を数え史上最高とのことです。
韓国では前日の16日から三日間の休日です。
今日はチュソクにまつわるお話を。
今年もいつの間にかお盆が過ぎましたが、どう過ごされましたか?
<チュソクの料理>
帰省や旅行はコロナ騒ぎが一段落したのでかなりの出だったそうで、道路もニュースを見る限り混んで居ました。
私は田舎が無く、毎年お盆の道路の空き具合でお盆気分を満喫して居ます。
ツインズが生まれてこの方、毎日が盆と正月が一緒に来る様な慌ただしい生活を送って居ますから尚更静けさが身に染みます。
と、長い前置きはさて置き朝鮮のチュソクは日本のお盆と少々意味合いが異なります。
<お盆のお供え>
日本のお盆は盂蘭盆会(うらぼんえ)の略で、仏教と伝来の先祖信仰が融合した行事ですが、本来旧暦の7月15日だったのを地方により異なる場合もありますが新暦で1か月遅れにして大体8月15日頃です。
丁度夏休みと重なる事から休暇を取って田舎に帰省したり旅行に行ったりで民族大移動は有りますが、現在は大分分散されて居る事は周知の通りです。
一方朝鮮のチュソクはお正月と並ぶ最大の名節(ミョンジョル)ですが旧暦8月15日中秋の名月で、9月の秋の刈入れ前に皆で集い祖先に感謝を捧げる儀式です。
<失郷民を描いたドラマオクラン麺玉ミョンオク>
毎年テレビで北に故郷の有る失郷民が軍事境界線近くの山で北の方向に向かってお辞儀するチェーサ(法事)場面が必ずと言ってよい程流れ、分断の事実を実感させられますが、正にこの時期です。
秋夕(チュソク)以外に中秋節(チュンチュジョル)、ハンカウィ(大きな月の秋の真ん中の日の意)、嘉俳日(カベイル)などとも呼びます。
<韓国のチュソク渋滞>
韓国では当日,前後合わせ3日間公休日で、2020年は当日が10月1日、9月30日から10月4日迄休暇でした。
2021年は当日が9月21日、9月20日から9月22日迄休暇。
2022年は当日が9月10日なので、前日の9月9日から9月12日まで休暇。
2023年は10月3日のケチョンジョル開天節(タングン檀君が国を開いたとされる日)と重なり、なんと6連休の大型連休となりました。
そして頭初に記したごとく、2024年は9月16日より18日まで休日、前日の土日と木金曜日に有休を取れば9連休の大型バカンスになります。
共和国では当日の1日のみ休暇だそうです。
ソンピョンと言う大福の様なお餅を食べたり茶礼(チャレ)と言うお供え料理を作り食します。
<チュソクのお餅 ソンピョン>
↓ソンピョンについてはコチラ↓
日本でも中秋の名月は月見団子を食べ古(いにしえ)に思いを馳せる日ですから、丁度日本で言う所の「お盆とお月見の両方」、もしくは中間の行事と思えば良いかも知れません。
では何故月を愛でるのがこの時期なのでしょう?
中秋とは、旧暦の8月15日を指します。
朝鮮語の한가위ハンカウィも8月秋の中に有る大きな日と言う意味です。
旧暦では7月〜9月を秋とする為、8月15日はちょうど秋の真ん中となります。
そしてその頃は1年を通して月が最も美しい時期とされます。
なぜ昔から秋の月は美しいと言われるのでしょう?季節に関わらずいつでも見られるのに。
それは、秋の空気と月の適度な高さが関係していると言います。
秋の空気は、水分量が春や夏に比べて少なく乾燥して居る為、澄んだ空気が月をクッキリと夜空に映し出すとの事。
また、月は冬に近づくほど空の高い位置を通り、夏は低い位置を通るので、春や秋に程よい高さで眺める事が出来るとの事。
しかし、風の強い春は地上の埃などで月本来の明るさが霞んでしまう事も多く、月をユックリ愛でるに適してはおりません。
この様に、空気の水分量・大気の状況や月の高さなど月が最も美しく見える条件が揃う秋こそ、月見にふさわしいと言われて来たと言えます。
月を愛でながら9月の秋の刈入れ前に皆で集い祖先に感謝を捧げるには丁度良い時期だったのでしょう。
古くから中国で始まったこの儀式、我が国には遅くとも三国時代には伝わったとされます。
この秋夕(チュソク)が今韓国でも社会問題になって居て、民族大移動の大渋滞を始め帰省ストレスや鬱(うつ)、長男の嫁の負担などから夫婦関係が悪くなったり、最悪「秋夕(チュソク)離婚」もあるとか。
<小説 「82年生まれキムジヨン」>
韓国でベストセラーになり日本でも話題になった「82年生まれキムジヨン」でもその事が生々しく描かれており、私も伝統文化維持と旧弊打破のバランスの難しさを考えずに居られませんでした。
トッケビのコンユ主演で映画化もされ韓国でヒットしたそうで、一昨秋日本でも公開されてますから、現在の韓国での女性の地位の現状とフェニミズムの流れを知る意味でも良いかも知れません。
韓国では今までコロナ問題では日本より厳しい社会的距離置き措置の規制が行われて居ましたが、一昨年3年ぶりに全面解除されたので、チュソクはラッシュで大混雑に見舞われました。
2024年は一層の混雑が見込まれます。
チュソクとお盆、日本と似て非なるその辺りを理解するのも今後に於いて無駄では無いかも知れません。
<参考文献>
민족문화대백과사전 추석
筑摩選書 伊藤順子 現地からの報告
チョナムジュ 82年生キムジヨン
한국민속대백과사전 한국세시풍속사전
<2020 チュソク公開映画 スンリホ勝利号>