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第2章 4節 現代-④戦争❶
戦争開始の謎について
2023年、朝鮮戦争勃発73周年を迎え、3回に分けて625(육이오)に迫りたいと思います。
北では「祖国開放戦争」、南では主に「6.25戦争」、一般的には「朝鮮戦争」と呼ばれる戦争は
我が民族最大の悲劇と言えます。
南北朝鮮をローラー状に焦土化し、300万人の犠牲者、2000万〜2500万人とも言われる離散家族を生み出しました。
分断の固定化、米軍の駐留、南北の体制の確立と硬直化などその後に様々な影響を与えました。
今でも一番の謎と関心事は南北どちらが仕掛けたかの様です。
さて歴史的事実はどうでしょうか?
①失政により焦った李承晩が戦争で乗り切ろうとした
②特に1950年5月の選挙で無所属が過半数確保、与党が惨敗した事が衝撃だった
③李承晩は北進を声高に叫び、朝飯は開城、昼飯はピョンヤン、夕飯は新義州と豪語して軍備拡張を急いでいた
<軍を慰問する李承晩>
<北が仕掛けたと見られる理由>
①南の左派勢力の退潮に焦っていた
②中国内戦が一段落し、アメリカ勢力の掃討に集中出来る環境が整っていた
③50年1月アメリカの防衛線(エチスンライン)から韓国を除外するとの決定がチャンスだった
大まかにはこうでしょうか。
研究者により意見は分かれていましたが、冷戦終了後、旧ソ連の秘密文書が公開され全貌が見えて来ました。
<モスクワ訪問した金日成と朴憲永>
1949〜1950年に金日成と朴憲永が毛沢東と会談し、南の解放の同意を得ます。
さらに何度かモスクワを訪問し、渋るスターリンも説得しました。
最初は反対していた彼も最終的に、ソ連は直接アメリカと構えるつもりは無い事を確認しつつも援助を与える事を約束しました。(実際にはソ連は覆面で戦闘機を出撃させています)
その間、共和国から南北平和統一に関する提案など平和攻勢がなされますが、煙幕として作用したと言うのが9割方の流れと言える様です。
ただ、だからと言って北が一方的に仕掛けたとだけ断定するのは早計で、残りの1割の部分が残っています。
それは戦争前の小戦争です。
戦争が始まる前から双方による小競り合いは続いており、少なくとも1949年から1950年6月24日まで870回以上の戦闘が行われています。
<共和国 人民軍>
韓国国軍出動は432回、その内71回は飛行機、42回は艦隊が出動されており、特に黄海道の擁津半島(옹진반도)、江原道の江陵(강릉)、春川(춘천)、京畿道の開城(개성)、議政府(의정부)辺りで激しい戦闘が行われています。
つまり、戦争は6.25前から始まっていたので有り、開戦はそれが表面化したに過ぎないと言う事です。
友人が共和国で高名な教授から受けた講習の資料をいただいた事が有りますが、その資料に東の江原道方面(共和国)と西側京畿道方面擁津半島(韓国)で南北が相互ほぼ同時に侵攻したと有りました。
それが案外真実に近いのかも知れません。
強調したいのは、いずれにしてもこの戦争の性格は
「反冷戦(=反帝)民族解放戦争」だったと言う事です。
冷戦の産物で有る38度線を双方が自分の立場から取り除く事を望み、それぞれの方法で民族の統一を成し遂げようとした。
それは北にとっては社会主義革命とも言え、南にとっては市民革命、西欧式自由民主主義(実際には李承晩の独裁では有ったが)実現と言う双方の民主主義を全土に貫徹させる為の戦いと言えそうです。
<朝鮮戦争研究の第一人者 ブルースカミングス>
ブルースカミングスも述べていましたが、この戦争がそうした朝鮮の統一政府樹立の歴史的使命を帯びた革命戦争で有る以上、アメリカの市民革命(ブルジョワ革命)で第2次独立戦争とも呼ばれる南北戦争の開戦がどちらからだったかが大きな意味を持たないのと同様、「反冷戦民族解放戦争」だったこの戦争の開戦を追及する事に意義はさほど無いとも言えます。
(もちろん道義的責任は残りますが)
命題とはあべこべの結論ですね😅
チョット堅くなっちゃいました。
要は偏った見方をせずトータル的かつグローバル的な見方をしなくてはいけないと言う事です。
<ブルースカミングスの著書>
台湾の解放を目前に控えた中国をも巻き込み始まった革命戦争が、アメリカの本格参戦により第二次世界大戦後の秩序破壊を目指しながらも結果的には膠着化させ、ウリナラが今なお唯一冷戦のみなしごになってしまったのが歴史のアイロニー(皮肉)とも言えます。
いずれにしても共和国は38度戦を超え破竹の勢いで南下しました。
次回も幾つかの疑問点に迫りたいと思います。
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<参考書類>
ブルースカミングス 朝鮮戦争論
同上 朝鮮戦争の起源
和田春樹 朝鮮戦争70年
山川出版社 世界歴史体系 朝鮮史2
山川出版社 朝鮮現代史
朝鮮史研究会編 朝鮮の歴史
조정래 태백산맥
祥伝社 孫崎享 朝鮮戦争の正体
<共和国映画 命令027号>