<ミスターサンシャイン クドンメ役 ユヨンソク>
第2章 3節 近代-⑥ 保護国化と植民地化
1897年以降ロシアと日本の勢力均衡により
大韓帝国の独立がかろうじて維持されておりましたが、1900年代に入り日本とロシアの矛盾が先鋭化し均衡が崩れて行きました。
日本はロシアとの戦争に突入して行き、日本の勝利により朝鮮の運命が決定したと言えます。
<映画 ラストプリンセス>
もしロシアが勝利して居たら
朝鮮は保護国化され、ロシア革命後モンゴルの様にソ連の衛星国として社会主義国になっていたかも知れませんが、ロシアの国状からはほぼ不可能だったと見る向きも有ります。
この時期の経過を時系列に並べて見ましょう。
少々退屈かも知れませんが重要な事項を多く含んでいるので追ってみて頂けると幸いです
■ 韓国の抵抗
■ 日本の動き
■ 韓国と日本の条約
<1904年>
1月21日 韓国 危機を察知し局外中立宣言発布
〜日本は無視し基地を設置
2月 8日 日本 旅順港奇襲、日露戦争 勃発
2月10日 日本 ソウル・徳寿宮占領
2月12日 露公使 ソウル脱出
2月23日 韓日議定書 締結
〜朝鮮全土の戦略的利用が可能に
※事実上の勢力圏入り
5月 1日 日本 鴨緑江戦闘 勝利
8月22日 第一次韓日協約 締結
〜財政、外交顧問を傭聘
※財政権、実質外交権奪取
<1905年>
3月10日 日本 奉天戦闘 勝利
5月28日 日本 対馬海戦 勝利
※日本決定的勝利
7月27日 桂-タフト秘密条約
〜フィリピン,日-朝鮮 独占権承認
9月 5日 ポーツマス講和条約
〜日露戦争終結
※朝鮮に於ける優位権認定
11月17日 第二次韓日協約 締結
(乙巳五条約을사오조약)
〜外交権 譲渡、統監部設置
※朝鮮の保護国化
<義兵の姿(上)とドラマでの姿(下)>
<1906年>
〜第二次義兵活動 活発化
〜愛国文化啓蒙運動活発化
<1907年>
7月 5日 ハーグ密使事件
※万国平和会議 密使派遣
7月24日 高宗強制退位 純宗即位
7月24日 第三次韓日協約
(丁未七条約정미칠조약)
〜統監部の行政権掌握、日本の次官
による内政干渉(次官政治)、
朝鮮軍隊解散
<1909年>
7月17日 己酉覚書(기유각서) 締結
〜司法権(司法、監獄事務) 譲渡
9月〜10月 南韓大討伐作戰
10月迄 義兵弾圧終了(本拠地満洲へ)
<1910年>
6月24日 韓日約定覚書 締結
〜警察権(警察事務) 譲渡
8月22日 韓日併合条約 締結
8月28日 条約 公表
■ 韓国の抵抗
■ 日本の動き
■ 韓国と日本の条約
<映画 暗殺>
日本の朝鮮植民地化過程を一言で言えば、1875年より綿密な計画の元、外交的手段で外堀を埋め(英米清露)、脅迫と懐柔による条約締結と経済浸透、
甲午農民戦争や義兵闘争などの民衆闘争を力で抑え込んで内堀を埋め、偶然や僥倖が入り込む隙間も無く一歩一歩併合を着実に進めた国を挙げての政策すなわち「国策」だったと言えます。
日本では一部、当初植民地計画は無く、保護国を維持するつもりが、安重根の伊藤博文暗殺により併合が決定したと言う見方が有りますが、木を見て森を見ずと言えます。
欧米に遅れる事百年弱、アジアでいち早く近代化に乗り出す上で必要不可欠な「市場と資本蓄積の草刈り場」を必要とした日本が、アジア最後の前近代独立国家であった朝鮮の隣国だった事が我が国にとって誠に不幸だったと言えます。
<帰らざる密使となったハーグ密使事件代表達 左から李儁、李相卨、李瑋鍾>
そしてこれがその後、朝鮮支配の片棒を担いだ英米と日本との、中国と東南アジアを巡る対決に繋がるのですから皮肉とも言えます。
朝鮮では1905年乙巳保護条約の時に反対運動が勢いよく起こりましたが1910年併合条約の時はさほど反対運動が起こりませんでした。
理由の一つは運動が弾圧され尽くした事が大きかったと言えます。
乙巳五条約を機に立ち上がった義兵闘争は丁未七条約締結で解散させられた朝鮮軍出身者を迎え大いに盛り上がり、十三道 倡義軍が一度はソウル10km迄進軍する勢いを見せた事も有りましたが、日本軍の大討伐で1909年迄に押さえ込まれ満洲への転戦をやむなくされます。
ドラマミスターサンシャインでもこの間の事が丁寧に描かれて居ます。
<ミスターサンシャイン義兵役のキムテリ>
余談ですが、ドラマなので仕方ないとは言え、この時期の韓国の史劇は過度なナショナリズムのせいで少々歴史を知る立場から見て鼻白む箇所が有ります。
概して日本軍の行いがオーバーです(笑)。
決して歪曲と言う事では無く、カタルシスを狙う意図は分かりますし、劇に多少の誇張は付き物ですが、日本も含め国際的に流通するのですから極力客観的に、冷静に描く事が肝要と見ます。
リアルな描き方が一層感動を呼ぶ事も有るのでは無いでしょうか。
と、世界の中心から愛を叫んでも何の影響も与えられませんね(笑)。
<キムテリとピョンヨハン>
話は戻りますが、義兵と並ぶ両輪で有る愛国文化啓蒙運動も国債補償運動など、あらゆる口実を受け弾圧され挫折しています。
この様な如何なる手段も厭わない日本の弾圧が功を奏したと言えます。
盛り上がらなかった理由の二つ目は、根本的に保護国化がとりも直さず植民地化そのもので有り、併合は形だけだったからでしょう。
上記の様に合併迄の間、司法、行政、警察などあらゆる内政権を奪取しての形式のみの合併条約です。
それでも発表を1週間伸ばした用意周到さは如何に民衆の反発を怖れていたかを物語りますが、保護国化からの5年間で状況は既成事実化してしまったと見て良いでしょう。
その意味では乙巳保護条約と乙巳五賊のインパクトはそれ程に強く、我が国にとって史上最大の恥辱だったと言えます。
<共和国映画 アンジュングン(安重根)伊藤博文を撃つ(안중근 이등박문을 쏘다)>
末尾になりますが、韓国ドラマ・映画と違って普段中々観る機会の無い共和国の映画・ドラマですが、かなりの力作・名作も有り目を見張る物が有ります。
この時期を描いた作品としては「アンジュングン(安重根)伊藤博文を撃つ(안중근 이등박문을 쏘다)」とヘーグ密使事件を描いた「帰らざる密使(돌아오지않은 밀사)」が白眉です。
こちらは過度なナショナリズムを排除し淡々と事実に沿って描かれているのでジワジワと緊迫感が増し、まるで歴史のページを覗く様なリアル感が有ります。
<共和国映画 帰らざる密使(돌아오지않은 밀사)>
今の日本の空気からは想像つきませんが、後者は日本でも一般公開、上映されていました。
今でもYouTubeで配信されているのですが、日本語字幕が無いと言う問題(英語は有り)が有るので、多少心得の有る方はチャレンジしてみては如何でしょうか?
PS:情報を頂きました。
帰らざる密使、日本語字幕版有るそうです。
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<参考文献>
朝鮮史研究会編 朝鮮の歴史
山川出版社 世界歴史体系 朝鮮史2
山川出版社 朝鮮現代史
キネマ旬報社 金両基
ビジュアル版 朝鮮王朝の歴史
イサベラビショップ 朝鮮紀行
東洋文庫 F・Aマッケンジー 朝鮮の悲劇