9月9日
本日はゆうたろすと消防用設備点検。
ゆうたろすが年内で退社して警察官になるという事で、ちょっとした『踊る大捜査線』の青島俊作である。
「実は前から警察官になりたかったんですよね。試験受かったんで自分、年内で辞めます」
道中色々聞いてみると、ちょくちょく採用試験は受けていたみたいで夢を追い続けた模様。
流れのまま生きてきた自分にとっては、なりたい職業があるというのは羨ましくも思う。
原宿までの車中、話題は尽きなかった。
現場近くのパーキングに到着し、「よし、卒業試験だ」とゆうたろすに頭(先導)に立ってもらい進めてもらうことにする。
しかし、まず現場にたどり着かず迷子になってしまい、急にウロウロと走り出す始末。
「あれ…? おかしいな、こっちだったはずなんですけど…」
こっちは脚立を持って重装備なんで勘弁してほしいところだが、わざとなのかもしれない。
日頃の恨みでも晴らしているのだろうか。
「おいおい、現場そっちじゃないぞ」とちょっと誘導しつつ、なんとか現場へ到着。
挨拶を済ませて受信機操作へ。
ここもゆうたろすに任せる。
かれこれ3年目。入社時からこの物件を点検しているので「これはいけるだろう」と思ったが、見事に全館でベルが鳴動状態に。
ジリリリリ!!と館内に響き渡るベル音に焦るどころか、彼はムッとした顔で言い訳を始める。
「いや、この受信機スイッチの反応が悪いんですよ! 俺はちゃんと手順通りやりましたからね!」
感情をモロに表に出して子供みたいに不貞腐れるが、どう見ても音響スイッチを押し忘れている。
気を取り直して感知器の点検をしてもらうも、残りの感知器が見つけられず再び店内をウロウロ。
「前も迷ったんだよな……この物件、間取りがおかしいんじゃないですか?」
ブツブツと建物のせいにしている。学習しない男である。
……まあ、あえてわざと評価を下げて、裏では有能なエージェントを演じているのかもしれない。
別班か。
能力不足か、平気でつく嘘か、はたまた重度の発達障害の疑いか……謎は深まるばかりだが、警察学校で揉まれて改心することを祈るしかない。
まあ不祥事はなくならないわなとも思う。
ゆうたろすとはここで別れて、自分は藤沢へ向かう。
強風で防火戸が反応してしまうということだ。
午後一で対応して感知器を取り外す。
2021年製の感知器だ。
まだ5年程度だが、吹き抜けで粉塵が蓄積して誤作動を起こしたのかもしれない。
作業中、統括から連絡があり、辻堂で満水警報が頻繁に発報するということで連絡があった。
そういえば岩男がそんな事言ってたなと思い出す。
岩男が動かないので、見かねた統括がこちらに連絡してきたのだろう。
予定変更の相談は直接言いにくいのだろう。
岩男に連絡したら、案の定いつもの落ち着き払った声で出た。
「あー、辻堂か。ちょうどそっち向かえるよ。一緒に行くか」
合流して辻堂へ向かう。
立駐(立体駐車場)の排水ポンプ4箇所の点検だ。
現場に到着してピットを覗き込んで確認してみたが、どれも動作は良好。というか、新しい排水ポンプと逆止弁だ。
隣で設備を見つめていた岩男が、渋い声でポツリと漏らした。
「ここさ……うちで改修提案出してたんだけど、相見積もりで負けたんだよね……」
悲しそうにつぶやくベテランの佇まいが哀愁を誘う。
雨で一時的に追いつかなくなっただけだろうと結論付けた。
事務所 → 原宿 → 辻堂 → 事務所。
164kmの大移動であった。