1960年作品。
無国籍アクションの傑作ですよ。
新東宝で、石井輝男が撮ったおもしろ傑作のうちの1つ、ってコトになるんでしょうね。
いや、これ、いま初めて見たのね。
この『女体渦巻島』の前後。石井輝男のフィルモグラフィーだと…
『黒線地帯』
『女体渦巻島』
『黄線地帯』
と並んでいてね、これは見逃していたのよ。
もちろん、『黒線地帯』も『黄線地帯』も傑作。
『黄線地帯』も、かなり無国籍ではある。
なんだけども、このね『女体渦巻島』は、海に囲まれた島、対馬って設定なんだけども…
外界と隔絶した雰囲気がいいんです。
そこに、夜のクラブがあって…
女たちがいて、麻薬密売組織がいて。
冒頭、いきなり主役の吉田輝雄が、この島にやって来る。
吉田輝雄、正義の味方かと思いきや、悪の組織の人間だった。
悪と悪との戦いですよ。いちおうはね。
石井輝男、いつも基本は勧善懲悪でハナシをすすめるから、もちろん吉田輝雄はナイスガイ。
でも、彼が、刑事、警察とかじゃないのがおもしろいとゆうのか。
吉田輝雄の目的は…
クラブのマダム・三原葉子であり、かつて恋人だったふたりを引き裂いたボスに復讐するコト。
わかりやすい。
しかし、目的は提示されるのに… 三原葉子はいいとして、悪の組織のボスがね、なかなか出てこない。
じらすのよ。
すると、そのー、吉田輝雄と組織の下っぱどもの小競り合いを中盤やる。
これがまた、ワルくないのよ!
石井輝男の演出が冴える。
新東宝っぽいって言っていいのか知らんけど、あの照明。
カメラの構図も、イカす。
そして、クライマックスに満を持して現れたボス・天知 茂の登場の仕方も良い!
三原葉子の幻想のなかに、あらわれる天知 茂!
この天知 茂の悪役ぶりには…
ってゆうか、わりとのんきな対決ムードだったりするけども、それはそれでいい!
あのー、石井輝男ファンには常識なんだけどさ、新東宝時代の…
つまり、『黒線地帯』とか、この映画のネタを、のちのちの映画を撮るとき、使い回すんですね。
普通、ネタの使い回しは、味が薄まるんだけど…
そこは石井輝男。
『怪談昇り竜』とか、『総括リンチ』とか、メチャクチャ濃厚なのよ!
それらと比較すれば、この『女体渦巻島』は、シンプルといえるんだけど、そのストレートな活劇の良さがある。
海、お約束の崖、洞窟。
天知、三原葉子、吉田輝雄。
おなじキャストによる『黄線地帯』に続く…
って、そんなワケないんだけども!