2017年作品。




えーっとね、すでに2回見ていた、この『それから』はね。


わたし・五円木比克の印象だと、「これ、おもしろい」だったんです。




それを。

今回、見直してみて、やっぱりおもしろいって、そう思ったんだけども。



たぶん、この『それから』あたりから、いまに続くホン・サンスの…

第何章かのステージが、はじまってたのかなー、とも思いました。






キム・ミニがね、真面目な… 神様うんぬんってハナシをする。


それは。

このあとの、『草の葉』でもしていたような気がする。

忘れてるけど。




『あなたの顔の前に』も、そんな感じの、神様だなんだ、宗教的なテイストがあった。



この、宗教的なテイストが、『あなたの顔の前に』で、見事に決まっていたと、わたしは思ったんだけども。


この『それから』で、すでにキム・ミニが、心うんぬん、神様うんぬんのハナシをしていたと、いまさら確認しましたね。







にしても。

ここでの、キム・ミニは、主要な登場人物なんだけども…

ドラマにおいては、部外者なのね。見ればわかるけども。




そのドラマは…

いつもの、といっていい、ホン・サンスのやる不倫のハナシです。



不倫は、おもしろい。


女と男のドラマが、露骨に対立を生みますからね。

そして、ど~なるんだろう… とゆうサスペンスもある。




キム・ミニは、その不倫のドラマとは、関係ないんだけども。

巻き込まれる、とゆう作劇。見ればわかるけど。




不倫の… 三角関係、プラスワン。


プラスワンが、キム・ミニ。





その、プラスワンとゆう、アイデアもおもしろいんだけども。


そこから、後半における、キム・ミニと… クォン・ヘヒョのやりとりも、おもしろいのね。


さらに、ラストで、観客は、「んんん?」ってなる。

ええっ… ここで、ホン・サンス得意の話法の工夫やんの?

ってなるんだけども、まあ、それはフェイクなんですね。


そこを含めて、さすがの出来。





クォン・ヘヒョは、小さな出版社を経営している。


それは、ホン・サンスの知り合いが実際に出版社の社長かなんかで…

その実在の、会社のオフィスを見たホン・サンスが。

ここで撮りたい、と言ったらしい。




このオフィス。

さらに自宅や、飲み屋などでの… ほぼ室内劇。




たいがい、ほかの映画だと、外でも撮るんだけども… これに関しては、野外のシーンは少ない。


設定とゆうか、室内でのやりとり、会話で展開するから、野外のシーンは最小限。



その設定は…

会社のオフィス、オフィスラブ (笑) ってコトですからね。



で、クォン・ヘヒョは、社長業のほかに… 文芸評論家でもあるらしいんだけど。


とくに、そこを突っ込んだ描写はないのね。


いつもの、薄い、インスタントな作りといえます。




家と、オフィス。それから、飲み屋などに行く、クォン・ヘヒョってゆう。








冒頭でね。

クォン・ヘヒョが、自宅で、奥さんに

「あんた、女がいるんじゃないの?」と、問い詰められる。

それを、否定も肯定もしないクォン・ヘヒョなんだけども…



そのとき、奥さんが、画面・左で、クォン・ヘヒョが、画面・右。

そうゆう会話のシーン。座る位置。




それで、そのあと、キム・ミニが登場してからも…

ずーっと、クォン・ヘヒョは、画面・右にいる。


キム・ミニは、画面・左。





それが、後半、キム・ミニがね… 画面・右になるシーンがあるんです。




それは。

クォン・ヘヒョと、彼の愛人と、キム・ミニとの会話のシーン。


これがね。

前半の、クォン・ヘヒョと、奥さんと、キム・ミニとの…

3人の会話の反復だってコトに、今回はじめて気がついたとゆう…




キム・ミニが、画面・右に座って…

つまり、前半の、クォン・ヘヒョの奥さんの位置に座る。


そして、クォン・ヘヒョと愛人に、キム・ミニは「なんか不愉快だなー」とかゆうのね。



前半も、やっぱり奥さんが… 画面・右に座って「ふざけるのもたいがいにして!」って文句、怒りを表明するんです。


あきらかに、その反復だった。

くりかえし。










この辺りの演出をして、青山真治は、「ホン・サンスはフォルマリスト」と言ったのかもしれない。


そこに、いまごろ気づいたヲレ (泣)





ともかく。

ホン・サンスは、おもしろい。



わたしは、おもしろさに惹かれるから…

この『それから』、そして、『あなたの顔の前に』を評価するんです。



でも、まあ、「おもしろさとか、ど~でもいい」って人はね…


『夜の浜辺でひとり』や、『草の葉』を評価しているみたいなのね。



まあ、好き嫌い、人それぞれだと。



ホン・サンスの近年の作品は、軽いのがいいと思ってます。


薄くて、インスタント。

なんだけども… いよいよ人間の深いトコロを描くようになってきた。


信じるだ、死だ。



その、深さと、薄さ軽さの同居が、ホン・サンス映画。








目黒シネマにて鑑賞