1994年作品。




約30年前だ。


場所は明示されないが、どこか田舎の、海辺の町が舞台。


そこに、この映画のヒロイン・鈴木京香がやってくる。

田舎の町の、消防士たちが、鈴木京香に恋する。



そんな、ラブコメ。



そんでもって、これ、松竹映画ゆえ、小津安二郎風なトコロと。

山田洋次の、寅さん風な… 失恋デフォなトコロとがある、家族と恋愛のハナシといえる。




けれども。

脚本 筒井ともみ・宮沢章夫・竹中直人とゆう布陣において…

ボクからすると、映画『119』は、宮沢章夫の映画とゆう認識になるのだった。



ちなみに、宮沢章夫は、昨年、死去している。




彼は、大学時代からの竹中直人の盟友であり、そもそも映画の人ではなく…

演劇の人なのだった。









宮沢章夫を基準にすると。

舞台、つまり演劇である… 『ヒネミ』とゆう作品から

そう何年もたっていない頃の、作品が…

この『119』。




『ヒネミ』は、お芝居。

当たり前だが、物語のある、演劇なのだったが。


それ以前…

1980年代において、宮沢章夫は、コントを舞台で繰り広げていた。

コント。笑い。


盟友の竹中直人も、そもそも、笑いの人。


コメディアンとして、世に出て… さまざまな映画に俳優として出演したあと。

映画監督として、デビューしたのは、1991年だとか。




竹中直人は、映画を撮った。


映画が好きだったのだろう。


映画監督としてのキャリアが、このあとも続く。




その、竹中直人監督作品を、ボクは見ていない。

監督デビュー作『無能の人』ですら見ていない。




ゆえに、竹中直人監督の… あ~たこ~だを言える立場にないのだった。


それはそうだろう。







『119』。

 
どこか小津を思わせる… そして、寅さん風でもある、ラブコメ。




構造としては、宮沢章夫の作った「砂漠監視隊」を援用した…

田舎の消防士たちのハナシ。


そこに、ヒロイン・鈴木京香が絡む。



映画として、評するならば。

赤いクルマ赤い傘の映画だとゆうコトになる。


走る人、さらに… 電車や、動物なども描かれるのだが。


やはり、小津オマージュと思われる赤の映画であり

赤井英和が、ここで寅さん役を演じるのも… 赤の映画とゆうコトなのかもしれない。




赤いクルマ。

それは、いったいなんなのか?


もちろん、消防車は、炎、火事をイメージした… 赤いクルマであるけれど。


その、炎と、対極の… 海、海辺、水の映画が、『119』でもある。




宮沢章夫のアイデアだと思われる、「蟹を研究している大学院生」の、鈴木京香。

田舎の海で、蟹を観察する。



その、鈴木京香に、つきまとう… 消防士たち。



鈴木京香に対して。

まともにアタックもできずに、コメディ的に、偶然を装ったりして、つきまとう作劇。


鈴木京香は…

小津が、ついぞ描かなかった、豆腐屋に住んでいる。


小津映画のポスターなども、背景に写される。



露骨なオマージュ。


いや、それはそれとして…

的な感じに、小津は撮らなかった山田洋次の寅さん風の

恋愛が、物語のメインではある。



小津 + 山田洋次。



女に恋して、あっけなくフラれる… 寅さん。『男はつらいよ』。



その、リアルな、アップデートが『119』だと言えるけれど。


フラれる赤井英和の、ウジウジした、気の弱さが、しっかり描かれていたのが良いと思った。


そう、いまは言えるけれど。



30年前、この映画が作られた頃は、ボクも赤井英和と、まったくいっしょの…

気の弱い、ダメすぎる男だった。





 
赤井英和の、ダメさ。


彼が、アタックを強引にすれば、鈴木京香も、受け入れたかも…

なのだが、赤井英和、ほんとうに気が弱いのだった。




そして。

その、男のダメさ、弱さを、ボクも笑えない立場である!


臆病。それと、劣等感。


ダメなのだった。

劣等感をもつと、もうダメなのだった。



ああ、劣等感てやつはさあ!


なんなんでしょうか?


他人にダメと言われる、その以前に?


ヲレはダメだ!


そう、判断しちゃってる?



判断させられちゃってる?




ともかく、劣等感、コンプレックスってやつはさあ。

すべて、ダメにするよね?


 


いや、それでも…

女と男の関係、うまくゆくバヤイもあるが。

なーんか、煮詰まって…

結局、別れに至る、その恋愛(結婚)話の展開を、岩松 了が演じている。




岩松 了に関しても…

ボクは無知であるが、宮沢章夫には離婚歴があるのを小耳にはさんでいる。
 
 

ここでの、無様な岩松 了。


彼の妻は、電車にのって、町を出ていったとされる。

画面としては、そこは描かれない。

 

去りゆく、女。

 
それは、赤井英和が、鈴木京香にフラれる伏線ともいえた。


 

その、鈴木京香は、たしか、映画の冒頭のほうで、電車にのって登場する。


クライマックスの、夜の消防署で…

鈴木京香は、そこにいた竹中直人に、「あしたの電車で、わたしは帰ります」と言う。

この場面が、赤い傘であり、海辺、そして雨のシーンなのだった。


この、夜の雨と、赤い傘の演出は見事だと思った。



そして、ほんとうのラストは…

フラれた赤井英和による、赤いクルマのゆるやかな、無意味な走行シーン。


そこに、砂漠監視隊ならぬ、消防隊のメンバーが、いっしょにいる。



仲間たち。



それぞれ、いろいろある。



塚本晋也と、伊佐山ひろ子の絡みとか、すっかり忘れていた。



浅野忠信の妻は、大塚寧々。



竹中直人は、男やもめ。



温水洋一に、女関係は、なにもない(泣)



津田寛治は、しあわせな結婚生活。




そこらへん、もっとドラマを。

彼・彼女の過去や現在を、見たいとも思ったが…

メインの赤井英和と、鈴木京香の、リアルなやりとりは、よかった。






ダメな男。


アタックすら出来ない。


なんて気が弱いんだ!


そりゃ、鈴木京香も、見切るわ。



濃い関係が、はじまる以前の問題。



 

ゆえに、『119』は、恋愛映画としても、コメディ映画としても

中途半端な出来なのだったが…


ボクは、だいすきですよ!




ダメな男への、やさしさに溢れているしね (泣)








あ、ちなみに…

ボク・五円木比克は、なんと、鈴木京香と生年月日がいっしょ。


彼女は、この映画の当時、25歳ぐらいか。


竹中、宮沢は… 37歳あたり?



若かったなあ。



うーむ。










神保町シアターにて観賞