『ニンゲン合格』







見事な少年文学。

そう、『ニンゲン合格』を評したコトがある。


誰が。

ヲレが。















『ニンゲン合格』の、どこがどう見事だったのか。


具体的に書いたハズであるが… すでに忘れている。


まあ、それはいい。



しかし、少年文学(ま、映画だが)とゆうのが、黒沢 清の作家としての限界かもしれない。


性、セックスをふくめた…
男と女の関係。

それが苦手。描けない。













『ニンゲン合格』から、4、5年のちの作品、『アカルイミライ』は…

青年 (20代) の物語だったが、その物語に、男と女の関係は、皆無であった。














すでに安定した関係である、夫婦ならば、黒沢 清の得意とするトコロである。


それは、たぶん『復讐』『CURE』あたりからのハナシであろう。















その後。

『LOFT』、『叫』、『ダゲレオタイプの女』などで、恋愛関係の男女を描いていたが。


成功しているんでしょうか?



人によっては、『LOFT』や『ダゲレオタイプの女』をほめているので、ま、人それぞれ。



端的にゆうと、『LOFT』も『ダゲレオタイプの女』も、長いのがよくないとヲレは思っているが。


そこへいくと、『SEVENTH CODE』の短さがサイコー! とゆうコトになる。

















そうだ。

『回路』の加藤晴彦と。

小雪。ふたりの関係。恋愛のようだったと記憶する。

ど~だったか?


いまから、『回路』。
国立映画アーカイブで見直すのだが…


それはそれとして、『神田川淫乱戦争』と『ドレミファ娘の血は騒ぐ』も、恋愛映画の側面はあった。















『神田川淫乱戦争』の。

ラストのバトルに至る…
距離をこえた、2人の見つめあい、そこからスタートしての抱擁、バトルの素晴らしさは特筆したいが。



いわゆる、複雑な恋愛感情、ドロドロの表現とはかけ離れた…

単純さの勝利といえた。



単純な恋愛活劇。その素晴らしさ。
















『ドレミファ娘の血は騒ぐ』。


主役の洞口依子が、恋愛感情からさまざまなアクションを演じる。


しかし、ここでも恋愛から逸脱した冒険が素晴らしいのだった。


奇妙な冒険。















それにしても。


『LOFT』における、女と男。

つまり、中谷美紀と豊川悦司であるが。


ふたりとも、かなりひどい目にあうのは、何故だろうか?















泥を吐く中谷美紀。

このフィクション表現は、おもしろい。



そして、可哀想な幽霊、さらにミイラの登場。



それらはいいとして…
ラスト。豊川悦司の悲惨さは、ど~だろうか。



ま、これが『ダゲレオタイプの女』になると、主人公の男は、それほど悲惨でもないが…

絶望的といえば、そんな境遇ではある。


絶望。悲惨。


だからよくない、とゆうワケではないが。

それにしても。















『叫』の、役所広司と小西真奈美も、悲惨といえた。



この『叫』の場合は、しかし、エンターテインメントにふった展開と、派手な幽霊描写で、救われているともいえる。


可哀想な幽霊。


かつて悲惨な出来事が。


いま、ふたたび惨劇が。



そんなエンターテインメント。


















だらだらと。


黒沢 清作品をふりかえってみたが…

『ニンゲン合格』にハナシを戻して。


少年・西島秀俊の面倒をみる男を演じるのが、役所広司だった。

















役所広司は、素晴らしい俳優だ。

そんなコトは、わかっている。

でも、この『ニンゲン合格』の役所広司は、ちとミスキャストかもしれないと、ヲレは思う。



たまに、ものすごいワル (悪役) を演じる役所広司だが、『ニンゲン合格』でも、廃棄物の不法投棄でひと儲けしたりする… しかし、ここでは基本的に善人のように見えるのだった。


西島秀俊の面倒をみる。善人。
しかし、ワルな一面もあると。


だったら。
ヲレは、この役は「見るからにワル」の俳優をキャスティングしたほうがいいと思った。




いまさら何いってんだ、ではある。


のだが、可能性、妄想としてヲレのキャスティングプランを記そう。



ズバリ、これは山田辰夫がいい。


















山田辰夫。


すでに彼は鬼籍にインしたワケだが、『ニンゲン合格』の頃は、もちろん存命だった。




彼がセリフを言う。


「俺は子どもは嫌いだ!」



そして、不法投棄でニンマリしつつ… クライマックスで西島秀俊に向かって。


「お前は、確実に、存在した」


そう、ニコリともせずに言う。





このハードなタッチ。


これがあったなら、『ニンゲン合格』、完璧だったと思う。