『瀬戸はよいとこ 花嫁観光船』






瀬川昌治監督による、1976年の名作。

脚本は、瀬川監督&大川久男。





フィルムセンターでの、
「特集・逝ける映画人を偲んで 2015-2016」での上映を見た。今日。

8月1日。2017。



そう。
上記の、脚本のお二人とも、近年お亡くなりになったのです!

遅くなりましたが、ご冥福をお祈りします。











一言でいえば、サイコーな映画であった。

たしか、1年半まえに見ているのだが…
いい具合に忘れていたのだ。
だから、楽しめた。

とゆうか。

名作は何度見てもいい。




錯綜する人間関係を、抜群な手腕で整理して、ハナシを進める見事な演出。


いや。
そんなコトでは、別に驚かない。
瀬川昌治なのだから。



このキャラと、このキャラを組み合わせて…
ストーリーに、あのネタをからませよう。

フランキーありきの企画だから、まあ主演はもちろん彼として。

そこに、新伍ちゃんと… それと… 財津一郎でいこうか!




とゆうような、企画・脚本の頭脳労働もバツチリ!
現場を仕切る演出、役者の演技など、肉体労働もお見事。




ドラマにおける、複数の対立軸が、からみあいつつ、
思わぬ方へと展開してゆく、おもしろさ。



フランキーは、狂言回し的に、軽快にあたりを走り回るが、
時代はすでに女性のもの。

少し疲れた中年男たちのブルース。
そしてブギウギ。


山城新伍の力をぬいたボケが炸裂し、財津一郎のボヤキが軽く爆発する。



対する女優陣は元気いっぱい。

女たち。
男たち。

個人戦&チーム戦。








遊園地の観覧車のシーンもいいが、
映像=アクション大好きな小生的には…

船にのってる夏 夕介(甲板に立っている)を、俯瞰でとらえた一瞬のショットにシビレた。








嬉しいのは、キメのシーンが「阿波おどり」とゆうアクションであるコト。



といっても派手に踊るワケではなく。

ロケによる本物の阿波おどりと、スタジオでのセット撮影を、たくみにカットバック。




さらに、突然の嵐による…  
船の鳴門海峡大パニック・アクションが素晴らしい。


ここでのフランキーによる、古典的ギャグ(サイレント映画でよくある)も、ゆかいゆかい!

このクライマックスは、ほとんど宮崎 駿ですわ。









この名作。

8月12日(土)にも上映されるので、未見なら見るべし。


瀬川監督の『喜劇 初詣列車』も同日に上映するが、
この映画の渥美 清の暴走ギャグも必見である。





(2017年8月1日)







『喜劇 初詣列車』






何年前だろうか?

フィルムセンター(現・国立映画アーカイブ)で、マイケル・ホイの『ミスター・ブー』を見たときのコトだ。

映画がおわって、トイレにかけ込むと…
そこで、あるオヤジがたまりかねたように、こう吐き捨てた。

「くだらない!」

と。







たしかに、『ミスター・ブー』は、傑作コメディであるが…
くだらないギャグの連発であった。
決して、オヤジの指摘はまちがってはいない。


だが。


ひさびさに、「くだらなさの否定」をする人物を目の当たりにして、わたし・五円木比克は…

まだいるんだ、こんなオヤジとあきれつつも、
やはり、「くだらなさの否定」問題の根は深いと、思わざるをえなかった。







真面目な人は、腹を立てるのですよ。
くだらなさ、くだらない笑いに対して。







『喜劇 初詣列車』の、瀬川昌治監督、そして…
主演の渥美 清が、
「ただくだらないだけのハナシだと怒る人もいるから、少し真面目なフリをしますか」と、
戦略的にかんがえたかどうかは、知らない。


単に、体質として、根が真面目なのかもしれぬ。



あるいは、脚本家・舟橋和郎が、とくに何もかんがえず書いた物語を、
現場で楽しみながら、演技・演出したら、こんな傑作が出来たとゆうコトなのかもしれない。






おそるべき傑作であった。





真の傑作とは、この映画のコトである。




渥美 清演じる、国鉄の車掌は、生真面目な人物である。
その、生真面目な人物が、ある若者(小松政夫)を、東京で捜索する。

ただそれだけのストーリーである。




ストーリーの先を書いてしまえば、
小松政夫は、新宿でフーテン(!)をしていたが、渥美 清の説得に負けて、
真面目に働きはじめ、結婚もしようか… となるワケなのだが。





この、どこまでも真面目な物語を、
とことんふざけつつも、真面目に演じきり、演出するこの姿勢にリスペクトである!





さいしょから、さいごまでふざけている。

もちろん、同時に真面目さを演じている。


生真面目な渥美清。





むろん、いつもは「お調子者のダメ人間」の寅さんを演じている渥美清だが。

素顔は、「寅さんと全然ちがうじゃねえか!」とゆうコトらしい。

きいたハナシですよ。










そして、この『初詣列車』は…

1968年とゆう時代の風俗(サイケ、ハレンチ、ヒッピー)も、彼ら(瀬川・渥美)に味方したといえよう。

昭和元禄。その瞬間の、奇跡のような1本の映画。





ただ、まるでリチャード・フライシャーのように透明で、
トビー・フーパーのように激しい、この傑作を、人類はいまだに発見していないともいえる。


おっと、いまのフレーズ。
阿部和重のパクリでしたね!(笑)







たかが映画じゃないか。

リアルが大事、リアルが。

そんなリア充の人々は、この傑作を…


ただ単に、おもしろい映画。笑ったね、楽しかったね…
で済ますのだろう。


真面目な人たち。

それはそれで、結構。





そして、
瀬川昌治にしろ、リチャード・フライシャーにしろ、トビー・フーパーにしろ…

「お客さまに楽しんでもらえたら、それで十分」と、思っているのだろう。



その、慎ましい姿勢は見習いたいとおもう。




彼ら、天才たちをわたしはリスペクトする。








(2017年8月13日)