通夜当日、足を引きずりながらお父様。

施主様はスタスタとお父様を置いて歩く。

自殺なので警察の検死も行っている。ここ数日の疲れは経験した人じゃなきゃ解らないだろう。

昨日の笑顔は消え、椅子に座るなり大きなため息。

僕は疲れと実際に葬儀場に来た事で息子様の死を現実的に受け入れたんだろうと思い、そっとお茶を出した。熱いから気を付けて下さいね。

お父様、うわっ、熱いって満面の笑み。

僕はだから気を付けて下さいって言ったのに〜と笑顔になり。

このお父様の行動で僕も他のスタッフも施主様もみんな笑顔に。

施主様、お父さん昔からこうなんですよ。

僕はお父さん、通夜までまだ時間あるので棺桶の帯にお別れの言葉書いて下さいね。


昔は棺桶に釘を打つのが一般的でしたが、今は棺桶に帯を巻いて封をするのが一般的です。


お父様は、俺は文才あるから長文書くから下書きしたい。

何か下書きする物持ってきて、と。

僕は便箋とペンを渡して、明日の御出棺までで大丈夫なのでたっぷりと書いて下さいね。

お父様は笑顔で任せろと。

そんなお父様のキャラクターもあり、和やかなムードで通夜の時間を迎えました。

通夜には会社関係の方がズラリと、香典返しも追加で更に追加。

皆様に愛されていた故人様の人柄が良く解りました。

無事に通夜も終わりました。

棺帯には会社の先輩後輩からびっしりと別れの言葉。

お父様はそれを見て、今までで1番大きなため息を吐いて、有り難いな。と。

お父様は僕に、3年前に音信不通になってからな目の前にある駐車場に車が停まる度に息子来たんかな?

と思い家から駐車場を覗いてたんだ。

毎日毎日、息子来たかな?と。

息子の連絡先知ってるのに、帰って来いと言え無かった。

はぁ、馬鹿野郎。

これで終わりなんだよな、母ちゃんに何て伝えるか。

はぁー、馬鹿野郎。


笑顔は全く消えていて哀しみの通夜。