大東大原水かけ祭り | 一関・あぜ道めぐり 

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岩手県一関市の農村を探訪します

2月に入って、本寺はますます寒く、雪の日々が続いています。
でも豪雪というほどではなくて、雪に不馴れな私でも、雪掻きに慣れてきました。

さて、一関の冬は、寒さと雪の話題だけではありません。
2月11日に開催された「大東大原水かけ祭り」に行ってきましたニコニコ

真冬に行われる、ほぼ裸の男性たちによるお祭りは蘇民祭など県内各地にありますが、さらに水をかけるということで「天下の奇祭」と言われています。

どんな不思議なお祭りにも意味があるわけで、調べてみたところ、江戸時代の「明暦の大火」を機に始まった火防祈願と火防宣伝のお祭りのなのだそうです。1658年から毎年、火事が起きた日の旧暦1月18日に、昭和48年以後は建国記念の日である2月11日に行われています。

「明暦の大火」と言えば、江戸の町が壊滅状態になった有名な大火事です。
火元のお寺の近くに母方のお墓があるので、よく知っています。

この火事の話が大原に伝わり、今も火防祈願の祭りとして続いているんです。お祭りって、調べてみると本当に興味深いです。

今では、厄落としが併せて行われ、大願成就を祈願しての参加者も多いとのこと。徐々にイベント的になりつつあるそうですが、真冬に水をかけられるお祭りが江戸時代から続き、今年も約260人が参加したのは驚くべきことです。
また、今回は東日本大震災の復興祈願も込められ、沿岸から参加された方も多かったようです。

そして、水かけ祭りは参加者も水をかける人も男性限定です。裸男の後を走る加勢人(かせっと)も男の子のみ。
何でも男女平等の昨今、女人禁制はむしろ新鮮な魅力があります。

お祭りはメーンの水かけ以外にも様々な見所がありました。
まず、私の目当ては鹿踊りのストリート演舞☆


大東大原は行山流山口派鹿踊の発祥地で、大東周辺に山口派の鹿踊団体が存在しています。
今回は大東の小沼鹿踊り、大東高校の他に気仙沼の早稲谷鹿踊り保存会も出演されていました。


早稲谷鹿踊りは、長いササラと道化のような役がいるのが特徴です。

一関市やその周辺にはこうした様々な鹿踊が伝わっているので、今回の公演のような機会がもっと増えて欲しいと思っています。

ストリート演舞は鹿踊以外にも主役がいました。地元の男性たちによる「仮装手踊り」です。


水かけ祭りは女性が参加できないので、襦袢を着て女装した男性達が角つけをして、商売繁盛祈願の踊りをします。そのお化粧を残し、白木綿の腹巻きとわらじ履きで水かけに参加するので、祭りに何とも言えない「色気」を生み出していました。

それにしても、結構大勢の方が手踊りに参加している事に驚きました。しかも踊りがきちんと揃っています。
若者は踊り、年輩の方は太鼓など、世代で役割を交代することで、手踊りが絶えず続いているんだそうです。

他にも、地元の小学生による太鼓山車、中学生による御輿など、地元大原の幅広い世代が活躍していました。
参加する仕組みがしっかり出来ているんですね。

こうして午前中から様々な催しが続き、いよいよ15時から水かけが始まりました!


水かけは全コース約500メートル。進行方向の左側に水を張った容器が置かれています。沿道の人達は走ってきた裸男に桶で水をかけ、厄を落としてあげるのです。


裸男の後ろについて走る加勢人たち。加勢人に水をかけないのも大事なルールです。裸男の勇敢な後ろ姿を見て、この少年たちも水かけへの意欲を育んでいくんでしょうね。

水かけを最後に祭りは終了します。
水に氷が張るような寒さでしたが、裸男からは湯気がたち、なんだか現代とは思えないような光景でした。

メーンの水かけの前から最後まで、このお祭りはいいなと思うことがたくさんありました。
特に魅力を感じたことを挙げてみます。

1)地元の幅広い世代が参加し、継承していく仕組みがある。
大東高校の商業課の生徒が出席扱いで参加したり、小中も学校単位で参加、PTAも手伝うなど、本人の意思に任せない事が上手くいっているようです。

2)男性が祭りを盛り上げ、女性はお祭りを純粋に楽しめる。(役割が明確)
やっぱり、お祭りは男の人が引っ張っていくのが良いと思う。

3)イベントが全て伝統的なもので、お祭りの空気が引き締まる。
郷土芸能や手踊り、太鼓など、中途半端に現代的なものがなく、水かけの伝統的な雰囲気を守っていました。

他にも、色々な魅力満載のお祭りでした。
一関は東西に広く、互いのお祭りに行ったことがない、知らない、という人も多いかもしれません。
でも、水かけ祭りのように長い歴史、伝統を守ったお祭りは本当に貴重だと思います。
地域のお祭りが減少傾向にある今、水かけ祭りから学び、参考にすることはたくさんありそうです。

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