●この日は振替休日。
近所のうどん屋さんで昼食を食べて、午後は家でゆっくり家族団欒していたが、奥さんが「体調悪いから少し横になる」と言う。
夕方、頭痛がかなり酷く、見るに耐えないくらい苦しんでいたので、すぐに家から近くの大きなS病院へ僕の運転で連れて行くことにした。(結果的に明日に受診予定だった脳神経系の病院はキャンセルした)
●祝日だったので救急窓口で診察してもらう。前日作成していた病状を細かく書いた説明文書を受け付けに渡したところ、事が重いと判断されたのかすぐに診察室に通される。
●診察してくれたのはとても若い内科の先生だった。(研修医?)
説明文書を読んで、「すぐにCTを撮りましょう」ということになった。(今思えばこのお若い先生の素早い決断には本当に感謝です。)
●奥さんのCTを撮り、すぐに僕と奥さんの2人が診察室に呼ばれた。(6歳のチビは待合室でおとなしく携帯ゲームをして待っていてくれた)
そこには若くて背の高い脳神経外科のM先生が椅子に座っていて、さっきの若い内科の先生はそのそばに立っていた。
M先生がパソコンの画面を見ながら「脳内に白い影が見えます。かなり大きい。腫瘍の可能性があります。これだけでは判断できないので、すぐにMRIを撮らせてください。」ということになる。
●MRI検査待ちで一旦待合室に戻る。
奥さんと僕、2人ブルブル震えていた。
「きっと大丈夫だよ。もし腫瘍でもきっと良性だよ」と励まし合った。
不安はMAXだったけど、ここ数日の謎の体調不良や失語の原因はコレだったんだ!と原因がわかり、不思議と少しホッとする気持ちもあったのを覚えている。
●奥さんがMRI検査で呼ばれる。
僕は待合室でチビと2人で長い時間待っていた。
もう何がなんやらわかんない。
頭の中は色んなことがグルグル回っていて、吐きそうなくらい不安で胸が痛かった。
●僕が1人で診察室に呼ばれた。
そこには先程の2人の先生が立っていて、椅子にはベテランオーラの漂う年配の先生が座っていた。
祝日で、救急外来なのに、先生が3人も並んでるよ・・・。
もうこの時点でイヤな予感しかしなかった。
●ベテランの先生から次の説明があった。
・奥さんは脳腫瘍だと思われる。
・(パソコンの画面で白い影を測りながら)3.5センチくらいの大きさです。 ※→ハッキリ言って素人の僕が見ても大きな白い影で、一目見てヤバいと直感するものだった
・私の経験で悪性の可能性が非常に高い。
・早いタイミングで手術をした方が良い
・うちの病院でも手術は可能だけど、近くのO病院の方が間違いない、そちらに転院されることを強くお薦めする
・既に手配はとっています、今日はこの後すぐにうちに緊急入院、近いうちに転院、手術は8/17で予約を入れます
・O病院の医師はとても腕が良いし、信頼してもらってよいです
●ベテランの先生が怒濤の如く説明をしてくださった。
あまりのスピーディーさに頭がついていかなかった僕。
もう、ドラマのような光景でした。。。
頭が真っ白になっている自分。
"頭をトンカチで殴られ・・・"みたいな表現しますけど、まさに今、それを体感している感じだった。
●頭の中はグチャグチャだった僕だけど、不思議と言葉が出てきた。
「妻の命は助かるのでしょうか・・・。」
ピリッと空気が張り詰めた。
少しの間をおいて、ベテラン先生が
「覚悟しなければ・・・・」
この後、あまり記憶がありません。
僕の涙腺が崩壊したことだけは覚えています。
●チビの前では泣けない、泣き顔はみせちゃダメだ!
そう思って、溢れる涙を拭いて、待合室に戻った。
看護師さんに呼ばれて緊急入院となる奥さんに会いにチビと一緒に別の病室へ。
そこにはMRI検査を終えてグッタリしている奥さんが横になっていた。意識はもうろうとしている。
とにかく辛そうだった。
「入院になっちゃったね。・・・」そのあと何か話したような気がするけど覚えていない。
涙が溢れてきたので、サッと病室を出て、涙を拭いて、無理やり笑顔を作って、また病室に戻って、奥さんの額にキスして。
チビが「あー、キスした!」
と言って茶化してきたのを、必死に笑顔で誤魔化したのを覚えている。