CGの鬼才、初の時代劇…「ICHI」曽利文彦監督インタビュー | ICHI

CGの鬼才、初の時代劇…「ICHI」曽利文彦監督インタビュー

 “ハリウッド仕込み”のCG(コンピューターグラフィックス)を武器に、実写のヒット作「ピンポン」や3D(立体映像)のフルCGアニメ「ベクシル 2077 日本鎖国」など斬新な映像手法で話題作を繰り出してきた曽利文彦監督が新作のジャンルに選んだのは時代劇。古典ともいえる座頭市にオマージュを捧げた映画「ICHI」(公開中)で新たに試みた映像表現とは? 曽利監督に聞いた。


 これまで常に先端技術を駆使した新感覚の映像を生み出してきたが、「実はずっと時代劇を撮りたかった。斬新に描こうという意識もありませんでした。あくまでオーソドックスな時代劇を目指した」と説明する。


 イメージとして思い浮かべていたのは黒澤明監督の名作「用心棒」だった。「時代劇だからといって細かい史実の時代考証にこだわらず、ダイナミックな殺陣などエンターテインメントとして成立させているでしょう。だから私も今、描ける時代劇を撮りたかった」


 《三味線を抱えた盲目の女旅芸人、市(綾瀬はるか)。絡んでくる男たちには“仕込みづえ”の剣で応戦する。けんかを売られた相手に彼女は言う。「なに斬(き)るか分かんないよ。見えないんだから」…》


 今作の要は市の剣術のリアルさ。本格的な殺陣の演技は必須条件だった。市の候補には運動神経の優れた女優が挙げられ、その中から文句なしに綾瀬を抜擢(ばってき)したというが、不安もあった。


 「市が戦った後、剣をつえの鞘の中に収める瞬間にとくにこだわりました。鞘を見ずに剣をスムーズに納める一連の動きは実はとても難しい。もし、彼女がこの動きをできなければ、CGにしようかと迷っていた」と明かす。が、「彼女は完璧(かんぺき)な動きをマスターし、撮影本番に間に合わせてくれました」


 「用心棒」の三船敏郎、「座頭市」における勝新太郎の研ぎ澄まされた殺陣の動きは、当時、カメラが追いつかないといわれていた。「今回は女性が主人公。スピードは求めなかったが、女性ならではの美しさを求めました」


 初の時代劇。一本撮り終え「戸惑いはあったが、自信がついた」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。「次はオーソドックスではなく、より過激な時代劇に踏み込んでもいいかな」。“CGの鬼才”の意欲は尽きない。


出典:MSN産経ニュース