高校生になって電車通学するようになると、行動範囲がぐっと広がって、それとともに新しい『食』を発見する。

三宮駅の北側ロータリーにあった『珍丼亭』がそうだった。

牛丼の上にトンカツが乗ったその名も『カツ牛丼』。カツ丼も牛丼も初めて食べたから、二重の初体験で前も後ろもである。

そんな珍丼亭の、5階建てのビル一面に掲げられたイメージカラーのオレンジ色の看板も、いつしかカラオケ店のものになってしまった。

珍丼亭が現存していれば、吉野家、すき家、なか卯、松屋とどんな争いをしていただろうか。