夫のハンカチが消える。
引き出し内のストックの枚数が減っていくのである。
この1年で5~6枚は消えている。
いったいどこへいってしまったのか。
夫にたずねると
彼はパソコンから目をあげて「ああ」と言った。
「ハンカチ落としのせいだよ」
へ?ハンカチ落とし?
「最近ニュースでやってる、アレだよ。
デスクワークの多い職種は
レクリエーションと軽い運動を兼ねて
日本の伝統遊戯を行うように、ってお達しが出てるんだ。
ウチの会社は『ハンカチ落とし』をやってるんだ。
僕のハンカチを提供するんだけど
時々靴で踏んでしまうんだよ。ハンカチ落としだからね。
それで靴跡の汚れが落ちなくて、処分してしまうんだよ。
ピンヒールで踏まれて穴があくこともあるな」
まあ、そうだったの。
でも毎回ハンカチがダメになると困る・・・。
順番でみんなのハンカチを使うわけにはいかないの?
「うーん。難しいね。
上司はハンカチ持たない主義だし」
女性社員ならハンカチを持ってるのでは、と言いかけたが
夫は紳士的な性格だ。
女性にハンカチを犠牲にしろとは言わないだろう。
・・・そうだ!
ハンカチ落としはやめて、
『だるまさんが転んだ』にしてもらってはどうだろう。
「それは社内でも検討したんだけどね。
でも一回やったら、部長が中腰で無理したもんだから
ぎっくり腰になって大変だったよ。
それで『だるまさんが転んだ』は却下されたんだよ」
まあ、それは仕方ないわね・・・。
そういうわけで、ハンカチは今も減り続けている。