6709 明星電気 某所から | 上がる株にはわけがある

上がる株にはわけがある

ロックなどを挟みながら、 株式投資に役立つと思われるニュースを選択。 過去に東洋経済のオール投資で株の達人として紹介されたこともあります。2020年2月急性骨髄性白血病を発症。22年1月奇跡の「完全寛解」で第2の人生スタート。

6709 明星電気
 

~気象防災・宇宙開発、全ての事業が飛躍へ~

 

目標株価:1200円

 

【会社概要】

 

地震などあらゆる気象・防災観測機器と人工衛星機器の二本柱、気象観測機器は「アメダス」の実績。再生を経て2012年にIHIの子会社となった(現在の併合後株価換算で900円でTOB)

 

【中間期末受注残が猛烈な伸び】

 

同社は地震・津波・台風・豪雨・洪水・竜巻・噴火などあらゆる天災の観測機器を手掛ける。販売先は気象庁や地方自治体など官公庁向けが多く、売り上げは予算が執行される第4四半期(1月~3月)に集中する特色がある。

 

まず特筆すべきは、足元の受注残だ。

 

今中間期末の受注残は65億円、前年同期比で70%を越える伸びとなっている。

 

前中間期末は37億円ほど、下期中はこれを消化しつつ新たな受注も得て、下期だけで48億円を売り上げた。(受注残37億円+11億円の売上)

 

今期は65億円の受注残に加え、新たな受注を例年通り得られれば、下期だけで75億円以上の売上が見込めることとなる。

 

同社の下期だけの売上高の見通しは54億円と非常に控えめに過ぎると言えるだろう。

 

上期も絶好調で、売上高は前年同期比44%増の25.7億円、営業損失は前年同期4.1億円から1.7億円へと大幅に改善した。差し引きで既に2.4億円改善している状況であり、下期に更に大幅に売り上げが伸びれば劇的な業績変化が起こりうる。

 

以上を踏まえた通期の業績としては、

 

売上高100億円、営業利益12億円、一株利益63円

 

と予想する。前期比3倍超の利益成長が期待されるが、以下詳述するが更に上振れる余地を残している。

 

【危機管理型水位計が上乗せ】

 

足元で豊富な受注残を抱えている主な理由は地震計の更新需要である。

 

今期から3年間は受注が見込めるとのことでこれは安心材料でもある。

 

これに輪をかけて期待されるのが、危機管理型水位計だ。

 

今年は台風19号・21号が東日本を中心に猛威を振るい、堤防が決壊した河川が多く見受けられた。

 

現状、中小の河川が氾濫しても水位計が設置されていないため、どこが決壊したか詳細なデータもとれていない、今後の防災にも繋げられないという問題が起きている。

 

同社は中小の河川の水位を今回の台風上陸など有事の際にだけ作動して計測が可能、警報を発令する従来よりも安価な水位計を開発した。

 

価格競争力も高く、今後多くの中小河川への設置が期待される。

 

水位を計測するのみならず、雨量や風速・風向・気温・湿度などあらゆる気象状況が計測できる「POTEKA」の設置も今後加速するものと考えられる。

 

気象情報が閲覧可能な「アメダス」は同社が手掛けたという経緯があると前述したが、このアメダスは全国に1300か所の観測点を設置してデータ収集を行っているものである。

 

POTEKAはこのアメダスが得られるデータをより詳細に得るために開発されたもので、アメダスが周囲20キロメートルをカバーするのに対し、POTEKAは周囲2キロメートルをカバーする。アメダスに比べて四方で10倍×10倍=100倍の設置、すなわち全国で13万か所の設置が必要だが、アメダスと比べてより詳細なデータが得られることになる。

 

例えば、竜巻やゲリラ豪雨など局地的に発生する気象現象の予測も捉えることができるようになるとのことだ。

 

POTEKAのビジネスモデルは、地方自治体向け、設置は無料で、POTEKAから得られる気象データを販売する仕組みで、今後地方自治体への採用が期待されよう。

 

気象予測は衛星・GPSで捉えたデータだけでは絶対的に不足する。地上でのより詳細な観測があって初めて予測の精度が向上するとのことで、数兆円という経済的な損失を引き起こす異常気象への対策が加速度的に行われていくものと考えている。

 

以上が足元の受注残には含まれていない状況であるため、益々の売上・利益の増大が期待できると言える。

 

日経報道によれば、親会社であるIHIは2週間~2か月先の気象を予測するサービスを年内に開始するとしているが、IHIグループ内で気象防災関連の事業の大部分を明星電気が担っており、シナジーも大いに発揮するだろう。

 

勿論水害が多い東南アジア地域にも今後拡販を行うとのことだ。

 

【宇宙事業は100兆円の市場規模】

 

同社の2つ目の柱は宇宙事業であるが、いよいよこれから宇宙開発の時代が到来し、長期的な同社の成長を大きくけん引すると言える。その市場規模は2030年代には70兆円、2040年には100兆円に達するとされる。

 

同社は、超小型人工衛星の製造、また人工衛星の部品においては特にカメラに強みがある。

 

例えばロケットの3段目・2段目を切り離すことができるか目視するために必要なカメラや、人工衛星内部の故障個所を確認するカメラなど、あらゆるカメラを手掛ける。

 

宇宙という過酷な環境下でも故障せずに作動することが強みと言われている。

 

政府などの宇宙開発の予算によって受注のブレが大きい事業で、かつ、常に顧客から要求される品質レベルが高い、また納入する製品も量産するものではなく1点だけであることが多いという。

 

こうした環境下で長い間技術要求に応えてきた実績が今後花開く時が訪れる。すなわち、宇宙開発が加速し、人工衛星の打ち上げも今後増えてくると、これまで1点だけであった製品の量産化・売り上げ増が訪れるものと考えられる。

 

イプシロンなどロケット事業を手掛けるIHIが2012年、再生ファンドやNECから明星電気の株式を譲り受けたこととも整合し、いよいよシナジーが生み出される時が訪れたといえよう。

 

【まとめ】

 

以上のように、今後3年間の地震計の更新需要を土台として、水位計をはじめとした防災対策、更には将来にわたって花開く宇宙ビジネスと全方位的な成長に注目していく。

 

〈参考資料〉

 

災害続発、弱る地方河川 予算・人手不足で対策遅れ

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52013500R11C19A1SHB000/

 

IHI、60日先の気象予測

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO51591470Q9A031C1TJ3000/

 

2020年3月期第二四半期決算短信(最終ページに受注残の記載があります)

http://www.meisei.co.jp/ir/account/lw8lpn928o5u2.pdf

 

※某所から