あきさん: 翌朝も母はいなくて、私は父の用意してくれた朝食

       を無理やり食べて、学校に行った気がする。


私 :    妹さんは?


あきさん: 妹はまだ学校に行く年齢じゃなかったから・・ でも

       「お母さんは何処?」って、ずーっと父に絡んでた


私 :    お父さんはなんて?


あきさん: 「お母さん早く帰って来ればいいねぇ」とかって他人

       ごとみたいにしてた。

       学校から帰ると、私の帰りを待ってたような母の様

       子だった。そばで妹が、よそ行きのお洒落な服を着

       てべそかいてた


私:     なんで


あきさん: ・・・・あの日、稲刈りあとの田んぼ道を歩いたのは、

       赤ん坊を背負った母と私だけだった

       妹を残して出て行く事を決めた母が、せめてもの思

       いできれいな服を着せた・・・


私 :    ・・・


あきさん: 母の実家にやっかいになることになって、暫く経った

       ある雪の夜




あきさん: この本、買うお金なくて、従姉弟の本棚から拝借して

       そのまま・・・ 

       三国志の読後感想文が、高校の国語の必須課題

       で

       「持ってない人は、借金してでも購入することを勧め

       る。それくらい価値のあるものだから」って先生がね


私 :    お金無かったって、こんなに大きなお家に住んで

       て?


あきさん:  家は大きいけどね。母は私を連れてこの家に出戻

        った。私が小学生の時、確か秋から冬にかけての

        季節だったと思う。稲刈りあとの田んぼが目に焼

        きついてる


私 :     ・・


あきさん:  母は乳飲み子の弟を背負って、私の手を引いて

        無言で、歩いてこの家に帰ってきた。前日から何

        やら様子がおかしいとは思ってたけど、母の重大

        な決意を、握られた手の強さでかみしめた。

        

私 :     ・・


あきさん:  前の晩、時々思い出したように母の不在を寂しが

        って、妹が父に甘えてた・・


                                                                                                            

 あきさん・・・


 彼女のことを本当に理解するのには、かなりの歳月を要しました。



「私はそんなに賢くもないし、器用でもない・・・ そんなに悪い人間でもないハズ・・あとからそれはきっと判ってもらえる。 少し気が利かなかったり、気が着かなかったり
するだけのこと。悪気ではなく、本当は愛すべき人物」と 自分自身を評して、そう言っていました。



 彼女の生い立ち、波乱に満ちた半生を覗かせてもらったので、忘れないうちに

書きとめようかなと思い始めているのです。



 傾斜のきつい階段を上がると、六畳二間、南側に半間幅の板張りのついた明るい部屋がありました。主を失った壁や畳は埃臭く、動くたびにむせそうでした。納屋の二階にしては圧迫感はなくむしろ開放感の方が印象的でした。



 あきさんは、部屋の隅に放置された埃だらけの本を見つけて懐かしそうでした。くすんだピンク色の、しっかりした装丁の全集の一部のようです。「三国志だ」

 

この奇妙な私を育てた、あの故郷に、10数年ぶりに帰ってみました。


 駅舎、家並み、商店街の変貌ぶりに、浦島太郎さんの気持ちを味わったも 


のです。歩けばすぐにでも昔の知己に出会えそうな思いで入ったアーケード・・・



シャッター街の見事な一点透視図法目  


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息を呑みました。


賑やかで、活気に溢れていたのに、心うな垂れ、とぼとぼ駅に向かう途上で見つけ


た、路面に埋め込まれたこのプレート



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面白おかしくよく使った覚えのある、訛り言葉・・


善くも悪しくも、故郷はここなんだ( ̄* ̄ )