**唐獅子牡丹41**



 荼毘に付されたクニアキの骨箱を抱いた多恵姉ちゃんの向かいで、


闇が流れる車窓を眺めながら、木村さんの話を思い出していた。



―――私はね、クニさんが大好きだった。この気持ちはクニさん分かっ


てた筈だけど、私には指一本触れず、いつも、「苦労をかけた」と娘さ


んや亡くなった奥さんの話をポツ・ポツとしていたのよ


 あのホテルは、従業員が全国のいろいろなところから集まって来て


いて、訳ありの人もけっこう多くてね、いざこざも少なくなかった。そん


な時頼りになるのがクニさんで・・・・・

 

 独特のユーモアと不思議な雰囲気で、もめ事を収めてしまうから、み


んなから頼られていたの・・


 ホントに私、大好きだった。そばにいるだけでホッと寛げた。いつも


ひまさえあれば、クニさんの姿を探してた気がする。あんな出来た人、


現実の人じゃないんじゃないかって思う事もあった。自分のことは二の


次三の次で、他人のために尽くした人だった。いい人だった。大好き


だった。でも・・


 手の届かない人だったね。


「ワシは、里美に育てられた気がする。」ってクニさん言ったことがあ


る。―― 「里美のとこに帰らにゃあ」・・・・って


 いつも、牡丹の根元を探している唐獅子のような人だった。―――






 クニアキの知られざる一面を聞かされ、私は複雑な思いでいた。





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     ちょっと気分転換 



 はじまりに 朝日にむかって


 闊歩する


 日常が ココチよく


 過ぎて行く


 語らいを楽しみ


 愛しい人をダウンロード



 おしまいに 夕陽のなかへ


 迷い込む

                             

 日常が チカラつき


 幕を閉じ


 喧騒へ いざなう


 愛しい人を アップロード   



by  akken



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  **唐獅子牡丹・40**



 翌日、クニアキの午後からの手術に間に合うように、昼ごろ病院に着いた。


同型の私の血液が、私の左腕から円筒形の容器へと勢いよく迸る・・


「こんな可愛いお嬢さんのこんなきれいな血をもらえて、中村さん、幸せ者です


ね」


 ナースが私に微笑む、私は愛想笑いを返す。


「しばらく横になっていて下さいな」


と言ってナースは部屋を出て行った。


 多恵姉ちゃんと、昨日のおばさん=木村さんは少しの間無言のままで、ぼん


りしていたが、やがて手術室の方へ行くと言って出て行った。二人の後ろ姿


見送って、適度な疲労感からか少しまどろんだ後、深く眠りこんでしまってい


た・・・



 


手術室へ入る時のクニアキの様子を聞いた私は、心境に微妙な成長があった


と自覚する・・・




ひと月後、クニアキは死んだ・・



「クニさんは、牡丹が好きだった・・」


そんなこと聞いたことない、このおばさんにだけ、自分の好きな花は牡丹だと言


ったのか、クニアキに牡丹は似合わない・・・・





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**唐獅子牡丹・39**



 クニアキは小柄な体をベッドの上に起こして座っていた。皮膚を貼ったしゃれ


こうべのような顔に、歯並びの整った口元が笑っている。多恵姉ちゃんと私を


見ると、目を細めて


「よく来たね」


多恵姉ちゃんは


「お父さん」


と言って涙ぐむ。


「あきちゃんも遠くからよく来てくれたね」


「うん・・・・・」


私はクニアキのあまりに哀れな佇まいに言葉を失った。


・・これは単なる過労ではないだろう。余命いくばくもない人のようだ。・・





 病院を出て二人で、クニアキの寮へと向かって歩く道すがら、後ろからふいに


呼び止められた。地味な身なりではあるが、端正な顔立ちから気品の漂った中


年の女性だった。


「あの・・クニさんの・・」


「あ、いつぞやはお世話になりまして・・」


多恵姉ちゃんとは顔見知りのようだ。







  **唐獅子牡丹・38**


 クニアキが過労で入院したとの知らせが届いたのは、高校2年の夏休み後半に入


った暑い日だった。


 その頃クニアキは、より給金の高い大きな観光ホテルに住み込みで雇用されてお


り、借金もほぼ返し終えているようだった。好景気の時代で、社員の福利厚生も手


厚く、寮の設備など充実していたと、多恵姉ちゃんが言っていた。前職の木工細工


の腕を買われての転職だったと。


 行きの飛行機の中で、


「私の血液型は、お母さんと同じO型なのよね。あきちゃんはA型でしょ?」


と多恵姉ちゃんが言う。


「うん、そうだけど、それがなにか?」


「お父さんA型なの」


「ふーん・・・」


会話はそこで途切れてしまった。


クニアキの血液型に興味はなかった。それより、初めて乗ったこの飛行機の運賃は


誰が支払ったかということの方が私には心配だった。


 それともう一つ・・・クニアキ入院の知らせと同時期に届いた、東京の芸能プロダク


ションからの封書、「金井 慶」と個人名が記されていた。きっと、あのロザリオ小母


さんの弟さんだろう。





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       ちょっと気分転換・



          森の



1 僕は 日々に疲れて


  森の中へ 逃げ込む


  美しい魔女の住む森


  僕に 手をさしのべる


   優しく ほほえんで


  深く眠る


・・・僕は戻れない、君へは戻れない



2 君は 日々を生きて


  森の中に 僕を見る


  紅もささずに痩せた頬


  虚ろな僕に手を振る


  悲しみに 沈んで


  背を向ける


・・・僕は戻れない、君へは戻れない



 君の悲痛が涙に覆われる

 抱いた子猫に降り注ぐ

 

・・・僕は戻れない、君へは戻れない


                                 詩 AKKEN



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  **唐獅子牡丹・27**


 中学1年の時、隣のクラスの学級委員さんに一目惚れした私は、毎日の学校生活


が楽しくて仕方なかった。ちょっと目があっただけで、見つめられたと思い込み、廊


下ですれ違えば偶然ではなく運命だと妄想し、いつか告白される日を脚色とともに心


待ちにした・・・恋に恋をしていた。初恋なんだ。


 帰宅すると、そんな恋心はいっぺんに憂鬱へと変わる。異性への慕情は、私


の中で、罪悪として変換され、その形をいびつに変化させながら覆い尽くす。


 母は不倫行為をやめていなかった。相手はこないだの人物かどうかはわからな


い。土曜日の夜毎の逢瀬は相変わらず続いていた。心の中で母を蔑み、哀れに思


い嫌悪しても、育ててもらっているという負い目は、どうしようもない。面と向かって非


難などできようはずもない。自分の本心をそれと悟られないよう、精いっぱい平静を


演じることが、私に課された試練のようなものだった。


 


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  **唐獅子牡丹・26**


 冬休みに届いた、多恵姉ちゃんからの手紙には、真面目に働いたお金で、借金を


減らしているというクニアキの様子が綴られていた。


・・・・ 東大阪の町工場に働き口を見つけ、うんと年の若い青年の下で、仕事を習い


地味な暮らしをし、かつての、一攫千金を夢見てた自分を恥じているようです。


年始に遊びにおいでと船賃を送ってきました。あきちゃんの分もです。一緒に行きま


すか?・・・・・


 すぐに返事を書いた。


・・・・・・・・私は、行きたくないです。借金を全て返し終えて、天国から見ている、多恵


姉ちゃんのお母さんに顔を向けられるようになったら、その時は考えてもいいですけ


ど・・・・・・


 私は、まだクニアキを許したくなかった。私のことなど可愛いはずはないのだ・・・


意地があった。ささやかな抵抗をしたかった。


 生い立ちの真相を知った時、どんなに惨めで切なかったか、私にしか分からない。


誰にも言えない悲しみは、クニアキへの妙な感情となって胸の中で渦巻いている。


 特別美味しい物を食べさせて欲しいんじゃない、特別素敵な服を着させてと思って


いるんじゃない、普通に親子の暮らしをしたかった。たったそれだけのことがそんな


に難しかったのか・・・・情けない




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  **唐獅子牡丹・25*



 その年の夏休みに多恵姉ちゃんの処に行った時、クニアキ伯父は(私は父とは認


めたくなかった)家を出て行っていた。


 中学生になったのだから、もう理解できるだろうと、多恵姉ちゃんはクニアキのこと    

 

を隠さず話してくれた。


 「借金を返すために、大阪に行ったの。お母さんの形見の着物全部売り払っ


て旅費を作って・・・テレビと冷蔵庫もやっと貯めたお金でこないだ買ったばかりなの


に・・」


「伯父ちゃんひどい」


「人目を忍んで、逃げるように出て行った・・多恵、苦労かけてすまんって、泣きなが


ら」


「で、あの馬は多恵ねえちゃんが面倒見なくちゃいけないの?」


「あおは、死んだ・・・」


「死んだ・・・?・・」


そうか死んだのか、あの馬の存在が一家の運命を変えたかもしれない。いやいやそ


れは違う、大黒柱たる者が放蕩を続けていたら、辿り着くとこは平坦な居心地


のいい場所で決してあるはずがない・・


「伯父ちゃん、いま天罰受けてるんだね、家族みんなに、苦労かけて・・・」


「あきちゃんは、そう思うよね」


「うん、今まで好き勝手してきたんだから、今度こそ、真面目に働かなくちゃ・・」


「あきちゃん、私はお父さんのことそれほど憎くは思ってないのよね。」


「なんで?」


「なんでだろ・・思えばお父さんには随分とみじめな気分にさせられた筈なんだけど


ね・・そういう人なのよね不思議と・・ただ寂しいだけ・・一人ぼっちになっちゃった」


そう言う頬に一筋涙が伝う。しっかり者の多恵姉ちゃんが小さく見える。私は思わず


抱きしめ、一緒に泣いた。静かな夏の夜だった。




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** 唐獅子牡丹・24**



中学入学前の春休みに私は、いつももやもやとしていた自分の出生をハッキリと知


ることが出来た。


 生みの母は、産後の肥立ちが悪く、母乳も出ず赤ん坊を育てるのに苦労し、加え


て夫の相変わらずの放蕩に翻弄され、2歳になったばかりの我が子の傍らで眠るよ


うに息を引き取っていたという。


 葬儀の日、遺影に貼りつくようにして母を恋しがっている姿は参列者の涙を誘い、


記憶に刻み込まれた、と、あのロザリオの小母さんは語った。


 父親の邦朗(クニアキ)に幼児の養育能力が欠けていると判断した谷家は、当時、


嫁して五年経っても子供の出来ていなかった古田万希に、半ば強制的に朗(あき)


を委ねたのだ。生母に生き写しの万希に自ら飛びつくようにその胸にすがった幼子


を見て、ロザリオ小母さんは、自分が引き取りたいと申し出るのを断念したのだと。


 




 新緑の光が差し込む中学の窓際、安物万年筆の「朗」という刻印をみつめながら


「あーあ、私はあの「あお」に負けちゃったんだ。お父さん、私を手放して、「あお」


を引き取ったんだもんね・・・」


「谷あきは、クニアキの子だったか、ん?タニアキ、クニアキ・・私が勝ってる、点が


 一個多いもんねーだ」



文字を書いた紙をクシャクシャにして、ゴミ箱に放り投げた。


 夏休みに、また多恵ねえちゃんの処に行こう。学校は卒業して、今春から晴れて


社員として頑張っている。




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    ちょっと気分転換・



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 九州新幹線博多南駅前で見つけた

 落ち着いた雰囲気のカフェ


   LadyBug てんとうむし
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  **唐獅子牡丹・23**


「売ればいいじゃないですか」とは、既成事実を語っている人に対して言うには不適


当だが・・・


「売れればね、それが一番良かったんだけど、売れるような馬ならそのヤクザがクニ


さんに渡す訳がないって!・・・・自分で持て余していたからクニさんに押し付けたん


だから。サラブレッドじゃなし、痩せた農耕馬を誰が引き受けるっていうの?耕運機


やトラクターに切り替わってる頃に」


「ふーん、そうですね」


「でね、やって来た馬を見て、ショックで里美さん産気づいて、月満たないうちにお産


が始まってしまったの」


「え・・」


「いなないている馬の横で、必死に陣痛に耐えてる里美さんをみて、私はあわてて


産婆さんを呼びに行こうとしたけど、間に合わなかった。御湯を沸かす暇もなくて・・


産声聞いた時はあわてたよ。」


「それでどうしたの?」


「里美さんが、裁ちばさみを火で焼いてへその緒を切ってって言うから、言われる通


りにして、赤ちゃんを懐に入れて温めながら御湯を沸かしたの・・・」


「へえ、そんな産まれ方だったんだ私・・・」


「月足らずで生まれたけど元気な子で、肌が透き通るように白くてきれいな赤ちゃん


だったよ・・」


「蚤虱、馬の尿(しと)する枕元・・・ってか、ははは」


「奥の細道だね。良く知ってるね。利発な子だ。


「いいえそんなことないです」


「イエス・キリストも馬小屋で生まれたらしい・・」


「私の場合は、人間の部屋に馬がいたっていうだけだけど・・」






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       ちょっと気分転換・・






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どれがなんていう車かわかりますか?