凱旋門②
アンリ役の彩風咲奈さん。アンリはいい役だと思います。
アンティーブの場面ではそれまでのパリの街から
太陽にあふれた明るさの象徴のようです。
その華は十分だったと思います。
ただラストの我を失いラヴィックにすがり、撃つつもりはなかったと
繰り返す場面。取り繕った言い訳に聞こえてはいけない。
ラヴィック役の轟悠さん。
18年前もものすごい完成度でしたが、美しさの力技も
あったのかと。それが東京、博多座に移るにつれ
厚みも深みも増していきました。博多座はジョアンとともに
完成されていたように感じて言葉が出ないほど感動しました。
今回はさらにそこから人間味や弱さ、ロマンチストな面を
自在に表現するような演技力。素晴らしかったです。
花を渡し、はにかむラヴィック
嫉妬するラヴィック 葛藤するラヴィック
どの場面も芝居の中の役ではなく、そこに生きている一人の男を
見届けているような気持ちになりました。
だからでしょうか。
ブローニュの森の場面。
美しい音楽が流れ始めた途端に
これから起こる悲劇をみつめながら
「だめだラヴィック、いや、やるんだラヴィック」
と、心でつぶやいてしまいます。
こうするしかない彼の人生に涙があふれるのです。
他の幸せはなかったのかと。
この場面の脚本・演出は素晴らしいと思います。
轟さん、すごい役者です。