宮崎あおい最新作『ソラニン』。ネタバレなしよ | アイス ラヴさん。の甘く危険な映画日記。


週刊ヤングサンデーで連載されていた浅井いにおのマンガが、遂に実写映画化されました。

宮崎あおいの最新アイドル映画として観た方が、楽しめますね。


井上芽衣子(あおい)と種田成男は、多摩川に近いオンボロ・アパートで同棲中。同じ大学で出逢った2人は、卒業から2年経って、OL&ミュージシャン志望のフリーターとして働きながら、楽しく暮らしていたのです。

「やりたい事をやる」

バイトを辞めてレコーディングに専念した成男と、OLを辞めた芽衣子。互いに支え合って完成したデモCD-Rを配るもデビュー出来ず…。些細な事でケンカした2人には別れの時が…という話です。


それにしても宮崎さん、可愛いなあ~。『少年メリケンサック』のヒロインよりももっと子供っぽく、何やっても続かない、頭悪そうな女の子を見事に演じてました。最近は舞台挨拶でも落ち着いた奥様ムードを醸し出してたのに、今回は実年齢と同じ役柄ながら、幼さ全開でしたね。寝顔とか寝ぼけた表情とか、10代の頃を一緒でしたもん。

見どころはやはり、ラストの歌唱シーン。ギターを必至で練習して、ちゃんと音出してます。そんな初々しさから、初ステージでの緊張で声失ったりしながら、男っぽく歌いまくる展開が最高。あまりにも真っ正直なストレートな歌いっぷりなのに、心洗われました。実際にバンドの演奏を吹き替えたのはASIAN KUNG-FU GENERATION。どうりでアマチュアとは思えない演奏だと思いましたよ…。まるで宮崎さんが新ボーカリストになった感覚…。後藤正文の歌唱法をそのまま置き換えたらこうなったって感じですね。

相手役のヘナチョコメガネ男の成男役、「誰なんだろう?」と思ってたら、何と高良健吾。私の大好きな『蛇にピアス』のアマだったとは!バンド仲間には、ベーシスト役にサンボマスターの近藤洋一を起用。ダサダサの太っちょメガネ男ながら、やたらとモテる設定なのに違和感感じましたが、演技は自然体で良かったですね。そして暑苦しいドラマーが桐谷健太。そのまんまのカッコ良さでした。近藤さんの恋人役の伊藤歩、いつからこんなに美しくなったんだろう?芽衣子の母親役には美保純。そして成男の父親役が財津和夫。いつの間にかお爺ちゃんでしたね。


他愛も無い恋愛や友情エピソードが、やたらと多いこの映画。多摩川の流れのようにのんびり楽しんだ方が良さそう。これらを愛おしく楽しめるかどうかで評価が分かれそう。ゆったりと楽しめる人にはいいけど、せっかちな人は「早く話を進めなよ!」と怒り出すかも。前半は、特に何も起こらずに進行するので、ちょっと退屈。2人のどちらかが病気になって死んじゃったり…みたいな展開の方が面白いのに~と思ってたら、おい!やっとかよ(笑)

交通事故死をサラリと処理したのは良かったけど、芽衣子が歌い出すまでに時間が掛かり過ぎ。そして過去をしつこく回想し過ぎ!もっとテンポ良く縮めた方がいいんじゃない?説明的なセリフもつぶやき過ぎだし、2時間7分も費やすほどの映画じゃないと思うけど…。

しかも歯に浮くような白々しいセリフが多くて、疲れました。何事もリアルじゃないんですよ。試写室でやたらと大ウケだったのが、近藤さんが後輩の岩田さゆりの役名でもある「鮎川」を「鯖川」と間違えて読む所。ドッカンと湧いたのですが、私にはどこが面白いのかサッパリ理解不能…。鮮魚店で働いた経験があるからかも知れないけど、今どき鮎を鯖と読み間違えるなんてアリエナイでしょ?たとえ大学6年生という設定だとしてもね。たぶん鮎川誠さえも鯖川誠と呼んでたんでしょうなあ。そもそも鮎川さん自体知らないかもね。

監督は三木孝浩。ORANGE RANGE「花」やYUI「CHE.R.RY」等を手掛けた売れっ子PV監督の映画初作品。多摩川での花火のシーンなんか、上手くカメラを揺らして、スローモーションでキレイに撮影されてたので「サスガ!」と唸ったんだけど、やはり演出家としては…う~ん…初々しい部分が目立ちます。アパート室内での薄暗さとか、光と影へのこだわりは感じたけど…。

脚本クレジットで驚いたのは、高橋泉。5年以上前に「ぴあフィルムフェスティバル」を震撼させたグランプリ作品『ある朝スウプは』の監督と、まさか同一人物だったとは…。あんなゾッとするほど恐ろしく心理描写の鋭い映画を手掛けた人が、職人技で雇われ仕事をこなしたって感じかな。

ウブなラブラブ話や友情話もまあまあ味わい深いし、将来への不安や焦りとか、後半の心の再生をあまり臭く描かなかったのは、ある意味良かったかも知れません。けれど、芽衣子が成男の残したギターを手にして、歌う決意をする動機付けが弱いんだよなあ~。あれだったら『少年メリケンサック』の主人公と一緒でしょ?ただ楽しくてやってるだけじゃん。

一番の問題は原作なのか?(笑)

「いつまでも夢なんか追い掛けてるんじゃない!」。

どこで「諦め」というか、「踏ん切るのか?」を分かりやすく描いてたのが良かったのかも。

「新人グラビア・アイドルのバックバンドとしてデビューしないか?」と接触してきたレコード会社の新人開発部の男。実はこの男がかつて成男が憧れていたバンドの元メンバーだったと知ってショック。「俺には自分のプライドよりも守らなければならないものがある!」と言い放つ嫌味な男を演じたのが、ARATA。この『蛇にピアス』コンビの男子トイレでのやり取りが妙に切実で、グッと来ましたね~。

そして桐谷ドラマーは実家を継いだものの、「先が見えちゃってダレそうだけど、前へ進むしかないんだ!」という葛藤も、おバカに楽しく描かれて良かったです。

芽衣子が住んでるアパートは、多摩川に近い場所なのですが、果たして和泉多摩川なのか登戸なのか?世田谷通りのアーチ橋を渡る、帰りの進行方向が左手に小田急線なので、登戸側なんだと思うけど、実際は和泉多摩川側で遊んでばかりなのです。

そこで2人がボートに乗る訳なんですが、ここが爆笑モード。成男が別れを切り出した途端、突風が吹いて、成男のメガネと帽子が飛んで河に流されちゃうんですよ!帽子ならまだしも、メガネが風で飛んだの初めて観たぞ(笑)しかも、芽衣子が瞬時に河に飛び込んであっという間に取り戻して、結局手を繋いで帰宅…。空いた口が塞がらないどころか、笑いが止まらなくて、それでウットリさせちゃうのだからたまりません。


成男が旅立ってから、2ヶ月…。友達の前では楽しく平静を装っていた芽衣子が、実は自分を責め続けていた…という展開にも、グッと来ました。

「あの時、彼になんであんな事を言ってしまったんだろう」から「あたしが彼に出逢わなければ良かったんだ…」とまで責めちゃうのです。

あまりにも切ないんですが、ちょっと24歳のベテラン女優・宮崎さんが演じるには子供じみてるなあ…。もっとちょっと若手の20歳前後の女優さんに演じさせるべきだったのかも?…という気も。


新宿でのシーンで、公開前に全店閉鎖予定のさくらやの大きな看板が出てくるけど、このままカットされずに使用されるのだろうか?

2010年4月、全国ロードショーです。
http://www.solanin-movie.jp/