大ヒット作『ムーラン・ルージュ』から７年ぶりの新作が遂に完成。オーストラリアの鬼才、バズ・ラーマン監督の最新作は、オーストラリアの大自然を舞台にアボリジニ文化の素晴らしさを伝える、ラブ・コメありアクションありの２時間４５分の超大作なのです！
今回もヒロインにはシャネルNo.５のCMに続いて、ニコール・キッドマンを再起用。相手役のヒュー・ジャックマンとともに、オーストラリア愛が爆発した盛りだくさんの内容に仕上がってて、とても疲れました。
１９３９年のオーストラリア北部ダーウィン。ここにイギリスの貴婦人サラ（ニコール）が、牧場を経営する夫を追い掛けて入国。運転手のカウボーイ・ドローヴァー（ヒュー）とケンカしながら大陸横断して到着。しかし夫は殺害されていたのです。残されていたのは、１５００頭の牛とアボリジニ少年のナラ。当時は白人とアボリジニの交流は許されなかったのです。だけど彼女は少年と暮らすうちに親子の絆が芽生え始め、犬猿の仲だったドローヴァーとは愛が芽生え始めて、遂に決断。牧場を守るために牛を売る事を決意。大群率いて港まで大陸横断するのです。
しかし、邪魔する人達が続出。犠牲者を出しながらもなんとか遮って大成功。３人で仲良く暮らしていたのだが、真珠湾攻撃後の日本軍が攻めて来たのです！疎開や爆撃で引き裂かれた３人…果たして再会は？…というお話です。
前半はギャグ満載のラブ・コメ状態だったんですが、そこから牛の大群と共に横断する冒険活劇になって、後半はシリアスな戦争大作になって行く、見所満載の超大作なのです。なのに、重苦しさはありません。どこまでもファンタジックで美的感覚が鋭く、監督ならではの世界観に圧倒されました。この監督の映画って『ロミオ＆ジュリエット』もそうだったけど、何だかアニメっぽいんですよね。歴史大作だけど娯楽色濃くて、いろんなテーマを詰め込み過ぎてて、疲れてしまいました（笑）。無駄話も多いので、もっと縮められそうなのに…。アカデミー賞なんか最初から狙ってなかったでしょう。観客の気持ちも考えてないみたいですが（笑）。
運転中にカンガルーが射殺されて、飛び散った血がフロントガラスにベッタリ…なんて、残酷シーンもあります。ここを笑い飛ばせるかどうかで、評価が分かれそうですね。他にも鎗や矢や銃で、人間を殺し過ぎですが、残酷さを避けたのか、その瞬間はあまり描いてないんです。気が付いたら、あっ！刺さってた…みたいな（笑）。
オーストラリアの大自然はスケール感たっぷりで、見応え充分。乾期と雨期との生活の対比も良い。なのに、なぜかスタジオ・セットでの演技の撮影との合成場面が多過ぎる！車の運転も乗馬も、動いてる（乗ってる）感じが薄いんです。まるでデパートの遊技場で１００円入れて乗って遊んでるみたいな軽いノリ。頭を空っぽにして楽しみながら観て、歴史を学びましょう。
オーストラリアの原住民でもあるアボリジニの差別問題を扱ってるのに、重苦しくならないんですよね。ここがある意味凄いかも。白人でも黒人でもない彼らは、当時“クリーム”と呼ばれてたとか。インディアンやアミ族にも似ていて、人生の豆知識みたいなセリフも多いのです。このナラ役の少年が、実にイキイキと演じてるのが良いのです。彼の目から振り返ったナレーションが効果的でした。
そんな彼を息子のように可愛がるサラ役のニコールだが、子守唄代わりに当時大ヒットしていた『オズの魔法使』の主題歌「Somewhere Over The Rainbow」を歌って聴かせるシーンは必見！実の子供（養子）にも、こうやって歌ってんじゃないかな？と思わせるくらいの温かいママぶりが最高。自慢のノドを聴かせてくれます。素敵なオバさん貴婦人なんですよね～。もはや吉永小百合を超えてます。今作でも青い瞳が美しく、チャイナドレス来ても、長身によく似合います。
そんな彼女と恋が芽生えるドローヴァー役のヒューですが、カウボーイだけにワイルドな髭モジャ顔なんです。そんな彼が、パーティーに参加した時に、白いスーツ姿でヒゲを剃り落としたんですが、まるでハリウッド・スターみたいな男前で再登場！（笑）。ここでの演技にも注目。貴婦人とカウボーイという身分の違いを乗り越えるのって、昔も今も大変なんだと痛感。初めてのキスやベッド・シーンも芸術的です。
さて日本軍ですが、意外と冷静に観られます。日本じゃないみたいだから（笑）。ニッポンでもジャパンでもなく、ジパングな描き方でしたね。
ラスト５分も予想通り…しかし、ハラハラさせるじゃないですかぁ～！ここは手に汗握らずにはいられなかったですね～。でも、ハッピーエンド。
ラストは何だか感動的でしたね。
爽やかな別れに泣けて来ました。
公開直前には、ニコールとヒューが来日予定だとか。
２００９年２月２８日（土）全国ロードショーです。
http://movies.foxjapan.com/australia/