ウィル・スミス最新作『ハンコック』ネタバレ。 | アイス ラヴさん。の甘く危険な映画日記。

ウィル・スミスの最新作を観てきました。昨年末公開の『アイ・アム・レジェンド』よりも前に撮影されたそうです。

ロサンゼルスでホームレス暮らしのハンコック(ウィル男)は、事件の匂いを嗅ぎ付けると、いきなり空を飛んで現場に駆けつけ、強盗を退治する無敵のスーパー・ヒーロー!。なんたって、弾丸受けても傷さえつかず(サングラスに穴が空く程度)、自慢の怪力で車を持ち上げ空へ放り投げちゃうのです!。なので、人助けのたびに街を破壊するアンチ・ヒーローでもあったのです。

損害賠償を求められても応じないので、逮捕。指紋を採取されて刑務所に入るが大暴れ。バスケでは、どんなに遠くからシュートしても、ちゃんと決めてしまう正確さ(笑)。いっその事、空飛んで脱獄すればいいのに…という、あまりにも荒唐無稽過ぎて、空いた口が塞がらない珍品アクションでした。『少林サッカー』にも似たアリエナイ・アクションですが、こちらは感動すらありません。

この映画で首を傾げてしまうのが、このハンコックって男が、なぜ怪力を発揮出来るのか?、どのように誕生して半生を過ごして来たのか?、どうやって収入を得ているのか?が、全く説明のないまま本題に突入しちゃうのです(笑)。頭空っぽにして観るにしても、不自然さが残り過ぎて、笑い飛ばせません。

お子ちゃま映画だとしても、ついていくのが大変なほどのスピード感。だってこの映画、瞬間を省略しっぱなしなんです。空を飛ぶ時だって、気が付いたら飛んでたんです(笑)。飛び立つ瞬間が早過ぎて肉眼では見えません。それから、人質強盗犯との一触即発の攻防では、犯人が右手でリモコン持ちながら「このボタンから指を離せば、人質全員爆死しちゃうぞ!」と、全身にダイナマイト巻き付けられた人質達が泣いてる前で発言。それが、次のシーンでは…………あれ?。もう解決?。路上を歩いているハンコックの右手には、ボタンを押したまま状態の犯人の生右手首が握られていた!。つまり、もぎ取る瞬間を描いてないのです。まあ観客の目に優しい演出だこと…。

極めつけは、刑務所内でイジメに遭いそうな時の必殺技。気が付いたら、その極悪囚人のお尻に、別の囚人を頭ごと突っ込んじゃってたんです!(笑)。これ、抜けそうにないなぁ~。それより、肛門に人間の頭って入れられるのだろうか?。この浣腸の瞬間も描いておりません。も~う、空いた口、閉じられそうにありません。


後半は彼の謎が解き明かされようとしていきます。踏切事故から救った男・レイと、家族ぐるみの付き合いが始まります。U2のボノみたいな世界平和を訴える営業マンでもあるレイは、ハンコックを利用しよう!とゴキゲンで、1人息子も「我が家にハンコックがやって来た」と大喜び。しかし、シャーリーズ・セロン演じる妻のメアリーだけは、妙に不安げで軽蔑の目で見続けてるんです。なぜ?。妙にワケあり…。

それが、ある事件でハンコックとメアリーが2人だけになった時、秘密が明らかになっていくのです。つまり、2人は一つ。ハンコックが戦いで傷付いても痛くも痒くもないのに、逆に彼女の心が傷つけられていたのです。「このまま近くにいると、あなたの怪力が弱まるわよ」と言ってる隙に、ギャングが現れて、メアリーを射殺。戦うハンコックだが、もう怪力男ではなくなっていた…という展開は、少しグッと来ます。そんな事情など何も知らない夫と息子。2人の命が危ない…と思ってたら、結局2人とも助かるのかよ~!とズッコケてしまうのです(笑)。散々オーケストラ音楽でこれでもか、これでもかと手に汗握らせ煽っておきながら、全てが丸く収まって、続編を臭わすハッピー・エンドに呆れてしまいました。絶体絶命のハンコックは、月へ飛んでいったのに、どうやって帰って来たのでしょうか?。結局、ハンコックの収入源は分からないまま終了。謎の続きは続編に期待でしょうか。もうお腹いっぱいだから、いいよ(笑)。家族愛映画だとしても都合が良過ぎて、薄っぺらだなぁ~。



ニット帽をかぶって無精髭面でサングラス顔。ワイルドな魅力が爆発し過ぎ!。そんなウィル・スミスのアイドル映画だと思えば楽しめる、あっという間の90分!。「絶対に120分以上は観てたはず…」と、プチ時差ボケ起こしちゃうほどのヴォリューム感があります。ちなみにレイ役は、『JUNO』で里親音楽家を演じたジェイソン・ベイトマンです。

あと、日本語訳に疑問点が少々。冒頭でハンコックがアジア系ギャングを退治するシーンで、車に乗り込んだ時にギャングから英語で「お前はソルジャ・ボーイか?」とからかわれるのです。昨年アメリカで「Crank That(Soulja Boy)」の一発ヒットを放ったラッパーを指していると思われますが、日本では一部の音楽ファン以外に知られてないので、日本語字幕ではカットされてました。ここまでは、納得いきます。

しかし、ハンコックが「文句があるなら、マクドナルドを訴えろ!」と叫んでるのに、日本語字幕では「ハンバーガー店を訴えろ!」に変わってました。日本マクドナルドへの配慮なのでしょうか?。恐がり過ぎです。ハンコックが漂着したクジラを海へ投げ返して船にぶつかったら「グリーンピースに怒られるぞ!」。ここは、日本語字幕が「環境保護団体に…」。何で?。ちなみに日本語字幕担当は戸田奈津子です。

音楽も豪華。ジョン・リー・フッカー、ライアン・アダムスから、リュダクリス、ザ・ルーツ、ミーターズ、M.I.Aと渋好み。

8月23&24日先行公開、30日(土)、夏休み最後を飾る全国ロードショーです。
http://www.sonypictures.jp/movies/hancock/