J-WAVE HERMES L'AIR DE PARIS『インディア』上映会@銀座メゾンエルメス | アイス ラヴさん。の甘く危険な映画日記。
銀座エルメスの10階に、映画館があるのをご存知でしょうか?。

アート系作品限定で、毎週土曜日に定期的に入場無料の上映会を行っていた事を初めて知りました。電話予約で空きさえあれば、観覧出来るそうです。

J-WAVE日曜深夜オンエアの、パリに関する情報番組主催のスペシャル・イベントに行って来ました。

切れ目無く続く色とりどりの絵画を、ガラス越しにスルスルと早見しながら、エレベーターで10階に到着。外観と同じく、内装もガラスブロックがむき出しで異彩を放っていました。もう陽が暮れていたけど、昼間ならば太陽光でも充分な明るさだろう。ロビーでは過去の上映作品のチラシがファイルで閉じられていて、それを見ながらドリンク飲み放題!。シャンパン2杯、オレンジ・ジュース1杯、ペリエ1杯飲み干す。オレンジ~は見た目がトマト・ジュースのように赤いのだが、飲むと入浴剤のオレンジ香料みたいな素敵な香りがして、甘いんだけど後から酸っぱさが追いかけて来る不思議な味わいが絶品でした。

さて映画館ですが、どこかの新校舎の視聴覚室みたいな、週一ではもったいない本格派のビデオ・プロジェクター・ルームでした。座席数は数えたら42席。横6列で縦7列。ちゃんと段差があって、前の人の頭のデカさが気にならない…はず。スピーカーも左右前中後にJBLが3台づつ。サラウンド対応、なのだろうか?。

19:30スタート。いきなり自動的にカーテンが動き出して、ガラスの壁を覆い尽くしました。少し空席も目立つ。番組の性格上、おフランス好きと思われるお上品な女性達が目立つなぁ~。

ナビゲーターのVie Vieがご挨拶。今回の作品がどのようにして生まれたのか?。その背景を、監督の波乱の人生を紹介しながら紐解いてくれました。

「今回応募された方のメッセージに全て目を通したんですが、エルメスに興味がある方や、ロッセリーニ監督に興味がある方など様々な意見がありました」。

これまた観客以上に“歩くおフランス”といった感じの、知的なメガネ美女でしたね。生声でか細い声だけど、想像力を膨らます話術に、思わず聞き入ってしまいました。


続いて、エルメスジャポン株式会社ジェネラルマネージャー・藤本幸三の登場。

「私もメッセージに目を通したんですが、実は「Vie Vieさんに興味があります!」といった意見もあったんですよ」。

オシャレなオジさまでしたね~。我がエルメスジャポンが、ラジオのスポンサーとしてリスナーに何を伝えたいのか?、そしてプライベートシネマ運営を始めたのか?…を、優しく丁寧に語ってくれました。

エルメスフランスのトップが映画好きで、「ぜひ日本人にも名作を上映出来る場を提供させてあげたい!」とのご好意で、誕生したのだとか。フランス人の映画愛の素晴らしさに感謝ですね。だってタダで観られるシネマ・テークって、日本に無いんだもん。

そういえば、エルメスが銀座に出店してから、もう7年経つんだとか。私は開店初日の夕方に並んで、店内を下から上の階までグルッと見回した事を思い出しました。何も買わずに(笑)。

さて肝心の映画上映へ。イタリアの巨匠、ロベルト・ロッセリーニの1959年作品『インディア』。今から約50年前に低迷期だった監督が、13ヶ月もの間、“神秘の国・インド”に滞在して、撮りためた映像をまとめたドキュメンタリー作品なのです。そんな作品を撮ってたのを、今回初めて知りました。

ロッセリーニの映画は、『無防備都市』『戦火のかなた』『イタリア旅行』をNHK BS2で観た事はありましたが、映画館で観るのは初めてでした。

90分観終えた感想ですが、いや~良かったですね~。“イタリア人の視点から見つめた、不思議な国・インド”が色濃く出た、無気味で詩的なアート・フィルムでした。貴重な映像ばかりで、“視聴覚室”で観るのに相応しいですね(笑)。もう、見応えタップリです。

ただ、フィルムの保存状態が悪く傷だらけで退色が激しく、カラーなのに赤茶けた色合いで、しかもデジタル・ベータカム上映だったのです。上映当時とはほど遠いけど、なかなか観る機会が無いのでやはり貴重ですね。

インドは、人種も言語も多様化してて平和な国で、地球上の1/20の面積に、1/6の人口が密集している…。今はもっと凄いんだろうな…。

まず当時のムンバイの街の様子が映し出されます。

全編に渡って、哲学的なナレーション(モノローグ)によって語られて行きますが、ここでの呟きがたまらない!。

「人が溢れ過ぎていて、まるで大きな川の流れのようだ!」。

とか、

「インド人は、なぜ荷物を運ぶ時に、頭に乗っけて運ぶのだろうか?」。

ここで、細かいカットで次々出てくる、頭で運ぶ老若男女のインド人達映像集!に爆笑。重さや大きさ関係なく、何でもかんでも頭に乗せたがる人達ばかり!。最後に6人の頭だけで支えながら、大きな荷物を運んでたりする集団もいて、恐れ入りました。

そんな素朴な疑問集に、笑ってしまいました。

車の車窓から眺めた景色も最高。歴史的な城に寺院に、岩石建造物もあったりして、スケールがデカ過ぎます。



そして、象に密着。

「インドでは象は、ブルドーザーなのである」。

なんたって、森林伐採でも次々と気をなぎ倒して、長い鼻とキバで一本一本掴んで、トラックの荷台に運ぶんです。かなり調教されてます。だけど…。

「象が仕事出来るのは、たった3時間。朝7時から10時までしか働けない。象に休みはあっても、象使いに休みは無いのだ!」。

仕事終わりの象は、そのまま川にドボン。横になって水に浸かりながら、象使いに体をゴシゴシ洗ってもらうんです。鼻で息して、気持ち良さそう。カメラの前で緊張してません。象の求愛活動にも接近。メスの方が積極的で、好きなオスに鼻でチョッカイ出すんです!。

ここで、象使いと村の娘との恋から結婚への話が描かれてるのだが、この映画の人間ドラマは自然なドキュメンタリーではなく、明らかにヤラセなんです。つまり、実際に現地で働いてる人か、プロの役者に協力してもらって、台本通りに演じてるのが見え見えなんです。あの時代のドキュメンタリーには良くある手法ですが(境界線が曖昧なものもありますけど)。でも、そのドラマが良く出来てるんです。日本のバラエティー番組の再現ドラマとは雲泥の差で、しっかり演じられて撮影されてました。

巨大なダム建設の影で、立ち退かされなくてはならない若い家族の物語も秀逸。この建設現場も大作映画並みのスケール感。だって、現場がすべて手作業なんです!。削った土砂を籠に入れて頭で担ぎながら、何百人もの女性達が大行列で歩いて運んでいたのです。当時の日本でも考えられない、原始的なやり方に唖然。

犠牲者も続出。175人の犠牲者名が彫られた石碑も登場。火葬の儀式も行われる。だけど…。

「もしここでダム建設を中止すると、水害で更に沢山の犠牲者が出るのは間違いない。ならば、多少の犠牲もやむ終えないのだ…」。

う~ん。深いなぁ~。北朝鮮や諫早湾の問題を思い出さずには入られません。キレイごとだけでは済まされないのは、50年経っても変わらないようですね。

巨大な人造湖や発電所が無気味に映し出されています。

「発電所は、神秘ではない。これは知識だ!」。

あまりにも深過ぎて、理解出来ないのでパス(笑)。

インド人の教えについての、監督からの回答(ボヤキ)にも注目!。

確かに人造湖って、不思議だよなぁ。こないだの『ポニョ』じゃないけど、水没の美しさに見とれてしまいます。今ではどこも人造モノだらけなのに…。

そんな人造湖に身を清める男を、定点カメラで見つめ続けた長回しショットがあまりにも美し過ぎるのです。

「ガンジス川は、全てを浄化する」。

全て…の中に、いろんな意味が込められてるはず。でも、汚そう…。長澤まさみも泳いだよなぁ(笑)。

続いて、虎と人間。野生の虎がウヨウヨしてるインドで、遂に交尾シーンの隠し撮りに成功!(笑)。当時は衝撃的だったんだろうけど、それほど驚きません。しかも、虎退治の老人とのシーンでも、お互いの映像を別撮りして繋げてるのがミエミエ!。一緒に映ってるカットが一つもないんです。

「最近では自動車の普及で、騒音問題が動物達を苦しめる…」。

巨大な蛇、ヤマアラシ、木から木へ跳びまくる猿、トンビの大群…。沢山の動物達の映像が登場しますが、騒音に悩まされてる時の映像ではなく、1年以上かけて撮りためた動物映像を、「騒音で悩んでる事にしちゃえ!」って、作り手側が勝手に編集しちゃった気がしてなりません…。もう、今日のテレビ番組作りへの影響力も大きい気がします。鳴き声だって、ほとんど効果音でしょうから…。

この映画、音楽が最高に素晴らしいんです。全曲、無気味で恐怖心を煽る現代音楽ばかりなんです!。鐘の音、太鼓、そしてシタールの音がノンストップで鳴り止まない!。まさに非日常体験。銀座のオシャレな環境で、凄いモノ観て聴いてしまいました。



最後は飼いならされた猿の視点から見た、インドの現実を描いた物語。これは凄い!。インドの荒れ果てた大地で、飼い主の老人が熱射病で倒れるのです。見事なヤラセです(笑)。ホントなら、「撮ってないで助けろよ!」って感じですが。そこで、ペットの猿が必死に献身的に介抱するんです。胸をさすって一緒に添い寝して、遂には髪の毛食べたりして(笑)、飢えを凌ぎます。

鎖を外した猿はそこから逃げて、人通りの激しい大都会の市場へ行きます。助けを求めてるのでしょうか?。そこで芸をして小銭を稼いで、食料を盗んで食べてる内に、彷徨うのです。

そして宛の無い旅を続けるのだが、途中で野生の猿に出くわすんです。だけど、人間に調教されて飼いならされた猿は、もう“猿扱い”されなくて、拒絶されるんです。ショックを受ける猿…。「もう俺は、猿でもなければ人間でもない。一体なんなんだ?」と葛藤しながら終了…という壮絶な内容にブっ飛びました。

まるで、50年後を予見したかのような、現代にも通じる世界観に圧倒。コリアン・ジャパニーズの苦悩よりも奥が深い気がしました。だって、このような孤独な猿が、現代の日本に増えてるような気がしてならないのです…。

もちろん猿は一言も発してないのですが、無言で観客に語りかけてくるんですよね。猿にしっかり演技させて、心の内面まで描いていたのはお見事でした。さすが巨匠。猿の気持ちが分かってたんでしょう、きっと。この猿、名優ですね。

それにしても登場する動物達と人間達、ほとんど亡くなられたんではないでしょうか?。

7月12日~9月27日までの毎週土曜日、完全予約制(3週間前から予約開始)で入場無料。11:00/14:00/17:00の3回上映。

電話予約のみだそうです。
03-3569-3300(受付時間 平日9:30~18:00 土日祝11:00~19:00)

〒104-0061東京都中央区銀座5-4-1 メゾンエルメス10階 ル・ステュディオ。

http://www.j-wave.co.jp/original/lairdeparis/