「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)5月26日(金曜日)参
      通算第5307号   
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 中国当局の神経を逆なでする郭文貴、高官の腐敗暴露続ける
  米国メディアに突出する暴露男は、共産党高層部を震撼させ始めた

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 (承前)江沢民派の腐敗と豪遊と海外不正蓄財を次々と暴き、米国のメディアに神出鬼没の郭文貴だが、前号でも書いたようにトニー・ブレア首相との昵懇な関係から、世界の投資家との間にコネクションを築き上げ、スイスの銀行を手玉にとった「蛮勇」ぶりも徐々に表面化した。
とくにブレア夫人の著作(2009年出版。『私自身を語る』)の原書を500冊、中国語訳本を5000冊も買い上げて、その政治ロビィスト的な、金銭の配り方も、中国人の伝統的な遣り方である。

 「高官らの淫行現場のヴィデオを持っている」と発言したかと思うと、王岐山の豪邸を暴き、ヴォイス・オブ・アメリカ(VOA)などに突如出演し、また中国語メディアやユーチューブなど西側のメディアを駆使して、中国共産党の腐敗を暴くのだから、中国にとっては「除去」すべき対象でもある。

 郭文貴は中国の庶民にとっては人気者となっており、VOAの番組などは、すぐさま「微博」や「WECHAT」に転載されたが、削除されている。

 ヴォイス・オブ・アメリカの番組(4月19日)では三時間にわたって、共産党幹部等の腐敗を暴き続け、北京の神経を逆なでした。同番組は生中継だったため、放送は一時間で終わったが、中国共産党幹部等を震え上がらせた。

 翌日から中国は公式メディアばかりかインターネットなどを通じて「法螺吹き、嘘つき」と郭文貴を避難する宣伝合戦に乗り出した。

すでに中国はインターポールを通じて、郭を指名手配していると発言しているが、にもかかわらず郭文貴が米国内のどこかに隠れ住んでいると推定され、米国FBIの保護のもとにあるのでは、とする疑心暗鬼も渦巻いている。

 ただし、郭文貴の暴露した高官等の腐敗など、すでに多くのチャイナウォッチャーにとっては既知の事実でしかなく、「博訊新聞網」などは、「郭の最終的なターゲットは習近平ではないか」としている(同紙、2017年5月23日)。

 

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