韓国新大統領文在寅(ムン・ジェイン)がかつて盧武鉉の片腕であり、親北の南北統一を狙う者であることはわかっていますが、その秘書が物凄い親北信奉者だった!

 

 

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成29年(2017)5月16日(火曜日)版 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

任鐘晢(文在寅の秘書室長)は確信的な北の「主体思想」信奉者
  89年、林秀卿(女子大生)の平壌入りを画策し、投獄歴あり、左翼闘士

**************************************

 韓国大統領の秘書室長となった任鐘晢は左翼活動家。北朝鮮の主体思想の信奉者。つまり筋金入りの左翼闘士であるばかりか、北朝鮮主導のもとで、統一を推進する集団の指導者である。
 アメリカが嘗て入国を禁止し、ヴィザを与えなかった危険人物が韓国政権中枢を担うことになった。

 任は1989年に平壌で開催された「平壌世界青年学生祝典」に韓国から参加した女子大生(当時)の林秀卿を影で支え、政治ショーを演出した。林女子が金日成と面会した、ソフトな印象を演出するという仕掛け人である。

 この反国家的な政治行為は北朝鮮の政治宣伝に加担する利敵行為と見なされ林は帰国後すぐに拘束、起訴された。当時は盧泰愚政権だったから、まだまともな判断が出来た。
しかし任鐘晢はしばらく逃亡清潔を送った。

「ヒロイン」扱いされた林秀卿は3年4ヶ月の実刑。その後、米国の大学院へ留学し、結婚し、そして国会議員(一期)に当選。北朝鮮へ行くと、彼女をヒロイン扱いした絵画、彫刻が展示されている。

 任は文在寅とともに、金大中、盧武鉉らの「太陽政策」を実践し、政治活動家として活躍を続け、米国に敵対した。この考え方が文在寅新政権の基本概念である。
 大統領就任後、対米政策を修正する発言をしているが、文在寅が任を秘書室長に起用したことからも、表面的な対米歩み寄りは偽装とみたほうが良いだろう。

 ひとつには韓国に於ける反日教育の浸透が、抗日ゲリラを闘ったという神話のある金日成を「民族の英雄」とみる歴史認識の転換があり、自主独立を自給自足の北朝鮮が、韓国の見習うべき目的を、現実を倒錯させる認識が韓国の若い世代に拡がってしまったことである。

 自由や法治、人権を否定する北朝鮮の考え方を咀嚼したうえでの思想ではない。韓国の 現在の社会状況、イデオロギー的分裂状態は、さらに過激な政治行動に流れやすい環境となっている。

 ところが戦後のアメリカの影響力も韓国社会には一方で強く浸透しており、自由の概念が異なる。北朝鮮も中国もまったく自由のない全体主義国家であり、韓国は曲がりなりにも、「自由」なるものが存在する。
 一例が、法を犯し、国是を踏みにじって敵対国家の政治宣伝に加担した林秀卿への判決が僅か3年、しかも出獄後は結婚もできたし、海外留学も許可された。「こんなこと、北朝鮮では考えられない」と脱北者は言う。

 脱北して韓国にいる人々は文在寅政権の誕生に不安を募らせ、できれば韓国から脱出したいと願う者が3000人以上いるという。


 ▼なぜ韓国は反共の砦から親北に様変わりしたのか?

 だが、緊張緩和以後、とくに1987年にマルクス主義と共産主義を教えることも韓国で許可されて以来、左翼かぶれで海外留学帰りの大学教授やジャーナリストが幅を利かせ、一部の反共保守主義は反動として顧みられなくなり、価値観の大変動が起こって、アメリカへの信頼が希釈化されていた。

 「主体思想派が韓国の左派運動の中核になるのがこの頃だ。彼らは韓国の現代史を徹底的に否定する『反韓史観』に心酔している」(西岡力、産経『正論』5月12日)。

 「これは恰も1930年代の大不況に際してアメリカに共産主義への信仰が蔓延したような熱狂と同様な新しい考え方への魅力に取り憑かれ、異物の思想が社会に渦巻いたことに状況は似ていた」(ブラッドレイ・マーチン『アジアタイムズ』5月14日号への寄港)
 
 こうした奇妙な史観、思想の蔓延は韓国に於けるリベラリズムの特異性にあると指摘するのは倉田秀也(防衛大学教授)である。
 「韓国の進歩主義は、市民的価値を民族的価値の関係性から位置づける。したがって、人権などの市民的価値と民族的価値が拮抗したとき、進歩主義は民族的価値を優先する」(中略)これは「日本政治の文脈でいう『右派』に近い。」(産経『正論』5月15日)。

 このムードを知悉している北朝鮮は『話し合いで統一すべきだ』と主張し、韓国の無知な学生等は、北朝鮮の指導者の言葉をうっかりと信じる。その典型が林秀卿だったわけだ。その林を背後で煽り、演出した人物が韓国新政権の黒子となった。
 この国の前途から明るさが消えた。

 

宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/