あかね空 山本一力
文春文庫 \629 ISBN978-4-16-767002-3
直木賞受賞作。
損料屋喜八郎始末控え と同様に目の前に江戸の長屋光景が広がるような、
空気感も伝えるような背景描写が実に見事。
特段時代がかったセリフ回しをさせているわけではないのに、
宝暦年間の人々はこうだったんだろうなと思わせる説得力がある。
時代劇をドラマや映画で見ると、どんなにお金がかかっていても
「セット臭さ」「嘘くささ」「作り物」といった印象がぬぐえないが、
この小説には自然さがある。
その自然さが時代考証的に正しいのかどうかは
浅学ゆえに分からないが、そう思わせるような文章力があることだけは確か。
読むのが楽しい小説で、この雰囲気を味わうだけで価値がある。
話そのものは良質の家族モノ+自営モノ+多少の謀略で
重厚で人々の誠実さが時にまぶしく、胸を苦しくさせる。
でもまあ、ありがちと言えばありがちかな。
損料屋くらいに一ひねりずつ入った短編の方が私には好みだった。
☆☆