国立新美術館開館5周年
大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年
展覧会ホームページ : http://www.ntv.co.jp/hermitage2012/ より↓
展覧会概要
エルミタージュ美術館はロシアのサンクトペテルブルクに位置し、ロマノフ王朝の歴代皇帝の宮殿からなる建物と、300万点を超える所蔵作品とが見事な調和を織りなす、世界有数の美術館です。本展覧会では同館の優れた所蔵品の中から、16世紀から20世紀初頭における西欧美術の「顔」ともいうべき名作を、その世紀を象徴するキーワードを軸に紹介します。
16世紀=人間の世紀、17世紀=黄金の世紀、18世紀=革命の世紀、19世紀=進化する世紀、そして20世紀=アヴァンギャルドの世紀。各世紀を彩るのは、ティツィアーノ、ルーベンス、レンブラント、ブーシェ、レノルズ、モネ、ルノワール、セザンヌ、マティス、ピカソら83作家の作品、全89点です。まさに400年にわたる西欧絵画の歴史をたどる豪華ラインナップです。特に注目されるのは、マティスの最高傑作の一つである《赤い部屋(赤のハーモニー)》(1908年)。東京では実に約30年ぶりの展示となります。
- 会期
- 2012年4月25日(水)~7月16日(月・祝)
毎週火曜日休館(ただし5月1日は開館) - 開館時間
- 10:00から18:00まで 金曜日は20:00まで。
入場は閉館の30分前まで。 - 会場
- 国立新美術館 企画展示室2E(東京・六本木)
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
金曜日の夜出かけたが、近年になく空いていた。といってもガイドフォンマークの絵の前は人だかりがあったし、遠巻きにみんなで見ているのにガンガン入ってきて絵の真ん前に来る人もいたりして、わりと混雑しているときと変わらないと言えは変わらない環境ではあった。
が、19:30を過ぎると入場閉め切りとなるので、入り口あたりの展示はガラガラでとても快適。
バロックやロココも含め時代に沿ってかなり良質な選びぬかれた作品が並んでいて、「ただ日本に持ってきて並べた」タイプの展覧会とはグレードが違っていた。(と言っても、その選び方には思うところがなくも無かったが、その辺りの偏見は最後に書いた)
ヨーロッパの主要な美術館で興味のあるところはたいがい現地に出かけているのだが、ロシアはどうも行く気になれなくて、エルミタージュの作品は日本にやって来た時にせっせと見に行っている。
カイシャノヒトが去年エルミタージュ美術館に行ったら、直射日光や外気に無防備にさらされている名作を見てクラクラしたと言っていたのが信じられなかったのだが、絵のコンディションが良くないものが結構あったりして、納得した。
先日見に行ったセザンヌ展にもエルミタージュ所蔵の作品が来ていたが、びっくりするくらいひどい状態のものもあった。
とは言え、コンパクトに西洋絵画の流れがまとめてあり私の好きな印象派前後あたりの作品も、かなりいいものが選んであったようで、量的には上品ながらもいい素材を贅沢に使った手の込んだ懐石料理をいただいた後のような満足感が得られた展示だった。
だって、時々お肉バーンとか煮込みとか揚げものをど~んと出して「お腹いっぱいでしょ?」という感じの展示もあるんだもの。。。
インパクトのある絵も結構あったのだが、個人的に一番心が揺さぶられたのはモネだった。
ご承知の通り、モネは同じモチーフを何作も書いているがこのウォータールー橋も42点描いている。
そのうち1点は、プライベートコレクションで某貴賓室に1年くらい飾ってあったので度々間近でじっくり鑑賞する機会もあったのだが、こんなにも心が震えるものではなかった。
なので、今まで軽く10点以上は実物を見ているのだが、今回何故かこの絵には久々に心を捕らえられた。
見ているとどんどん吸い込まれるようになっていき、絵の前を離れられなくなる。
意識はあるのだが、この絵の中に自分が埋没しているような浮遊感がある不思議な状態。
ゴッホやモネの絵は時々こんな感情を呼び起こしてくれるのだが、今回この絵を見ているときにデジャヴだと思った。
まだ20代だった頃、ずっと憧れていたパリのオランジェリー美術館を初めて訪れて、地下の丸い部屋の壁一面のモネの睡蓮を観ていたときみたいな感覚だった。
あの後何度か訪れ、その都度あの浮遊感を味わったのだが今回この絵を前にして動けなくなった時思い出したのは初めて見たオランジェリーの睡蓮を観た時の感覚だった。
その瞬間、モネが描いたその絵をこんなに間近にゆったりと観ることができ、こんな感覚になれる状態を心から嬉しいと思った。あまりにもシアワセな気持ちになって泣きたくなった。
こんな感じのモネの絵は、ありがたいことに東京にいるとコンスタントに目にできているのだが、どうして今回こんなにも心を捕らえたのか謎。私の精神状態なのか、この絵自体に特に力があったのか。。。
全く期待していなかったのだが、この絵を前にこんな気持ちになれただけでも大収穫だった。
他に、絵そのもので何故か心惹かれたのが、ドラクロワの「馬に鞍を置くアラブ人」。
高校生の頃から恐らく100回近く通っているひろしま美術館の常設作品の一つ「墓地のアラブ人」と同じような空気感だったから懐かしかったのかもしれない。
マティスの大作「赤い部屋」も本物を見ることができたし、セザンヌの頻出(笑)「カーテンのある静物」やレンブラントのすごく力のある他の絵とは明らかにオーラの違う「老婦人の肖像」とか見処のある作品が目白押しだった。
が、妙に気になったのがヴァン・ダイクの自画像。かなりの美青年なのだ。身につけている黒の恐らくシルクタフタのブラウスなどもすごくおしゃれでナルシストな感じがムンムンの自画像。(笑)
解説にも「自身の理想を具現化」みたいな意味のことが書いてあった。いわゆる「盛っている」状態。(笑)
が、その隣に展示してあったお金持ちそうな少女姉妹の肖像画の上品で華やかで素晴らしい色使いやそのタッチなどを見ると、こんな作品を描く人なのだからダイクがあんな感じでも納得かな~と思った。
こんなことを思う自画像って珍しい。(笑)
他にも、結構グロいシーンを描いた作品で見ていて嫌悪感を抑えきれなかったものや、どう考えてもエロティックな目線で描いて、当時は特に見る方もそういう気持ちで見ていたに違いないと思う作品も多かったりして、今回の展示作品を選んだキュレーターには絶対エロおやじがいたに違いない・・・などと偏見に満ちた間違ったことを思ったお下品nanakoの感想でした。