それから1ヶ月。
大―きな声のそのおばちゃんは死んだ。
前日仕事場に父から電話があり
「おばちゃんがどうしても頭やってくれってきかない」といわれ、
仕方なく道具をもって病院に行った。
確かに図々しいおばちゃんだが、無理難題を言う人じゃなかった。
不思議に思いながらカットをして、いつも通りシャンプーをした。
傷にはもう慣れていた。
だから手が雑だったんだろう。
おばちゃんは私に何度も洗い直しをさせた。
“おいおい私はもうシャンプーギャルじゃないんだからさぁ・・・”
心の中で思ってた。
すると、おばちゃんが言った。
「シャンプーしてもらってるとさぁ・・・
やってくれてる人の心の中の声って聞こえちゃうんだよねー。
今カンベンしてよって思ってんでしょうー。聞こえちゃったもんねー。
まあさ、私にとっちゃこれが人生最後の美容院なんだから、
あきらめて頑張って洗いな。ガッッハ」
息が詰まった。
同時に正直“このやろう!やってやろうじゃん!”とも思った。
余計なことはいっさい考えなかった。
初めてその人のためにだけに無心でシャンプーした。
上がったおばちゃんはこうも言った。
「私さぁ、本当ならもうとっくに寿命きれてんのよねー。
先生に言われたわぁー。
『岡田さんの娘さんに頭やってもらってたから、寿命伸びたんじゃないの』
ってねー。
最後に本当に心のこもったシャンプーしてもらったし、
寿命まで伸ばしてもらって、本当に感謝してるわぁー。ガッハッハ」
何にも言えなかった。
自分がした事が良い事だなんて、わからなかった。
ただ
おばちゃんのおかげで、
今まで自分は何と雑に仕事をしてきたのだろうと、ガクゼンとした。