◇日々雑感「ディスクユニオン千葉店との、中古CDとDVD合戦記」



 このところ、取り立てて断捨離ではないのですが、我が終活の一環として、ディスクユニオン千葉店へ、中古CDやDVDを売りまくる日々を送っています。

 殆どがジャズに費やされたCDには、マイルスにモンク、そしてコルトレーンと、いかにもジャズ・ジャイアンツと呼ばれる大物ばかり。

 その量は、車の免許を去年返納した筆者が、一人で持ってゆくには非常に重苦しい、謂わば努力の賜物と言っても決して過言ではないのです。

 そういえば、郵便局でのアルバイトの八年間掛けて集めたCDやDVD群ではあるのですが、買った時の状況が目に浮かぶノスタルジックな品ばかりです。然し、そこに溺れてはいけないのが、断捨離の条件ではあります。

 愛着度を少し下げて売る、ジャズ・アルバムや映画の数々は、名盤や希少盤、そして愛聴盤もあった、謂わば筆者の宝物。然し、値段としては中には高値もあり、独り者の筆者には、愛する子どもを手放すような実感が沸きます。

 前月の末に62歳を迎え、我が人生の大半を占めたジャズ体験史は、ここに来て終盤を迎えたこと必至と感じてはいます。それは、何も人生の終焉だからこその行為ではなく、謂わば潔く人生を閉じるには、相応の儀式にも似ています。

 それにしても、この相場価格に疎い筆者には、連日の中古品を売る行為が、どこか映画鑑賞後のSNSでの批評文や旅行記を書く達成感と、共通する部分があります。

 それは、生産と消費による資本主義社会の恩恵を受けた者としての、謂わば恩返しとも準えるリサイクルとエコロジーの絶え間ない反復作用となる筈。

 これは、いかにも現代社会の縮図であり、後にこれを聴いて、或いは観て、ジャズメンやシネアストを志す後輩を作りたい筆者の、小さな兵隊にも酷似したジャズ・マニアやシネマニアの後輩育成と謂う、時代をも飲み込む、実に壮大なる輪廻転生の儀式ともなるでしょう。

 だからその内容は、決して駄盤とは呼べぬ名盤や名作が犇めくと自負があります。それは、我が財産であり、それを購入してくれる者への、SNSの私的批評までも付き合って頂きたい、しがらみの品物なのです。

 しがらみの連鎖反応が、映画やジャズの歴史を作る。それは決してハードのリサイクルだけでは味わえぬ、ソフト重視の教育にも等しい軌跡であります。このしがらみは、やがて一つの潮流を創設するでしょう。

 世に合戦記と呼ばれるジャンルがあります。それは、今やロシアによるウクライナ侵攻に基づく闘争精神のパラダイムであります。そしてそれを、日本に置換すると、『源平盛衰記』や関ヶ原の戦いなどの、内なる合戦とも謂えましょう。

 所謂、マニアやカルトと呼ばれる作品には、この合戦記の原理的なモチベーションが含まれます。それは、希少盤と一般の名盤の狭間で揺れ動く、セコハンの宿命ではあるでしょう。

 それにどう売り値を付けるかは、まさにディスクユニオン千葉店のスタッフの方々の、意欲的なセールス感覚に依存することになります。

 我々の後の世代が引き継ぐべき、ジャズ史や映画史に、この筆者が売ったものが少しでもお役に立つ、謂わぱプラグマティックな作用を及ぼす時、それはエリック・ロメール監督風の、教訓と説教に満ちた後継者の育成とも謂えるでしょう。

 それを愛と情熱溢れる知的遺産と断じて頂ければ、筆者は大満足。後世に伝えたい事柄の一助として、我がSNSを参照して下さい。

 ジャズも映画も、決して終わらぬ芸術の一環。それを肝に銘じて購買者たちは、心して聴いて観て欲しいものばかりです。それこそが、ソフトの世界遺産化運動としての、ディスクユニオン千葉店の使命でもあるでしょう。

(了)