◇日々雑感2020・1・3(金曜日)

☆『現代の文明論之概略とは?』

    今、この世界は何を憂い、何を尊ぶかの基準を喪失しつつあります。そこには、文明の持つ価値観の倒錯現象も窺えましょう。まさに文明の行方を占う令和2年を迎えました。そこでは嘗てのイデオロギーをもう一度見つめ直した上で、それを超克する新イデオロギーの土台を開発せねばならぬでしょう。それこそが、IT社会に相応しい志向だとも謂えましょう。
    そこでこの『正論』のコラムは、100年前から現代までの文明の状況を簡略に敷衍させ、これからのその行方を模索するという、実に画期的な論文を提供しています。
    例えば、理性という物差しが崩壊しつつある現代に於いて、それと拮抗しうる何が予想されるかを、この『正論』の書き手でもある佐伯啓思氏は探します。
    これまでの文明に不可欠であったこの理性の絶対性と普遍性が、歴史の危機を乗り越える事に対応しきれなくなった、つまりそれは核弾頭や高度な兵器などの戦争機械がもたらした戦争の未来像が、この理性や普遍性を駆逐する現代文明の実相に顕在化しつつあるからに他ならないのです。
    そこで、これらにとって変わる「理念」を超克する言葉として啓蒙したいのが、「信念」でありましょう。理念の理が理性に立脚しているのであれば、信念の信とはまさに信仰だと云っても決して過言ではないでしょう。
    ここに、文明の原点回帰の現象を見出だすべきでありましょう。古来の土俗信仰の復権を唱える時、そこには一種の啓蒙主義が働きます。そして、ここに日本古来の土着的思考が幅を利かす時、新しい世界文明が構築されるのです。
    それを一言で言うと、スピリチュアルな世界の構造主義を新しい視点から考察する文明と謂えるでしょう。IT社会特有の唯物史観とは一見真逆に思えるこの精神世界の探求こそが、現代的文明として栄える事を期待しつつ、新年を迎えた筆者の病状も、更に悪化の一途を辿るも、この信念による回復を願うのみと一筆啓上した次第。
(了)