何気なく目についたのが、千葉県館山市に開設された日本介助犬福祉協会が運営する「総合訓練センター」についての記事。介助犬のサービス体験ができる宿泊施設「ドッグワールド」を装備し、介助犬PRも兼ねるとの事。
   このいかにもひっそりと地方版の片隅にある記事に目を留めたのも、将来介護の必要性のある、恐らく独り身となるであろう筆者の介助犬への依頼心からに他ならない。
   例えば「犬の恩返し」とでも言おうか。筆者はほんの数年前まで、小型のポメラニアンを飼っていた。早朝の散歩から3度の食事に、時に下のお世話をしていた時期もあった。ちょうど亡くなる前の父の介護と、筆者自身も足が関節リウマチ等で苦しんでいた時期と重なりあっていた。
   然し、妻帯者ではない筆者の心の糧としての役割を果たしていたナナ(飼い犬の名前)は、亡き父の介護の記憶と重複し、今では筆者にとって大切な思い出となっている。
   そして現在、その筆者自身の両足の不具合が顕著となり、将来は盲目の車椅子という事態に成りかねぬ危惧を抱く時、この介助犬の記事が目を引いたのだ。
   出来得れば、将来殆ど身寄りのない犬好きの筆者に、介助犬は実に暖かい手を差し伸べてくれるだろう。そんな「介助犬訓練センター」のオープンは、誠に利に適った朗報である。
   此も、昔お世話をしたナナの恩返しを受ける身として彼女の飼育の報いを受けるべく、宿泊施設「ドッグワールド」への訪問の欲求が高まる。常に介護人に付き添われる必要性のない、どちらかというと人間嫌いの筆者の善き相棒として、この介助犬は伴侶にも似た極めて重要なポストを担ってくれる筈。
   犬はその賢明さと同時に、波長が合えば人間以上の人との霊的コミュニケーションが通じ会える動物だと思われる。これからの人生を考えるに当たり、この記事は実に頼もしい老後のお相手としての介助犬育成の場の創設という、筆者にとってはまさに吉報だ。
   介護した父と犬の報いがこれから介助される筆者の、此はまさに「恩返し」という、実に細やかな贈り物とも謂える記事として君臨しているのだ。
(了)