チョウセンアサガオ 薬草の歳時記

 

見て愛でるチョウセンアサガオの花、食べるの禁止《薬草の歳時記9月 朝鮮朝顔》

 

 

 初夏から花が見られます。南アジア原産のナス科植物で、江戸時代(1684年)に日本に渡来しました。ダチュラの別名でも呼ばれています。園芸種をエンゼルトランペットと呼んでいます。

 

 チョウセンアサガオ類は毒性を持ち、葉や種を口にすれば「意識障害・幻覚」などが現れます。

 中国の薬草書・本草綱目(明代)に、「患部切開に用いると、痛みを感じない」の記載があります。江戸時代の名医・華岡青洲は本種を利用し世界初の麻酔薬とし、乳がん手術などを行いました。

 

 内藤記念くすり博物館(岐阜県各務原市)で、「麻酔薬のあゆみと華岡青洲展(2021年3月31日まで)」が開催されています。

チョウセンアサガオ(上画像)とイブキトリカブトの画像を、提供させてもらいました。

 

 

チョウセンアサガオの果実

 果実がこの画像、トゲが生えたボールの様です。

 中に、小さく平たい種子が多く入っています。江戸時代の外科医・華岡青洲は、中国の漢方薬を参考に、麻酔薬・通仙散を考案、それを用い世界最初の全身麻酔を成功させたと伝えられます。通仙散には、チョウセンアサガオが配合されていました。

 

 

 夏の盛りに手織り(うちおり)の細かい縞木綿(しまもめん)をぴちっと着付けていて、締めた細い帯が形よかった。何よりも目の奥に残ったのは、花のように白い肌と、一筋の後れ毛(おくれげ)もなく今結いあげたばかりのように艶やかな丸髷であった。肌の白さに強められて髪の色も一層黒々として、青い眉は昨日剃ったばかりの新妻のように鮮やかで初々しくさえ見えたのを、加恵ははっきりと覚えている。決して早熟な娘ではなかったのにこんなことを記憶しているのは、それだけ於継が見事だったからだろう

  その日であったか、翌日であったか、加絵は母親にこのことを告げた。悪いことをしたわけではないから隠す必要はなかったし、それに誰かに云わなければ胸に溢れている感動のようなものが治まらなかった。母親は頷きながら娘の話をきいて、於継の美しさには充分同意を示した上で、こんな言葉をつけ加えた。「美っついこともさりながら、賢い女(おなご)やというて誰でも褒めんものはないのやして。どのように賢いのやら知らぬけれども、知るひとは皆が皆そない云いなさるえ」

 加恵の感動はこのときから憧憬を育て始めた。あれだけ美しい上に、誰もが褒めるというほど賢いのだ。女として、これ以上に理想の在りかたがあるだろうか。加恵の幼い胸の中で於継を崇高なものとしてあがめ尊ぶ気持は信仰に似て齢とともにふくらんでいった。

 

小説「華岡青洲の妻」 有吉佐和子