イラスト イライラ

 

 

 新型コロナウイルス感染症もあり、日常生活の規制が続きます。変わってしまった状況に、大きなストレスを感じる方が多いのでしょう。

 

 ストレスに心と身体が負けてしまった時、精神不調が起きます。「怒りの感情」が高まります。

これは、ストレス証候が、かなり悪くなってしまった時の症状です。

 

 

では、ストレスの初期症状はどんなものなのでしょう。それは、腹部不調から始まります。

 

「お腹が張る」となり、お腹が張れば「おなら・ゲップ・おくび(あい気)」が出やすくなります。

 便もすっきり出ず(残便感)、「下痢と便秘を繰り返す」状況になります。便のにおいも強くなります。

 

ストレス症状が悪化すると、精神不調が起きます。具体的には「憂うつ感」「怒りやすい」「口調がきつくなりがち」です。

女性は生理状況がひとつの判断材料になります。生理前に乳房が張る」「生理不順(周期が早くなったり遅くなったりする)」「生理痛(気滞血お)」の不調です。

 

怒りが増し、さらに症状悪化すれば、「狂躁・あせり・まったく眠れない・口内炎(舌炎)」の不調が起きて、口が苦く感じます(心熱)。

《仕事上のストレスを抱えた方が、「口が苦い」と医師に伝えると、『味覚障害ですね』と診断されたという話を、実際に聞きました。その方は驚き、不安も強くなったと言われました。漢方では、ストレス不調の可能性大と捉えますから、そうだと判断出来たら、服薬と生活習慣改善で、3日程で抑える事が可能なはずです。》

 

ストレスが起こす病は、この様な悪化ルートをとります。

あなたが怒った時の事を思い出してください。どんな不調に悩まされましたか。

 

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重い雰囲気の場にいると、「気づまり」だと感じます。そんな言葉が今も残されています。そう、それがストレス病全般の漢方病名です。

『気滞(きたい/気が身体を巡らず、特に身体上部で交通渋滞する状況)』と言います。温かい気が目詰まりしている状況ですから、ストレス状況は必ず熱感を持ちます。のぼせ・冷たい飲料を大量に飲みたい・顔面紅潮になります。

 

ストレスは、肝(漢方的な解釈の肝、西洋医学でいう肝臓と同一ではありません)を機能低下させます。肝は腹部にあるので、不調は腹部から始まります。

 

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対応法です。

 

漢方の診立ては、慣れが必要です。漢方専門店などの先生の意見を聞きながら、治療してください。

自分を診立てる事は、易しい事に思えますが、「私はこうだろう・こうあるべきだ」の思い込みが邪魔し、結構難しいものです。

 

ストレス初期の腹部不調の時は、香りの良い生薬で治療します。香りで気を動かすのです。

漢方薬の、香蘇散、二陳湯などを服用してください。ミントティーを補助に用いても、良いものです。

ひとつに決められないのは、人によって抱える主不調が異なるからです。

 

 

精神不調・生理不調が起きた時は、もう症状が重くなっています。生薬の、柴胡(さいこ/疏肝に働く)・芍薬(しゃくやく/柔肝に働く)のペアを用います。漢方薬・四逆散(しぎゃくさん/柴胡・芍薬・枳実・甘草)が基本薬ですが、その効能を増強した柴胡疏肝散(さいこそかんさん/日本での販売名:柴胡疏肝湯・さいこそかんとう)を用いるのが良いものです。

柴胡・芍薬の配合を持ち、日本で多く用いられるのが、漢方薬・加味逍遙散(かみしょうようさん)です。抗ストレス効能は、一段落ちます。

 

医薬品販売店などで、知識を持った方に、薬の性質をお訊ねください。

 

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《付記》

 

このブログで、いつも申し上げる事ですが、病は「悪い生活習慣」から始まっています。ストレス病も同じです。漢方薬の服用と同時に、生活習慣を改めてください。

漢方薬を求める時、そんな知識を伝えてくれる先生は、信頼して良いのだと思います。

 

 

 「ストレスの元がなくなる訳じゃないから、抗ストレス薬を飲んだって、なんの得にもならないわよ」と考える方があるでしょう。しかし、対応薬を飲めば、追い詰められていた心が変わります、少しの事で声を荒げていた自分が変わります。

 心に余裕が生まれ、忘れていた笑顔もまずは少量戻って来るでしょう。

 ストレスは漢方では、「実の病」と捉えます。実の病の改善は短期で可能なものです。3日も服用すれば、不調改善を実感出来るはずです。

 

 

最近、認知症に良いと用いられる様になった漢方薬に、抑肝散(よっかんさん)があります。その名前から、『強力な抗ストレス薬』の印象を与えます。しかし、これは基本的に、抗ストレス薬グループではありません。

 この薬が作られた理由は、子の引きつけを抑えるための緊急薬としてです。親の愛情薬として作られた歴史を持ちます。

だからこれは、「揺れ・震えをおさえる」「子どもの身体に滋養をつける」事に働きます。

 抑肝散については、また後日説明させていただきたいと思います。