脳を身体を活性化する薬草

ジオウ(地黄)

 

 

ジオウ 薬草の歳時記

 

古来、多くの医者が、星の数を超える程の患者を診て、命を救って来ました。

 

人類の医療は、身近な植物・鉱物・動物素材「生薬」を用いた漢方が、長く主流を占めていました。

 

漢方により治療をする医師は、多くの治験例をもとに「病の流れ」をまとめ、それぞれの対応薬物を知りました。

 

対応するうち、漢方世界はひとつの結論達しました。

 

ひとの、生長・衰えについての捉え方です。

 

生長は、「何もない大地に、徐々に水と養分が染み込み、豊かな大地になる様だ」と感じました。ひとの衰えは、「水と養分が染み込んだ地が、それを徐々に失い、荒地に戻る様だ(または、限りある水と養分が、末端まで運ばれない、濡養されない状況)」と感じたのです。

 

ジオウは、身体に潤い(濡養)を、「じわっ」と、しみ込ませる・与える薬です(補血薬、滋陰薬/物質を身体に与える)。

 

滋養をしみ込ませる事で、子どもには「健康な身体と、活発な脳細胞を得る」事に働き、成長促進薬になります。中高年には「身体・脳の衰えを、可能な限り防ぐ」事に働き、長寿薬になります。

 

身体の機能が衰え始める40歳以降では、「枯れる」と表現される事があります。それは一般的な例えではありますが、肌の含水率は「若者は高く、高齢者は低い」事などから、的外れなものではないと思うのです。

 

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ジオウは、中国では雑草化しており、(中国の)各地で広く見られる植物。表面は短毛に覆われて、いかにも滋養を貯め込んでいると感じさせる姿です。

 

「黄土に育ったものが良質」であると、実際に用いられてその様に捉えられた事が、名前の由来とされます。根(根茎とも肥大根とも言われる)を乾燥させ薬としますが、それを乾ジオウと呼びます。湧水・清流の様に、身体に滋養を与える薬効、併せてクールダウンに働きます(薬効:清熱滋陰、生津止渇)。

 

老化防止には、これを加工し温性薬に変えたものを用います。黄酒(もち米から作った蒸留酒)に一昼夜漬けたものを蒸した後天日にさらし半乾燥、何度も繰返すと、表面は黒光りし、芯まで黒く染まります。食べてみれば、甘味が強くなっていると感じられます。加工を経たものが熟ジオウ、滋養を与える薬効を保ちつつ、温性薬に仕上がります(薬効:補血調経、滋腎益精)。

 

熟ジオウを配した抗老化の基本薬が、四物湯(初期)であり、六味地黄丸・八味地黄丸です。これらは「身体に濡養をあたえ、体循環を維持(清水を注ぎ込むイメージ)」し、病を防ぎ機能維持に役立つものです。

(前段で説明した)加工していない乾ジオウは、熱感不調を伴う病態に用います(天王補心丹、炙甘草湯、血府逐瘀湯、消風散、潤腸湯、犀角地黄湯など)。

《※日本では八味地黄丸ばかりが多く用いられますが。これは身体の冷えがある方が用いるものです。熱感・のぼせがある方は、六味地黄丸を用いなくてはなりません。》

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「老化防止に良い」の切り口で説明されがちなジオウですが、子ども・若者の「身体と脳の発育遅れ(食欲低下がない場合)」にも役立ちます。いつか機会を設け、説明したいと思います。

 

気虚の方(疲れやすい・声に力がない・食欲が湧かない)にジオウ剤は向きません。誤用すれば(医師・薬剤師・登録販売者が、見立てがうまく出来ず、薬を選び間違えた時)、胃もたれ・胃部不快が起きます。

 

ジオウの花は、4月初旬から盛夏過ぎまで、長く目にする事が出来ます。緑濃い葉が、印象に残ります。

 

みどり色の芽を見てテアの小さな妹が/明るい声をたてて笑った/人狩りに国を焼かれて以来/一度も笑ったことのない子が/いま クルクルと回って/踊っていた/そのとき以来/シュナの顔にも/かすかな微笑が/もどって来た        シュナの旅・宮崎 駿