梅雨に突入し、6月も中旬。さて、今年も伊吹山のヒメボタルの季節が近づいてきました
伊吹山といえば豊かな植生による多種多様な高山植物が有名ですが、実は伊吹山は夜もすごいんですよ…(意味深)
みなさんヒメボタルってご存知ですか?
ホタルと聞くとほとんどの方がゲンジボタルかヘイケボタルのような川の上をフワフワと舞うホタルを想像すると思います。
たとえばこんな感じの。
ホタルは主に陸生と水生に分けられ、ゲンジボタルやヘイケボタルは水生で、幼虫のころから水の中にいます。実はこれ非常にめずらしく、世界中にホタルは2000種類以上いるようですが、このうちなんとゲンジボタルやヘイケボタルのような水生ホタルは5種類しかいないそうです
日本だけでもホタルは全部で50種類近くいるそうですが、そのほとんどが陸生で、水生のゲンジボタル、ヘイケボタルは世界的にかなーりレアなホタルのようです。んーこれは日本の川がとてもきれいだから為せる技なのでしょうか。
さて、世界的には陸生のホタルのほうが当たり前ということになりますが、これからお話するヒメボタルも陸生のホタルです。
ヒメボタルとは?
ヒメボタルは川の周辺ではなく、明かりのない暗い自然林に住んでいます。ヒメボタルは幼虫の頃にカタツムリ約50匹をたいらげ成長し、成虫になるには2年の歳月を要します。成虫となったヒメボタルの体長は5mm~8mmほどの大きさで、オスはメスを求めて飛行し、交尾を行う為の過程として光を放ちます。成虫の寿命はわずか数日で、そのあいだ必死に光を放ちながら命を紡いでいます。
ヒメボタル(伊吹山)
ヒメボタルの最大の特徴
ゲンジボタルの成虫が15mmほどあるのに対し、ヒメボタルの成虫は、その半分かそれ以下の大きさです。小ぶりなヒメボタルですが、このヒメボタル、想像以上に光ります
その光りはゲンジボタルのようなぼわーっとしたものではなく、チカッチカッ
と、まるでLEDのような鮮烈な明るさで目に飛び込んできます。
はじめてヒメボタルをみたときは、この光を本当に生き物出しているのかと驚いたものです。
静止画しかないのでその光り方の凄さがお伝えできないのが悔しい…。(伊吹山)
そんなヒメボタル、全国にもいくつか生息地があり、伊吹山にも多くのヒメボタルが棲んでいます。それはもう遥か昔から。
伊吹山の近くだと、有名なのは岐阜県大垣市にある金生山。こちらはヒメボタルの撮影地としても有名で、撮影するためには申込みが必要です。(年々競争率が上がっているそうです)ネイチャーフォトグラファーでソニーイメージングプロサポート会員でもある篠田通弘さんが長年金生山で撮影教室を行っています。
金生山ヒメボタルについてはコチラ⬇
http://www.mirai.ne.jp/~kinsyou3/34/sub34.htm
他には意外にも名古屋城の外堀にもヒメボタルが生息しており、こちらは保護活動をされているそうです。
全国的に有名なのは岩手県にある折爪岳でしょうか。あと、富士山にもいるそうです。
ヒメボタルは、その生態が謎に包まれており、まだまだわからないこともたくさんあるそう。今もたくさんのホタル研究者が各地で調査をしています。
そもそも伊吹山に棲むヒメボタルも、なんでまたこんな厳しい環境で暮らしているのでしょうか。
ヒメボタルのメスは羽が退化している為、飛ぶことができません。
メスが飛べないということはつまり、「その場所から移動することができない」というわけです。
これが引っ越ししたくてもできない理由となりそうですが、じゃあいったいいつから伊吹山に棲み、最初はどうやって山頂に来たのかというのが気になります。
しかし、ヒメボタルが伊吹山で暮らすひとつの理由があります。それは伊吹山が石灰岩質の山ということです。
ヒメボタルの幼虫はカタツムリを食べて成長します。カタツムリは殻を作るのにカルシウムが必要です。炭酸カルシウムからなる石灰岩地は必然的にカタツムリが多くなります。伊吹山のような石灰岩質の山は、カタツムリにとって最高の環境なわけです。なのでカタツムリが豊富な伊吹山山頂はヒメボタルたちにとっても絶好の住処と言えますね。
ヒメボタルのための夜間営業
伊吹山ドライブウェイではこのヒメボタルの神秘的な光を楽しんでいただくためにヒメボタルが発光する7月にオールナイト営業を行っています(注意:伊吹山のヒメボタルの発光時期は7月ですが、場所によって様々です)
2019年夏のオールナイト営業日のカレンダーがコチラ!
伊吹山のヒメボタルは例年7月上旬から中旬までです。週で言うと第1週~第3週頃ですね。オールナイト営業は金曜の夜と土曜の夜しか行いません(第2週のみ日曜もやります) ちなみにヒメボタルは月明かりが強いとあまり発光しないそうです。とすると、7月3日が新月なので狙い目は第1週の7月5日(金),6日(土)でしょうか。とは言うものの、ヒメボタルの発光は様々な条件が絡み合って見られる現象ですからね。一概に言えないのですが。
ヒメボタルは地域によって発光する時期、時間がバラバラです。伊吹山のヒメボタルは7月のはじめ頃から7月の中旬頃が発光時期。
時間帯は22:00から光り始め、明け方頃まで続きます。(ホタルも見る側も徹夜です…)特に撮影を目的としている方は日中によく寝ておきましょう
伊吹山ドライブウェイオールナイト営業日は何時でも料金所が開いているので、いつお越しいただいても入場可能です。また、退場側も常時開いていますからいつでも帰ることができます。
ヒメボタルはどこに出るの?
ヒメボタルは伊吹山山頂周辺に多く現れます。
伊吹山の山頂
そして、2017年と2018年のヒメボタルのよく見れた場所がこちら
昔から山頂のドリーネ周辺に多くいるとされていましたが、ここ数年はあまり見られませんでした。西登山道にたくさんいる印象です。
山頂駐車場と西登山道
駐車場➡山頂までは片道約40分です。
振り返るとこんな感じ。いい景色
2017年はこのあたりによく見られました。
写真だとこんな感じ!
無数にいるように見えますが、こちらは比較明合成です。
(ヘタクソだな…)
しかし!安い一眼レフとレンズでもこれくらいは撮れます!
ゲンジボタルの写真と比べてヒメボタルは発光の点滅が短いため、円形となって写ります。
撮影時間は午前3時頃です…
西登山道をしばらく歩くこと20分~25分。石灰岩のカルスト地形が見えてきます。
西登山道
山岳感強めで個人的に好きな場所です
わたくし、2018年はこのあたりで撮影していました
そして夜はこんな感じに!
これまたヘタクソな写真です…
撮影時刻は深夜2時頃です
風が強いとヒメボタルも飛ばされて光が流れやすくなってしまいます。
ちなみに使用機種はPentax K-5Ⅱ、レンズはSIGMA 18-35mm F1.8 DC HSMです。
比較明合成にはフリーソフトのSiriusCompを使用しています。
ホタルの撮影方法は検索すればたくさん出てくると思います。ぜひトライしてみてください
西登山道から少し南にそれると濃尾平野やびわ湖を一望できます
麓からの伊吹山登山道もこんなにダイナミックに。
ヒメボタルはこの伊吹山登山道側(特に8~9合目あたり)にも多くいるようです。わたくし見に行ったことがありませんが
さらに登ること数分。山頂一帯が見えてきました。
山頂には日本武尊(ヤマトタケルノミコト)像が。
ヤマトタケルは伊吹山の荒神を成敗すると言い、神剣「草薙の剣」を熱田神宮(名古屋市)に置いたまま、素手でバトルに挑みます。
しかし、結果は惨敗。結局直接戦うまでもなく飛び道具(大氷雨)で返り討ちにあいます。ヤマトタケルは瀕死の状態で下山しますが、その後しばらくして命を落としてしまいました。
そんなわけで、悲劇の英雄ヤマトタケルを偲び、伊吹山山頂にはこのヤマトタケルノミコト像が建てられています。
おっと話が逸れました。
伊吹山の山頂は平らで広大です。そのため山小屋さんや伊吹山寺、トイレなど、たくさんの建物があります。
この場所にはかつては気象観測所もありました。観測所は大正8年から有人による観測がはじまり、平成元年に無人化、平成13年をもって観測を終了。そして平成22年の秋、老朽化した建物の解体が完了しました。今もなおギネス記録となっている積雪量1182cmの記録(昭和2年)は、この観測所が計測したものです。
また話が逸れました…。ヒメボタルの話に戻りましょう。
ヒメボタルはこの山頂にも現れます。ここ数年は個体数が少ない印象ですが、どこにたくさん現れるかはその時にならないとわかりません。西登山道に多くいるのも、このあたりにいたのが風で飛ばされてきただけなのかもしれませんし。
山頂のドリーネ
※ドリーネとは石灰岩地域に見られるすりばち状の窪地のことです。
ちなみに7月下旬にはシモツケソウをはじめとした色鮮やかな高山植物に彩られます
7月末頃のドリーネ
とりあえず今日はここまで。
次回!
ヒメボタルシーズンのオールナイト営業時の様子をご紹介します!
それではまたっ
スタッフ水谷