電波 -DENPOW- / Noise

電【でん】

電気、電車、電話など人が生きていく上で必要な、ライフラインでもあるエネルギーを示すものである。
波【やぶる】

引き裂いたり、穴を開けたりして不完全なものにする。何かによってそれまで続いた状態を終了させる。

夢であって、夢でもいいから、夢ではない。人はその時の波(気分)によって、さまざまな夢を見る。そして人は、夢によって喜び、傷つき、そしてまた夢を見る。
---『ムーンライトシンドローム完全ガイドブック(双葉社)』より引用---

HINT : 時間の制約。保健婦は廊下に立つ
脚本 : 藤村卓也 / プログラム : 野口俊雄 / サウンド : 杉山千春


●ストーリー
 金曜日の夜、ミカは気分転換にとユカリを『ドリームパンク』というクラブイベントに誘う。渋々付き合う形になったユカリだったが、いざクラブに入ると珍しく人の悪口にもノリノリで、ミカにフォローされながらメインフロアで踊る。途中、ユカリが飲み物を買いに行ったタイミングでミカはうっかり眠ってしまう。しばらくして目覚めたミカはユカリを待たせている事を思い出し、急いでバーへ向かい合流する。「あたしはじゅうぶんたのしんだし……帰ろっか」というユカリ。最初は乗り気じゃなかったユカリだが、結果的に結構楽しめたようだ。帰り道、ミカは耳鳴りがなかなか消えず、全く眠れなくなってしまう。翌日になってもミカの耳鳴りは続いていた。ユカリとミホにはそれぞれ「あんな音楽聴いてるからだよバーカ」「ヘンなのはオメェの頭ん中だろ」と罵倒され、驚いたミカは二人をを問い詰めるが二人ともそんな事言ってないと言い、不審がられてしまう。その後も、幻聴が聞こえたり不思議なビジョンが見えたりクラブで鳴っていた音楽が聞こえたり……。休み時間、チサトに関する信じられない噂をミホに聞いたミカは、確かめるためにチサトに会いに行くが、チサトは電波を受信するように意味不明な言葉を連呼し、どこかへ行ってしまった。3時間目、居眠りをしたミカだったが、目が覚めるとそこは昨日行ったはずのロストハイウェイのメインフロアだった。記憶が混乱し、必死で今の状況を理解しようとするミカ。「そうだ、センパイを待たせてるんだった!やけにリアルな夢を見てたんで解らなくなっちゃったよ」急いでバーへ向かうミカ。しかし、ユカリが居るはずの場所には何故かミホが居た。ミホは「結局いつも通りあたしと一緒に行くことになったじゃん」と言う。「あたしはじゅうぶんたのしんだし……行こっか?」とユカリと同じ台詞を言うミホ。帰り道、既視感を感じるミカ。キィィン。再び、ひどい耳鳴りで目が覚めると、そこは学校でミカは3時間目の授業を受けているところだった。耳鳴りと変な夢で具合が悪くなったミカは保健室へ向かう。保険の先生を見つけたミカは自分の症状を伝えようとするが、数時間前のチサトのように意味不明な言葉を言いながらその場で倒れてしまう。暗闇の中、鳴り響くクラクションの音、車が衝突したような音……。「あれ?これって?」
 目覚めると、ロストハイウェイのメインフロアだった。しかし、音は鳴っておらず客も一人も居ない。「これも夢?あたし、誰と来ていたんだっけ?」バーに向かうミカ。そこに居たのはユカリでもミホでもなく、白髪の少年だった。「こんにちは、ミカ。あれー?またボクの事忘れちゃったの?それより今見てた夢、楽しかった?次会う時はもっと面白い物見せてあげるよ」どうやら夢と現実の区別が曖昧な、奇妙な出来事の原因は、白髪の少年の仕業だっただしい。ふざけた態度の少年にミカは大人をからかった罰としてチョップをしかけるが、白髪の少年は時間を止め「解ってないね……」といって超常的な力でミカを吹き飛ばした。目が覚めると、ミカは自分の部屋のベッドに横たわっていた。「すごく長い夢を見ていた気がする……思い出せないや。今日は金曜日……ヤバッ、遅刻する!」
 学校へ行くと、ミカはミホに「今度、ドリームパンクっていうイベントがあるんだけど、一緒に行かない?」と誘われる。何も覚えていないミカは、面白そうだからセンパイ達も誘ってみるね、と言い、教室を出て行った。


●まとめ&わかったこと
・ユカリはクラブみたいな場所は下世話で嫌い
・ユカリはグランジばっかり聞いている
・ユカリはリズム取る以上に音楽にノるのは恥ずかしく、他人の目が気になって踊れない
・ミカは本当はヴィジュアル系のバンドが好きで、カッコつけでテクノを聴きクラブ通いをしている(図星)
・リバーオブサマー→苦くてロストハイウェイで一番まずい。近日取扱中止予定
・スリーアイランド→腐ったチーズの臭い。一部マニアに熱狂的に支持されている
・ジオ・カタストロフィー→可も不可もなくどうでもいい味
・「あのデブ」首からTB-303をぶら下げてナンパするも撃沈。クラブ帰りにヘルスに行ってるらしい。
・「あのオタク」ヒロコのお姉さんをストーキング、自分で編集したミックステープをプレゼント。
・「あのブス」駅ビルでカステラを売っている女。髭が生えてるけど男にはモテるし彼氏もいるらしい。
・『クソユゲ・レコード』主宰のDJヤギハラのプレイはジェフ・ミルズを超えているらしい
・「(芝浦)ゴールドが懐かしいよ、渋谷FFD、デリック(ミニコミ?)、PICO(樋口康雄?)」
・一番最初の帰り道から耳鳴りはずっと続いている
・幻聴「でも、やるんだよ」「さむくないかい」→根本敬ネタ
・チサトのトリコじかけ、赤羽のゴミ屋敷、ミカの三脚男子etc→『電波系』ネタ
・のうしんぼう→山野一の漫画、デスパンダ→氏賀Y太の漫画

・ミカとミホの別れ際の会話がドリフ「フロ入れよ!」「シュクダイちゃんとやれよ!」
・ミカは白髪の少年の事を一切覚えていない
・ミカが倒れたときの車のクラクション、急ブレーキ、衝突音。(『陰約』の出来事を暗示している?)
・次はもっと面白い物を見せてあげるよ(『開扉』への伏線?)
・右手を銃の形にしてミカを撃つのは没になったハイパートキオの名残?


●感想
ものすごいサブカル回!笑 当時のサブカルワードがたくさんつまってる。(サブカル版「丸の内サディスティック」があったらこんな歌詞になりそう)わたしは当時は中学生だったのでクラブとかの事情は解らないけど雑誌とかTVブロスとか、後に読んだ当時のele-king初期の号とかでなんか読んだ記憶あるなあって感じの話題だし、電波ワードは殆ど、根本敬と村崎百朗の「電波系」とかあの界隈が元ネタだよね。この回の脚本担当の人は電気グルーヴとかあの頃のあのカルチャーが相当好きだったんじゃないのかなあ。ストーリーについては、無限ループになってしまった世界で耳鳴りはなりっぱなし、ミニマルテクノがずっと流れてて本当に結構狂気な回だと思った。「あたしはもうじゅうぶんたのしんだし」っていう、ユカリとミホが全く同じ台詞を言うのが妙に怖かった。ミトラがミカを撃つ音とかモーションとかも。あれって『呪力』のサイコガンの名残なんじゃないかと個人的に思っている。あと、偽物のユカリがノリノリで話す他人の悪口の内容がひどい!笑 (あのデブ?あのオタク?あのブス?だもん)
 この話で結構自分的にグッときたのが、「今のシーンはクソ、昔は良かった、ゴールド、FFD、デリック、PICO……」と会話してる音楽通2人組に対してミカが「過去引きずってるな~」って言うところ。中学生だったので、音楽的知識が豊富な上の世代は凄いな~と思うしかなかったんだけど、名詞の羅列で偉そうにディスってる人をディスる視点もあるんだなっていう感覚が斬新だった。今はもう解りすぎるくらいミカの感覚がわかるけれど 笑
 ミカが倒れるときに、交通事故を連想させるような音が入っているんだけど、これは『陰約』を暗示していて、夢の出来事のようだけど現実に起きた事だったのかもしれないと思わせる。
 あと気になってるのが、クラブに居る客の一人が「2年後か……」とつぶやいてミカが「?」となるシーン。この世界で2年後と言えば、シルバー事件年表で言うと『プレ・ルナティック』の年。もうこの時にシルバー事件の構想ができていたのだろうか?!少年と会ったときのBGMとサイコガンが怖くて良い。

●追記
この脚本を書いた藤村卓也氏、この前のイベント(GHMのDOMMUNE)でいまは「タクシードライバー」っていう日本酒を作ってると言っていたからググったらゲームプランナー格闘家蔵元サブカルっていうもの凄い経歴だった。日本酒は高橋ヨシキが関わってるし、「サブカル界でも活躍」だって。ていうかイベントで根本敬ともトークショーしてるし。やっぱりね!!笑
イベントで答え合わせして欲しいな。クソユゲレコードのDJヤギハラのモデルは居たんですか?とか 笑

 

 

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●『ムーンライト・シンドローム』が好きすぎて、雛代に住んでてミカの事も見た事あるような気分で書いた長編小説です。
「ムーンライト・シンドローム 慟悪スピンオフ」

https://www.pixiv.net/series.php?id=942840