旅の途中で感じてはいたのだけれど、やはり疲れはたまっていたのだ。6月からずっと忙しかったもの。
帰ってきてから、最近腹が立ったこと(はらわたが煮えくり返ったこと)をブログに書いていた。殆ど出来上がっていた。タイトルは『はらわた、ぐつぐつ』。
書いている途中で、なんだかおかしいなあと思っていたら、『全身、ぐつぐつ』になってしまった。38.8℃。これが8月17日、土曜日のこと。
夏休み中は教職員の健診が集中する。一人で午前中だけで70人以上診なくてはならない。
無理させたらかえって長引くと判断した職場が代診をなんとか探してくれて、数日まとめて休めるようにしてくれた。
ゼコゼコいうので、肺炎かもしれないと不安になり、19日に近所で開業している先輩のところでX線写真を撮った。単純写真では明らかな影は指摘できないけれど、わかりにくいこともあるし、これからどうなるか用心してと言われて、パルスオキシメーターを職場から借りた。先輩も気にかけてくれ、毎日LINEで症状を報告していた。
食欲がなくなり、スイカばかり食べていた。
カブトムシや鈴虫、コオロギになるんじゃないかと思うくらいに。
23日。終業時間後に仕事をさせてくださいと課長に言って出かけた。まるまる1週間読影や判定業務をしていなかったら、週明けに地獄を見ると思ったから。
既に地獄の入り口だった。
胸部写真は134枚。まあ、これはかなり他のアルバイトの先生に回してくれたものと考える。
伝言のホワイトボードに「週明けで構いません」とあるから。しかし、このメッセージがあるということは、私が時間外に来るということを皆知っているわけだ。
マンモグラフィ35枚。これは少し時間がかかるなあ・・えっ?何、このメモ。
「S先生が軽い脳梗塞で入院。1ヶ月程度はお休みされます。」
見落とし防止のため、読影は必ずダブルチェックを行う。つまり1枚の写真は必ず2名(場合によってはそれ以上)の医者が見ているわけだが、現在3名いるマンモグラフィ読影担当医が1名欠員、当面2名で全部読まなくてはならないということだ。
ふらふらする。
そして、一番腹がたったのは、私が医局に入ろうとしたときに、チェックして欲しい心電図の束を持ってきたスタッフ。53名分あった。
このスタッフは、必ず自分が帰る前に心電図の束を持ってくる。いつもいつも。
こちらだって帰ろうとしているときに持ってこられてごらんなさい。私はその日の仕事は残して帰りたくない人間なのだ。
「今日中じゃなくていいんです。」
(なら、明日持ってきなさいよ。)
「あのね、私、今夜死ぬかもしれないよ。そのときこの判定はどうなるの?受診者に結果の返却が遅れるでしょう?やり残した仕事があることを知って死んだら、私、成仏できない。ここに化けて出るから。それでいい?」
当時、心電図の最終判定をする者は、私一人だった。
「・・いやですぅ。」
彼女は返却が遅れることよりも、私が化けて出ることがイヤなんだろうなあ。そして私が本当に言いたいことはまるで察していない。
その後は、できるだけ私が帰った後にこそっと心電図を置き逃げする作戦をとるようになった。これがまた私をイラッとさせた。
朝、職場に着いたら、まずあれをやって、あの事業所にメールして、講義の配付資料を印刷して・・と段取りを考えている。彼女がこそっと置いた憎き心電図の束は、その順番を破壊するのだ。