松本3日目。
今日は室内楽を聴きに行く。
それまで何をしてすごそう。
うーん、やはり中町歩きかなあ。
『陶片木(とうへんぼく)』というお店がある。
中町を紹介するHPにあるお店のご挨拶には「うつわ屋でございます。一つお求めいただければ百の悦びをお約束いたします。」とある。目利きの店主による器や道具のお店だ。九州の器もある。
店主は多分、いや絶対に猫が好き。
〇〇窯(猫の絵の器を作っている)のものはありませんか?と一度質問したら、「あそこはねー、納期を守らないんだよねえ」ということだった。なんとなく納得できた。
先日、ここのオリジナルのまな板をあるサイトで見て、実物を確かめたうえで購入したいと思った。
まな板は厚くて、ちょっと私には重いかな。やめておこう。それよりこのガラスケースの上にいる猫の筆架の可愛いこと。仰向けに寝た猫の足が筆をつかんでいる。猫の大きさは15㎝くらいかな。だが、残念。連れ帰っても、今の生活では、この子の本来の役目は果たせない。
「この筆架、ペーパーウェイトに使えないかなあ」とつぶやいたら、「軽すぎますよ」と店主。
「どこの工房のものですか?」
「私がデザインしました。」
ほほう。やはり猫好きですな。
「箸置きに使っている人もいますよ。」
えーっ?!
つぎに、やはりこだわりの強い店主のいるお店へ。海外のおもちゃが沢山ある『ぴあの』だ。
チャーミングな、でも謎だらけのおばあさまのお店だ。
お店が開いていること、なによりいつもの場所にあることを確認するまではちょっと不安だった。だってご高齢なのだもの。
おばあさまは、いた。良かった。やっぱり黒いドレスだったが、足を悪くされているようで、小さな歩行器の横の椅子に座ったまま、手元に包装紙等の必要なものを置いておられた。
でも、店内のおもちゃはどこに何があるか完璧に把握されている。
「ドイツの品が値上がりしたのよ。だから、その前に慌てていっぱい仕入れたの。もう大変だったわ。」
ご自分で対応されるのかしら。ドイツ語でやりとりされる姿を想像する。
入り口で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えるシステムは変わらない。変わったのは、かつてはこの履き替えに目を光らせていた店主から、「ごめんなさいねえ、面倒でしょう?」という言葉が出たこと。
どうしたの?弱気になっているのではないの?おばあさま。
スリッパは2組。多くのお客が入ってこないようにだと思う。子供用のスリッパは、ない。それから靴を脱ぐという手間をかけることで、ただ見るだけというお客を入れないようにしているのだと解釈している。
ここはお店であるとともに、おばあさまの宝物で埋め尽くされた部屋なのだ。私たちはそこに(スリッパを履いて)お邪魔し、素敵!と思ったものを頂いて帰るのだ。
いくつかのお勧めがあったけれど、今回は実用的なもの(でもデザインは可愛い)を自分とお友達の分、お揃いで買った。
ゆっくりゆっくり包んでくださった。
「私ね、夏にサイトウキネンを聴きにくるときに、時々ここに寄っているんですよ。お元気でいらして、とても嬉しいです。」
また来年来ますね!と言ったら、おばあさまは笑って、しっかりした口調で、「歩けるようになっておくわね!」とおっしゃった。