オーケストラコンサートAプログラム


メンデルスゾーン『夏の夜の夢』より

R.シュトラウス『ドン・ファン』、『四つの最後の歌』

指揮 沖澤のどか


席に座ると、色々なことを思い出した。

初めての松本。オペラを聴いた帰りに寄ったご飯屋さんで、やはりオペラ帰りだという女性とおしゃべりしたなあ。

オーケストラプログラム最終日に行ったとき。演奏者に竜胆の花が贈られた。ヴィオリスト川本さんが手招きして、私にその花をくださった。

復帰後の小澤さん指揮の『幻想交響曲』。楽章の合間にかなりの時間休まれて、「水を少しもらおうか」という声が聞こえた。

バースデーコンサート。アルゲリッチの伴奏でみんなで『ハッピーバースデー』を歌った。


もう、いらっしゃらないのだなあ。でもそのスピリットは引き継がれ、これからも生きつづけるのだろうなあ。(スピリットという表現をプログラムの中で娘さんである征良さんもなさっていた。)


後で一緒にご飯を食べた方(初対面)の印象では、征良さんは感傷的だったが、オケのメンバーは粛々と仕事をこなしているようだったとのこと。

プロ意識と言ってしまえばそれだけだけど、それだけじゃないよね。

小澤さんのスピリットは自分たちの中にあるわけだから、彼らにとって死はただの単語にすぎないのかもしれない。

いつも通りに演奏することが、偉大なる恩師(仲間)の望みとわかっているからかもしれない。

音楽のあるところに小澤さんはいると思っているからかもしれない。


湿っぽさなど一切ない。

キラキラの結婚行進曲、キレッキレのドン・ファン。


しかし『四つの最後の歌』の訳詞を読むと、そこに皆の思いが隠されているように思えた。


「これからもよろしく」

一昨年、このフェスティバルで指揮をした沖澤のさんに、小澤さんはこう言ったそうだ。

指揮のことは、全くわからない。だが、例えばどんどん高まっていくときに、力技で音を御すのでなく、一人一人に働きかけて高めていくような感じがした。


ああ、来て良かった。

圧倒された。