ヒジュラ暦九年、アブー・バクル、巡礼を先導(15)

 「彼らのうち、私を許して家に留め、誘惑に遭わせないでください、と言う者もある。聞け、彼らは既に誘惑の中にいるではないか」(四九節)。私たちに伝えられているところによれば、使徒がビザンチンへの出発を呼びかけたとき、このように言ったのは、サリマ氏族の同盟者アルジャッド・イブン・カイスである。そしてこの啓示は、「もし彼らが、避難所か洞窟、または潜り込む所を見い出せれば、必ずそれに向こう見ずに急いで行ったであろう。 彼らの中には、施しの配分のことについて、あなたをそしる者がいる。それを与えられた者は喜ぶが、それを与えられないならば見るがよい、すぐに怒り出す」(五七、五八節)まで続く。彼ら偽善者の目的や満足そして怒りは、すべて現世のことにかかわっている。

 そして神は、喜捨を受け取るべき人を定めて、「施しは、貧者、困窮者、これ〔施しの事務〕を管理する者、および心が真理に傾いてきた者のため、また身代金や負債の救済のため、またアッラーの道のために率先して努力する者、また旅人のためのものである。これはアッラーの決定である。アッラーは全知にして英明であられる」(六〇節)、と啓示された。