歴史は勝者が書く。勝てば官軍、負ければ賊軍となるからだ。そこから、途方もない誤謬が生まれ、戦乱によって人類を蝕む。その最たるものが、『文明の衝突』という虚構であろう。私たちは、この中世的な観点を克服しなければならない。文明とは、
 「人間が互いに親しく交わることと、必要なものを充足することとのために、町や村で一緒に住まねばならないことを意味する。それはわれわれが説明するように、生計のためには互いに協力するという人間の本性から来るものである。その文明とは、辺鄙な地方や山地、すなわち荒地や砂漠の縁にあって、牧畜に適した小村で見られるような田舎の文明であるかもしれないし、大都市や市町村など、城壁による防備を施されたところに見出される都会の文明であるかもしれない」(イブン・ハルドゥーン)。

 

 文明が衝突することを似非学問的な著作で主張し、憎悪を広めようとする者がいるこの時代にこそ、本質的な調和、独立、そして文明間の相互関係について、またわれわれに共通の人間性について、歴史から学ぶことがふさわしいであろう(ディミトリ・グタス)。