第Ⅱ章 特使の運命(10)

 これこそエジプト政府が渇望していた代理人だった。現地情勢に精通していた全員がこの思いつきを支持した。エブリン・ベアリング卿は、ゴードン将軍の派遣を辞退してから一週間後に書いた、「ズバイルの罪がどんなものであっても、彼は精力的で意志堅固な男と言われ、エジプト政府は彼の貢献が非常に有益になろうと考えている・・・ベイカー・パシャも彼の登用に積極的である」〔エブリン・ベアリング卿の書簡、一八八三年十二月九日〕。もしエジプト政府が自由な主体であったならば、ズバイルがスルタンとしてスーダンに派遣され、武力、資金、そして恐らく兵士によってマハディーの撃退を支援したに違いない。この時点でマハディーは、彼とほぼ同等に名を知られ、彼以上の資金力を持っていた男に倒された可能性がある。しかし英国政府は、そのような男との取引を決して容認しなかった。彼らはズバイルの考えを鼻であしらい、代替案の提示を急かした。ズバイルは拒絶され、ゴードンは残った。この二人の人物の、相違の大きさを理解することは、ほとんど不可能なことだ。それは赤道から北極への跳躍だった。