フルネームは、ジャブハット・アンヌースラ・リ・アハルッ・シャーム(大シリアの民のための勝利への戦線)と言う。シリアのアルカイダとも呼ばれ、イスラム国家の建設を目標とする、イスラム革命のゲリラ組織。シリア北東部で勢力を維持、シリア最強の反政府武装組織。

イスラエルが占領するゴラン高原出身の指導者アブー・ムハンマド・アルジュラー二はイラクで、イラクのアルカイダ(イラクのイスラム国)の指導者アブー・ バクル・バグダディと共に活動していた。2011年、シリア内戦が勃発すると、アルカイダの指導者アイマン・ザワヒリとバグダディの指令を受けシリアに移 動、シリアのアルカイダを組織して、アサド政権の打倒を目指す反乱軍に合流した。

この時、米軍がイラク・シーア派政権軍を武装訓練するために供給、その後、イラクのアルカイダに略奪された優良な米国製兵器が、大量にシリアに搬入され た。またこれらの米国製兵器はダーイシュ(イラクとシリアのイスラム国)が、イラクの北部、西部を占領するときにも効果的に稼働した。米国が支援する自由 シリア軍に供給した兵器もイスラム国、ジャブハット・ヌースラに流出しており、米国の介入政策の過ちを証明している。

米軍に殺害されたイラクのアルカイダの指導者アブー・ムサアブ・ザルカウィの指揮下で、2003年の米軍侵攻以来、イラクで戦ったシリア人が主力メン バー。アフガニスタンにも従軍、米軍・多国籍軍と戦ったゲリラ戦士も多く、シリア反体制派の中では最も豊富な戦闘経験、最も強力な戦闘能力を持つ。

正規軍と戦うゲリラ戦の経験を持たない、大多数のシリア反体制派は、シリアのアルカイダと共同戦線を張ることを戦術とした。このため、2015年9月末のロシア空軍の参戦まで、シリア正規軍を崩壊寸前までに追い込んだ内戦で重要な役割を果たした。

もともとイラクのアルカイダから派生した組織だったが、2013年以来、バグダディがイラクとシリアのアルカイダの合同を目指し、2014年彼がダーイ シュ(イラクとシリアのイスラム国)のカリフ(預言者ムハンマドの政治的後継者、イスラム国家の政治指導者)を名乗ると、アルカイダの指導者ザワヒリとの 関係が悪化、アルカイダに忠誠を誓うアルジュラー二は、ダーイシュから分裂した。

ジャブハット・ヌースラは国連からテロリストとされ、2月末に発効した戦闘停止合意、ジュネーブでの和平交渉の当事者から除外されている。このため戦闘停止合意は極めて不安定で、和平交渉も困難が予想される。