今、注目され、今後の活躍が非常に期待されるあるアーティストと、あるメディアの重鎮とでランチをとりながら、お互いが今進めていること、あたためているプランなどを話し合った。

 

そのアーティストはちょうどその日の朝、大きなプロジェクト立ち上げが発表され、メディアにも大々的に取り上げられていて、まさにホットな話題が成立するまでの準備の過程などを話してくれた。またメディアの重鎮も、今密かに進めているビッグプロジェクトの数々を惜しげもなく話してくれるなどして、とても興味深いランチミーティングとなった。

 

お互いでいろんなプランや夢企画を出し合い、「それもいいね」「それやろうよ!」という言葉がランチの間ずっとテーブルを上を何度も行き交った。

だが、そこで出た話で、実際に一緒にコラボレーションして実現に向けて一歩進むのは、本当に一握りの企画だ。

たいていは「面白いけど、時間があれば着手してみたい」という締め切りのない形で、宙に浮かんだままいつの間にか時間が過ぎて自然消滅してしまうことが実際はほとんどだ。

 

そんな中で、本当に次の一歩に進むのは、「で、今、一番何がやりたいか?」の質問に対する単刀直入に答えたプランだけだと経験上言える。

結局、お互いの現状や少し先の話を出し合っているのは、一緒に組むというより、お互いの見ている方向や今、興味を持っている方向を確認し合っているだけの状態で、実際に組むとなると、テーブルの上を行き交うそれぞれの企画の中からはたいてい出てこない。

 

「で、今、一番何がやりたいの?」と聞かれて、即答できるか。

頭の中ではなんとなくぼんやりと……という輪郭が曖昧な企画は、いざという時、相手がそのプランを実現してくれる力を持っている場合は特に、一言で明確に答えることができない。そして、その一瞬だけ訪れた夢の実現のチャンスを逃してしまうことになってしまう。

 

未来予想図や夢プランはたくさんあるほうがいい。けれど、その中でも今一番やりたいことは明確にしておいたほうがいい。そして、その一番やりたい企画の輪郭は、常に明確にして一言で相手に伝わるまでブラッシュアップしておかなければならない。

 

たいてい、チャンスの順番は「不意」に、そして「一瞬」だけ訪れる。

そして、たいていの場合、そのチャンスを自分の準備不足のせいで逃してしまう。

だから、頭の中で自分自身に常に問おう。「今、自分は一番何がしたいのか?」と。

 

すべてのチャンスはこの毎日の頭の準備運動から始まる。そのことを改めて気づかされた、貴重なランチミーティングだった。